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美少女JKなろう作家の完璧かつ華麗なる日常  作者: 中 卯月
第七部 キラキラ二年生
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7-2 指もげた

 かくして試合は始まった。

 ジャンプボールっていうんだっけ? 真ん中でボールを投げるアレは長身の伊崎が勝ち取り、相手チームにボールが渡った。


 相手チームの名も知らぬ女子がドリブルをしたかと思いきや、優ちゃんがすぐさまボールを奪い取り、そのまま後ろにいた二人を抜き去ってレイアップシュートでゴールを決めた。この間五秒。ゴールネットと優ちゃんの長い髪が鮮やかに揺れる。


 私はポカーンと口を開けてその様子を眺めてることしかできなかった。


 相手チームのターンになり、伊崎にボールが渡った。

 優ちゃんが伊崎をマークするが、あの二人には身長差が二十センチ以上ある。易々と頭上からパスが通ってしまう。


 私の近くにいた女子がボールを受け取った。

 ディフェンスの真似事のようなことをして張り付いてみるが、呆気なく抜き去られてしまう。


 はい、役立たずでごめんなさい。

 私を抜いた相手が前に出てきた伊崎にパスを出した。

 そのパスを優ちゃんがカットする。足速すぎない?


「優、こんのっ!」


 ボールを奪わんとする伊崎の手をクルリと体を回して躱し、そこからはまた優ちゃんの独壇場だった。一人抜き二人抜き、三人目も抜いてまたレイアップでシュートを決めた。


 知ってた。知ってたけどさ、やっぱりこの子はチート持ちなんだと改めて思い知らされる。遺伝子の出来が私のような凡人とは違う。

 伊崎だって運動神経は悪くはないし、動きからすると伊崎にパスを出した女だって運動神経は良さそうだ。


「やーん、神谷ちゃんすごーい! 惚れちゃいそー!」


 矢野が嬌声をあげる。

 なんだこいつ、レズか? あるいは小児性愛者か?


 今度は伊崎がパスも出さずに単身で突っ込んできた。優ちゃんを抜き、味方Aを抜き、次は私だ。止められるはずもないので諦めて最初から棒立ちしていたのであっさりと抜かれるかと思いきや、伊崎は何故か私の前で止まった。


「……あんた、やっぱり何もしないんだな」


 そんなことを、言ってくれやがった。


 伊崎は私の目の前でシュートの姿勢に移る。

 私は何もできないでいる。伊崎の言う通り、また何もしないでいる。


 傷つくことを怖れて。

 傷つけることを怖れて。

 人と繋がることを怖れて。


「卯月、止めれる!」


 その声に、咄嗟に体が動いた。

 優ちゃんの声だ。いつも静かに話すのに、珍しく声を張り上げている。なんでだろう。どうでもいいか。

 精一杯ジャンプして、手を目一杯伸ばす。

 伊崎が放ったボールに指先が掠った。

 それによりシュートの軌道がわずかにブレ、ボールはゴールリングに弾かれた。


「中さんナイッスゥー! 神谷ちゃんパース!」


 弾かれたボールを矢野がキャッチし、前方にいる優ちゃんに大振りでロングパスをした。が、暴投だった。ボールは相手チームのゴールのバックボードに当たり跳ね返る。ていうか何その腕力。さてはゴリラか、あの女?


 ボールは宙に舞い、あとは床に叩きつけられるのを待つばかりかと思われた。刹那、優ちゃんが跳躍し空中でボールを掴み、そのままシュートをした。

 ボールはリングの周りをぐるぐると回り、そのまま中へと吸い込まれるように落ちた。


 その神業に場の空気が静まり返ったかと思いきや、次の瞬間には大歓声に包まれた。


 神谷さんSUGEEEEEの声が館内に飛び交う。

 ……あの、その、私も結構、えっと、その、頑張ったと思うんですけど、いかがでしょう?


「…………」


 そんな光景に何を思ったのかは分からないが、伊崎は私に一瞥をくれて離れていった。めちゃくちゃ怖い。友好的じゃなくなったヤンキーというのはこんなにも恐ろしいものなのか……いや、百パー自業自得ではあるんだけど。


 ていうか、指めっちょ痛ぇ……もげたかも……。

 恐る恐るボールに触れた中指の先を見ると、爪が剥がれて血が滲んでいたのだった。

 それに気がつくと途端に痛みが増してきた。そして泣けてきた。何これマジで痛い無理無理もう実質これ指もげてるじゃん!


 涙目でうずくまっていると、矢野が私に近づいてきて悲鳴をあげた。


「中さん、大丈夫!? うわっ、ちょー爪割れてんじゃん! せんせー、中さん保健室に連れてきまーす!」


 言うや否や、矢野が私の手を取って引っ張り上げた。

 よりにもよって怪我してる方の手だった。


「いってぇー!! テメェ矢野、わざとか!? わざとなんだな!?」


「ご、ごめぴっぴ! つ、ついうっかり! ていうか中さん口悪っ!」


 しまった、あまりの激痛につい素が出てしまった。


「私、実は二重人格で……びっくりさせてごめんね、矢野さん……」


「マジでぇ!? 中ちゃん超やべーじゃん!」


 秒で信じた。アホだこいつ。

 そしていつの間にか中ちゃん呼びになっていた。

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