1-8 本作は百合作品ではありません
最近執筆が捗らない。
というのも、以前と変わったことがあるからだ。
「おネエ〜、スマホで遊んでないで、さつきと遊ぼうよ〜」
私が自室のベッドに座りスマホで執筆していると、妹が後ろから抱きついてきて邪魔をしてくる。
「やだよ。私おまえのこと嫌いだって言っただろ」
私は後ろを振り返りもせずに拒絶の意を示した。
あの日以来、妹は暇があるとこうして私に引っ付いてくるようになってしまった。この二年ほど、まともに姉妹間でのコミュニケーションを取っていなかった反動だろうか、めちゃくちゃ甘えてくるのだ。
「おネエのいけず〜」
妹が耳元でブーブー文句を言うが、無視する。
「もー! ケチ! ぼっち! キモオタ! 便所飯!」
おまえそれ文句っていうか、もはや悪口なんだけど!? 便所飯とかまだしたことないし!?
……だが、ここで反応したら妹の思う壺である。私は何を言われようが徹底してシカトを決め込むことにした。
すると、妹はとんでもない行動に出やがった。
「はむっ」
私の耳を甘噛みきてきやがったのだ。
「あひぃんっ!?」
突然耳元を襲ってきた感触に全身が粟立ち、素っ頓狂な悲鳴をあげてしまった。
「……ふふ、感じちゃった?」
妹が甘い声で囁いてくる。吐息が耳に当たりイラついたので、頭に思いっきり拳骨をお見舞いしてやった。
「ブチ転がすぞゴラァ!?」
「痛い〜……でも、これがおネエの愛なんだね……♥」
妹が殴られた箇所を手で押さえながらも、うっとりとした目をする。
……何こいつ、やばすぎない? 怖いんだけど。
もしや私のことを性的な目で見てるのでは?
私、いつかこいつに犯されるんじゃないか……?
これ以上エスカレートしていくと百合タグつけなきゃダメになるぞ。
……いやいや、私はノーマルだし。百合とかありえんし。
しかし、何だか貞操の危機を感じるぞ。
「こんな危ない奴がいる家にいられるか! 私は出かけさせてもらうぞ!」
身の危険を感じた私は、殺人ミステリーでお約束の台詞を叫んで家から飛び出した。




