7-3 どうして
矢野付き添いのもと、保健室で応急手当てを受けた。
比較的軽傷らしく、しばらく包帯ぐるぐる巻きにして安静にしてれば治るらしいが、せっかくだからこの機会にサボっちまおうと考えて気分が優れないと言って早退することにした。
「中ちゃん、だいじょうび……?」
矢野が心配そうな顔をしている。
アホだけど意外といい奴なのかもしれない。
「だいじょばない。めちゃ痛い」
「舐めてあげよっか?」
矢野がペロペロと舌を出す。はっ倒すぞ。
「気持ちだけもらっておくね」
手をひらひらと振って矢野に別れを告げ、保健室から出ると、すぐそこに優ちゃんが立っていた。急にドアが開いてびっくりしたのか、目を丸くしている。
「…………」
多分私の様子を見に来てくれたのだろうが、気まずい。
いっそ無視してくれていた方が楽なのに、どうしてあなたはまた今になって私のことを気にかけるんですか。
お互いに最初の一言を発せないまま見合っていると、背後から矢野が声をかけてきた。
「ありゃ、神谷ちゃんじゃん。中ちゃんのこと心配になって見に来たん?」
優ちゃんが無言で頷く。
「中ちゃん良い友達がいて良かったねぇ!」
矢野が気のいいおばちゃんのように私の肩をばんばん叩いてくる。うぜぇ。
「……矢野さんやめて、そういうのじゃないから」
私が不快感をあらわにすると、矢野は何を思ったのか今度は優ちゃんに問いかけた。
「神谷ちゃん、そうなん?」
「わ、私は……また友達になりたいって、思ってる」
……優ちゃん、あなたって人は。
どこまで優しいんだ。前世バファ●ンか?
「だってさ、中ちゃん! あたしと神谷ちゃんと友達になろうぜ!」
何ちゃっかり混ざろうとしてんだ矢野。
「……そんなこと伊崎が許すわけない。私も、私がそんな選択をしたら、きっとまた自分を許せなくなるから……ごめん」
早口でそれだけ言い捨てて、二人を置いて早足でその場を立ち去った。
「中ちゃん意地っ張りだねぇ」
一人置いてこれなかった。
矢野が私の後ろをついてきた。
「……矢野さん、ついてこないで。あと友達でもないのに無闇矢鱈に絡んでこないで」
「じゃあ、これから友達になろーよ」
「なんで。もう友達いっぱいいるでしょ、矢野さん。……同情のつもり?」
名前は知らなかったが、こいつがクラスの中でもカースト上位のグループに属してることくらいは知っている。
「……それがさ、もういなくなっちゃったんだよね、友達」
「へぇ〜、お疲れ様でした」
背中越しに矢野の沈んだ声が聞こえてきたが、興味も湧かなかったので適当な相槌を打った。
「中ちゃんひどくね!? 何があったの? とか聞いてくれてもよくね!?」
矢野が号泣しながら私の腰にしがみついてくる。
「わ、分かったから! 話聞くから離れて!」
「やったー! じゃあこれから一緒におサボりだね! あたしシャレオツなカフェ知ってんだー! 一緒に行こ!」
かくして(どうして?)私は早退して矢野とシャレオツなカフェとやらに行くハメになった。




