5-2 打算と好意と
いつだったか、打算のない人間関係に憧れた。
利害だとか損得だとか、そんなのを一切抜きにして私の隣にいてくれる誰かが欲しかった。
そんな打算的な、私の願望。
◆◇◆
七月某日、いつメン四人で集まる日。
徒歩で待ち合わせ場所に向かう道中、ラインの通知が立て続けに鳴った。
歩きながら画面を確認すると、優ちゃんは体調不良で、佳織さんは急遽お家のお店の手伝いをすることになってしまい来れなくなってしまったらしい。
え、じゃあ私も今日欠席しようかなと考えたところでスマホが鳴動し着信を知らせてきた。画面には伊崎の二文字。
え、やだな、伊崎からの電話とか出たくねぇな面倒くせぇ。……でも、これを無視したらそれはそれで後が面倒くせぇな……グループラインに既読付けちゃってるし……。
逡巡しながらも八回目のコール音で受話ボタンを押し、電話に出た。
『あんたさ、あたしからの電話に出るの面倒くさいなとか思ってたでしょ』
伊崎は開口一番にそんな面倒くさいことを言ってきた。
「……そんなことないヨ? 電話に出るの遅れたのは、ほらアレよ? 私、伊崎のこと好きすぎるからさ、話すの緊張するなーって思ってネ?」
『心にもないこと言わんでいいよ。佳織も優も来れないって言ってるけど、今日どうする?』
「実は私も生理痛が酷くて、今日無理かも……」
『嘘つけ。あんたの生理は先週だったろうが』
目一杯苦しそうな演技をしてみせたが、返ってきたのは白けた声だった。
「な、何で私の生理周期を把握してるんですか!? 伊崎さんちょっと怖いんですけど!?」
『腹が痛いって、あんたが散々騒いでたからだよ』
知ってる。
最初はヤンキーだ何だと苦手意識を持っていた伊崎に対しても、今ではこんな冗談を言える程度の仲ではある。
「あー……伊崎はどうしたい?」
『そりゃ今日は元々遊ぶ予定だったんだから、遊びたいけど』
「でも、佳織さんも優ちゃんも来れないって言うし」
『卯月はいるでしょ』
そんな風に、不意打ちで当たり前みたいに言われたものだから、思考が一瞬フリーズしてしまった。
「わ、私だけだと、その……つまらなくない?」
『相変わらず卑屈だなぁ、あんた。このあたしが嫌々誰かと遊ぶと思う?』
伊崎はそういう人間ではない。
短い付き合いでもそれくらいのことは分かる。
「……思わん」
『じゃ、そゆことで。予定通りヅャスコで待ち合わせね。せっかくだから二人でしか出来ないことしようよ』
「うん」
びっくりした。
何故だか心臓がバクバクしている。
私が思っていたよりも、伊崎は私のことを好いてくれているのかもしれない。
私の方は、どうだろうか。正直に言えば、まだ若干の苦手意識は残っている状態だ。
けれど、伊崎が私のことを好いてくれているのだとしたら。
私も、伊崎のことを好きになれるかもしれない。
――――なんて浅ましい思考。
けど、だって、自分から先に誰かを好きになるのは、怖いよ。
もしも相手から好きが返って来なかったら、悲しい。
もしも気持ち悪がられてしまったら、どうしよう。
そんなこと、普通は考えないのかな?




