1-4 誕生日だけど世界に嫌われている
前回までのあらすじ。
妹に「友達が来るから家から出ていけ」と言われました。許せない。
そう思いながらも、大人な私は大人しく家を出ているのである。何故なら私は妹想いのいい姉だから。妹のやりてぇことは、なるべくやらせてやりてぇからな。
「……でもやっぱムカつく」
あのメスガキ絶対いつか泣かす。
泣かす泣かす泣かす。絶対ボコす。
「ていうか寒い……死ぬ……」
私が住んでいるのは北国だ。
今年は暖冬だと言われているとはいえ、三月になっても未だ雪は積もったままで吐息も白い。寒気が全身に突き刺さる。
「……ていうか今日」
我、お誕生日ぞ?
友達はおろか家族すら祝ってくれないって何事?
……いや、元を正せば私が悪いんだけどさ。
◇◆◇
――――それは二年前の出来事だった。
私の誕生日を祝ってくれていた家族を前にして、絶賛中二病を患っていた私はこう言った。
「……ふん、今日はこの世界で活動するための肉体が生まれた日か。そんなものを祝う意味があるとは思えんがな」
その時の私は“第七世界ウィスタリア”の出身であり、恋人の仇を追ってこの世界へと移転してきた戦士であった。氷魔法の使い手である私の発言に場は凍りつき、翌年から私の誕生日が祝われることはなくなった。親からの誕生日プレゼントはなくなり、現金支給となった。
◇◆◇
「ウワァァァァァァァァ!」
真っ黒な歴史を思い出してしまい、私は外にいるにもかかわらず悲鳴をあげた。通行人が何事かとこちらを振り返り、居たたまれなくなった私はその場から逃げるように駆け出した。
最近暖かったせいだろうか。
地面の雪は半端に溶けており、ぐちゃぐちゃつるつるの不安定な足場にバランスを崩してしまい、私は華麗な顔面スライディングを披露したのだった。
死にたい。
今、色々なアレが重なって、めっちゃ死にたい。
何が第七世界だ。
何が氷魔法の使い手だ。
何が誕生日だ。
何で私はこんなにも泣きそうになってるんだ。
うつ伏せの姿勢のまま、もうこのままここで野垂れ死のうかと考えていると、頭上から声がした。
「大丈夫?」
女の子の声だった。
顔を上げると、小柄な女の子が私に手を差し伸べていた。
「立てる?」
「は、はい、ありがとうございます」
女の子に手を引いてもらい、立ち上がる。
どうせならイケメンに拾ってもらいたかったと考えるあたり、我ながら性根が腐ってるなと思う。
向き合うと、相手が本当に小さい子だということが分かる。私の身長は百五十三センチで、そんなに背が高い方ではないが、目の前の女の子は私よりも頭ひとつ分は背が低く、顔も幼い。……もしかして小学生だろうか。
「盛大に転んでたけど、怪我はない?」
見られてたのか……死にたい……。
「あー、うぇひへへ、だ、大丈夫、です」
小学生に恥ずかしいところを見られた挙句に心配までされて、感情の置き所が分からなくなり、気持ち悪い笑い方をしてしまった。口調も定まらない。
「そう。気をつけてね」
通りすがりの小学生はそれだけ言うと、優しく微笑んで立ち去っていった。クールすぎるだろ。今時の小学生ってのはあんな感じなのか? それに比べて私は何だ?
考えると気が狂いそうになるのでそこで思考をシャットアウトし、私はおもむろにTwitterを開いてクソツイートをした。
繰り返すが、今日は誕生日である。
誰かおめでとうって言ってくれよぉ!




