1-9 中 卯月はエッチコンロを点火したい
高校の合格発表日だったが、私は家を出ることも着替えることもせずに、パジャマのまま布団に刺さっていた。
今年の合格発表は、新型コロナウイルスの影響で学校前に受験番号の張り出しはせず、ホームページ上で確認することとなったらしい。なので、わざわざ布団から出ずともこの場で合否を確認できるのである。
「あった」
スマホで高校のホームページを開き、そこに自分の受験番号が載っていることを確認する。
私が受験した高校は受ければ受かるような田舎の公立校なので、特に何の感慨もない。むしろ落ちる方が難しいのである。
「……これで良かったんかな」
自分の進路に一抹の不安を覚える。
私の成績なら、この町を出ることにはなるが、寮付きでもっと偏差値の高い高校に入ることもできると中学の担任からは言われていた。
その学校のパンフレットを見せてもらったこともあるのだが……。
「いやいやいや、寮生活……相部屋……絶対無理……」
私は純度の高いぼっち気質だ。他人と同じ空気を吸っていると、それだけでじわじわとHPが削られてくるのだ。
そんな私が自室に一人でいる時間を失うと、息苦しすぎて死んでしまうだろうということで、そっちの道は断念した。
しかし、こっちの道も、それはそれで茨の道である。
ド田舎ゆえに九割以上が中学も同じ地元民であり、高校に上がった段階ですでにコミュニティが形成されている可能性が極めて高い。
ということは、だ。
わ、私はまた……こ、高校でもぼっち生活を送ることになるんじゃ……。
私は一人の時間がないと生きられない気質の人間ではあるが、好き好んでそんな風になったわけではない。可能ならば、青春というものを謳歌したいのである。
「やべぇよ……このまま入学したら、ぼっちコンロ点火しちゃうよ……」
ぼっちコンロ点火!!
ぼちちちちちちちちちち!!
脳内を、コンロが点火する謎映像が駆け抜けていく。
「いやだぁぁぁ! 私は高校デビューして! 逆ハーレム形成して! エッチコンロを点火するんじゃああああ!」
私はしばらくの間、ベッドの上でジタバタともがき苦しんだ。そして意を決する。
こうしちゃいられない!
スタートダッシュで差をつけろ!
入学前に素敵な出会いを見つけて、彼氏持ち非処女のスクールカースト上位勢として高校生活をスタートさせるんじゃい!
私は布団からシュバっと飛び出すとパジャマをバッと脱ぎ捨て、シュバババっとオシャレ(当社比)な服に着替え、髪を梳かしてから家を出たのであった。




