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美少女JKなろう作家の完璧かつ華麗なる日常  作者: 中 卯月
第三部 美少女JKなろう作家、小説を書く
20/78

3-3 姉妹の涙と縞模様のパンツ

 私は口をポカーンと開けたまま立ち尽くし、妹は鼻元に私のパンツを当てたまま。お互いに身動きが取れず、暫しの間見つめ合っていた。


 思考が追いつかない。

 あれ、あのパンツって今朝洗濯されてたやつだよな?

 それなら、まあいい……わけねぇだろ!


「おまえ何やってんの?」


「こ、これは違うんだよ、おネエ! さ、皐月はただ……そう! 柔軟剤のいい匂いがするなぁって思って!」


 我が妹ながら言い訳が苦しすぎる。


「わざわざ私のパンツを通して柔軟剤の匂いを嗅ぐなよ!? 怖いんだけど!?」


「ち、違うもん! これは皐月のパンツだもん! だから皐月がどう使ってもいいんだもん!」


 こいつ、動揺すると子供時代のもんもん口調に戻るんだよな……。分かりやすい奴。


「嘘つけ! おまえそんなピンクの縞パン持ってなかっただろ!?」


「本当だもん!」


 ここで言い争っていても拉致があかない。

 洗濯物を確認すれば分かることだと考え、私は妹の部屋を後にしようとした。


「ちょ、ちょっと! おネエどこ行くの!?」


 妹がパンツを右手に握りしめたまま、慌てて体を起こす。


「洗濯物確認しに行くんだよ。そこに私のパンツがあったら、今回の件は私の勘違いってことだろ。でも、もしもなかったら……」


「な、なかったら……?」


「おまえとは姉妹の縁を切る。姉のパンツの匂い嗅いで、しかも誤魔化すために嘘つく妹とか嫌すぎるし」


「や、やだ! そんなのやだよ! うぇ〜ん! ごめんなさい! 皐月、嘘ついてました〜!」


 妹が右手にパンツを握りしめたまま号泣する。

 ……流石にちょっと言いすぎたかなと、申し訳ない気持ちが込み上げてくる。


「……最初から、正直に謝ればよかったんだよ。許すから、泣くなって」


「……ほんと? もう怒ってない?」


「うん。ほら、涙拭きなって」


「……うん」


 妹はしおらしく頷くと、右手に握ったパンツで涙を拭った。


「いや、なんでパンツで拭いてんだよ!?」


「えへへ……おネエのパンツ、ぐしょぐしょになっちゃったね……♥」


 先ほどまで泣いていたのが嘘かのように、今度は艶かしい声でとんでもないことを言い出した。ていうか、さっきの嘘泣きだったな、こいつ……!


「おまえアホか!? 誰かに聞かれたら勘違いされるようなこと言うな!?」


「だって事実だもーん」


「……やっぱ縁切る」


「あーん、うそうそ、怒んないでって。晩ご飯のおかず、ちょっと分けてあげるから〜!」


「マジ!? しょうがねぇな〜」


 私はハンバーグのことを思い出し、満面のニコニコ顔になった。


「でも、一個だけ聞かせて欲しいんだけど、何で私のパンツの匂い嗅いでたんだよ」


「おネエへの愛が抑えきれなくなっちゃって……♥」


 艶のある視線に射抜かれ、肌が粟立つのを感じた。

 ……いつかマジでこいつに睡眠薬か何か盛られて犯される日が来るんじゃないか?

 そうなる前に対処しておかないとまずい気がする。


「べ、別に、こっそりパンツなんか嗅がなくたって、私に直接言えばいいでしょ」


「え!? おネエの下腹部に顔を埋めて匂い嗅いでもいいってマジ!?」


「違うわ!? ちょっと待って、おまえマジで怖いんだけど!?」


「だって直接って言うから」


 妹が不服そうに頬を膨らませる。

 いやいや、私も言葉足らずだったかもしれないけど、そうはならんだろ。


「……ちょっとくらいなら、おまえと遊んでやってもいいから。だからもうパンツの匂い嗅いだりするのやめろ」


 いつからか、二人で遊ぶことはおろか、会話すらなくなっていた私たち姉妹。

 もともと人と関わることが苦手な私はそれでも良かったが、ひょっとすると妹はそれが寂しかったのかもしれない。


「……ほんと?」


 妹が大きな目を更に大きく見開く。

 そんなに真っ直ぐ見つめられると何だか照れてしまい、思わず私は目を背けてしまった。


「ほんのちょっとね」


「やった!」


 ……そんなに嬉しいもんかね、私なんかと遊べるのが。


「ね〜、おネエ。これって仲直り?」


 妹の弾んだ声に、罪悪感が胸をチクリと刺した。


「別に、喧嘩してたわけじゃないでしょ」


 そう、ただ私が避けていただけだ。

 出来のいい妹に勝手に見下されてると考えて、卑屈になって。


 ……本当に、馬鹿みたい。


 やば、なんか泣けてきた。

 泣くな泣くな泣くな。そう言い聞かせてるのに涙は勝手に溢れ出し、頬を伝っていった。


 妹は何も言わずに、流れ落ちる私の涙を拭いてくれた。

 そう、ぐしょぐしょに濡れた私のパンツで。

 ふざけんなよコラ。


「だから何でパンツで拭くんだよ!?」


「えっ、だってぇ……私の体液と、おネエの体液が混ざったら素敵かなぁって……♥」


 妹がうっとりとした目をする。


「だから勘違いされるような言い回しやめろってば!?」


「事実だもーん」


「おまえ、そんなに私から縁切られたい?」


「あーん、うそうそ! 私のパンツあげるから、おネエ許して♥」


「いらんわ! どうでもいいけど早く降りてこいよ! 飯冷めるだろ!」


 ていうか、もう間違いなく冷めている。で、冷めたご飯とは対照的に、私たちがいつまでも来ないもんだからママンの頭はヒートアップしているに違いない。


 やだな、絶対また怒られるじゃん……。

 私悪くないのに……。


 この世界は理不尽だらけで嫌になるよ。

 あーあ、私の心を癒やしてくれるのは優ちゃんだけだよ。

 優ちゃんに会いたいな、早く学校始まらないかなと、そんなことを考えている自分が不思議だった。


 誰かに会いたいだとか、学校に行きたいだとか、今まで一度も思ったことなかったのに。


 変なの。

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