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3,コンビニ少年

夜のコンビニ。入り口付近でウンコ座りで壁に寄りかかった少年がタバコを吸いながら、地べたに置いた缶コーヒーを時折口にしていたのを目にした委員長。


「これこれ、、余計なことを申して良いかな?」

「あー?なんだ?、、、まぁ、、暇だし、言ってみ?」 同い年くらい、でもひょろっとしたメガネ、警戒心ゼロ。暇だったのは本当だ。最近仲間からハブにされ気味でぼっち突入気味だったのだ。

その気配すら察知できたら超人モノだが、そうではないだろう委員長。多分。


「もったいない気がしてな。」

何言ってんだこいつ?顔の少年

「見た所、お主、鍛えればかなり聡明になる。が、気性が少し雑なので日本社会には向かないだろう。」

はぁ?って顔になっている少年。

「工学系、高等専門学校でもよい、その方面で手に技術を確実に付け、仕事でその技術を身にしみつかせることだ。そしたらどこの国に行っても、その腕を買われる。日本のそれは未だそこそこ捨てたものではないからな、まだ。」

「言葉できねぇし、、」

「技術者だと言ったろう?言語など心配するほどではない。技術者は技術で語り合える。言語はそこでおいおい勝手に身についてくるものだ。お主には、それができる。保証しよう」

と好き勝手に述べて、委員長は自分の買い物ために店の中に入っていってしまった。

「おい!、誰だお前?」

「**学園1−3、委員長だ」


一瞬あっけにとられ、気付いた途端、つまらなくなった少年は家に帰った。ベッドの上でごろごろしてても、あの委員長の言葉が頭の中をぐるぐるする。

「市野さんか、、、自分でさん付けする痛いやつだが、、委員長なのか」


少年は公立高校に入っていた。どこでもよかった。勉強もする気はさらさらなかったから。

不良達にまじってふらふらしていたが、「おめーは小難しいんだよ」とよく言われたことを思い出した。

今回もそんなところが気に喰わなかったのだろう、ハブにされている。いじめはない、単純なハブだ。

それでも、「俺は奴らにとってそんなもんか、、」とは思っていた。

全くの他人、その俺を認め、保証までした市野さん、市野委員長。**学園なんぞ、うちの家族も仲間たちも全く関連が無いぼっちゃんじょうちゃん学園だ。


やることが無いので学校に行っても、ゲーセンに行ってても、帰って雑誌を読んでても、あの言葉が頭をはなれない。


数日経っても、それは消えないどころか、どんどん頭の中に固定化してきた。


少年はノートパソコンを引っ張り出した。仲間がうちに来た時にパソコンを見てからかったので、それ以来仕舞っていた。

少年の滑らかな指の動きは、使い込んでいた証。最初は少しぎこちなかった指も、滑らかに動く。

検索要件、キーワードを少し思案し、入力検索していった。

数時間後、少年は入学要項を出力していた。編入。



翌朝、父親が朝食を食べているときに少年は二階から降りてきた。

「お?アキラ、珍しいな、一緒に朝飯くおう」

父親は土木技術者。大手の下請けなので、日本各地の現場に行く。偉くなっても小さい会社なので、現場に出る。

最近は近場の現場を任されているようだ、毎日うちに帰ってくる。が、帰ってくると汚れている作業着が、会社ではなく現場に行っている証拠だ。


「おやじ、、頼む」と少年はプリントアウトした紙を数枚差し出す。

飯の手を止め、読む。

少し思案し、「アキラ、今日は時間あるのか?」「うん、、」

父親は携帯を取り出しかけた。「おう、今日たのめるか?うん、、、もしかしたら午後か夕方には顔を出す。一応その前に連絡するわ、悪ぃな!」

「よし、アキラ、メシ食え。で、着替えろ、なるたけフツーのかっこな」

母親は、まぁ、普通のことのように見ている。 

委員長に見せたら羨むほどだろう家庭。

委員長は、この家庭を、少年の顔を通して見たのだろうか?そのくらいなら、彼には、無意識に勝手に脳が行うことである。




ある中興国の地方。

「やんにーでぃーくわー、ぽーわー、・・・」(これのほうがいいぞ、なぜなら・・・)

作業着を着た日本人青年が現地人夫たちと図面を見て話している。

その広い地帯で、でかいがぼろい旧式のユンボが何台か動き、大きい水路を掘っている。

大河上流から水路を引き、大水による氾濫を抑え、同時に水の少ない地域に水を送り込み、農地を豊かにする水路だ。

予算を極力少なくするために青年はできる限りの協力をした。


結果、作業進行は遅くなるが、予算は安く、地元民ばかりを使う、ことで、日系等海外ゼネコンの2割、国内ゼネコンの半値まで下げられた。でなければこの工事は行われなかった。洪水も年何回かいつものように起こるだろうし、水の少ない地域はそのまま農作物もさほど収穫できないままだったろう。


「市野委員長のあのメガネに叶うまでは、まだまだだ。」

あれから10年ほど

青年は乾季の青空を見つめ、そうつぶやいた。


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