6-11 卯月ちゃんここに眠る
帰ってからメイド服を脱ぎ捨てて、すぐさまベッドに潜り込んだ。今はもう何も考えたくない。寝てしまおう。
後悔はしないと言ったな。あれは嘘だ。
こんなことになるのなら、やっぱりやめておけばよかったのかも。
……バカか、私は。今更うだうだ考えても仕方ないのに。元に戻るだけだ。友達といると満たされてしまって何も書けなくなるって、元々悩んでたじゃないか。また一人で物を書いて生きていけばいいのよ。
それが、私の人生だ。
それで、十分幸せだ。
私は、他者と人間関係を築く資格のない人間なのだ。
伊崎のように確立した自己もなく。
佳織さんのようにしっかりとしてもいなく。
優ちゃんのように優しくもないので。
そんな人間は一人でいるべきだ。
だって、人と関わっても迷惑しかかけないじゃない。
涙が出ますよ。
私は何のために生きてるんだろう。
もうわかんねぇや。
隣の部屋のドアが閉まる音がした。
妹は一応帰ってきたらしい。今後同じ家にいても話すこともないだろうが。
心の底から妹が嫌いだった。憎んでたと言ってもいい。
あんまり思い出せないけど、昔は仲良かったんだけどな。どうしてこうなったんだっけ?
皐月のせいで、皐月のせいでと、あの声が耳から離れない。……何があったんだっけ。
うちのお父さんと、お母さんが再婚して。
お互いに連れ子だったけど、歳が近かったこともあってすぐに仲良くなって。小学校に入る前だったから……たしか五歳くらいのときだったかな。
あの時はまだ私にも友達がいた、気がする。もう朧げだけど、駆け回って遊んだ記憶がある。そこに妹も混じるようになって……そう、みんなで遊んでた……。
――――……ちゃん、こっちだよ!
幼少時の活発な自分の声が頭に響いた。
「……あ」
特に仲の良かった子が、いた。
名前は思い出せない。
顔は……どうだろう……。
ちょっと目つきが悪くて……長い髪で……当時の私とは対照的に物静かで……。
――――じゃあ、イコちゃんってよぶね。
――――……アイちゃんじゃなくって? 変なの。
――――アイコだからアイちゃんなんてありきたりじゃん。だからイコちゃん。
――――えぇ……別にありきたりでもいいのに……。
イコちゃん……アイコちゃん……藍子……?
「……って、伊崎じゃねーか!」
印象変わりすぎだろ……。
いや、私も変わりすぎてるだろうからお互い様か……。
ここに来て唐突な伏線回収である。いや、伏線とか張ってなかったから単なる新事実発覚である。果たして向こうは気づいていたのだろうか。
「もう聞く機会もないし……どうでもいいか……」
そんなことより、私はもう疲れたんだよ、パトラッシュ……何だかとても眠いんだ……。
幼少時のことを考えて眠りについたせいだろうか。
私は当時の夢を見た。まだ妹と仲が良かったころの夢を。




