1-10 やだーナンパされちゃった〜♥
前回までのあらすじ。
イケメン探しの旅に出た。
しかし、一時間と経たずに計画は頓挫していた。
出会いを求めて、町で一番大きい施設であるヅャスコに行ったのだが、新型コロナウイルスの影響か人波はまばらだった。
「……ここにフリーの美少女がいますよ〜」
屋内にあるゲーセン(コロナウイルスの影響により臨時休業中)の前のベンチに座り、小声で独り言を発するが誰一人として反応する者はおらず。
「ちっ……マジFu●k……」
苛ついた余り、舌打ちとともに悪態を漏らしてしまう。
「おっとっと、いかんいかん……」
誰が聞いてるか分からんのだから、言葉遣いには気をつけんとな。
出会いがありそうな場所……他にどっかあるかなぁ。
ていうか、出会いを求めてヅャスコに来ざるを得ないこのクソ田舎に生きてるって時点で、イケメンと出会うなんて無理ゲーなのでは?
「はぁ〜」
うつむいてクソでか溜め息を吐く。
私ってこれからも誰を愛することもなく、誰から愛されることもない。そんな人生を送るんかな。
ぴえん! ぴぴぴぴぴえん! ……病むわ〜。
ぴえんの使い方、これで合ってるんかな。何か間違ってる気がしなくもない。
普通の女子なら、ぴえんの使い方がどうこうなんて考えないんだろうか。そもそも普通って何だよ。
――――“普通”。
私たちは、そんな曖昧な概念で人を測ったり、人に測られたりするのだ。それって何だか、とても下らないことのように思える。
だから私は、普通だとか普通じゃないだとか、そんなことで人を判断したくないのだ。
そんなエモいことを考えていると、一人の小太りの男がこちらに近づいて来るのが見えた。見るからにオタクといった風貌だ。
オタク男は数あるベンチの中から、何故か私と同じベンチに座ると、一人で勝手に喋り始めた。
「おやおや、ゲーセン営業してないでござるかぁ?」
こ、こわ〜〜〜…………。
これ、独り言だよな?
私に話しかけてきてるわけじゃないよな?
てか、ござるって何だよ……やべぇよこいつ……“普通”じゃねぇよ……。
私は顔を精一杯横に逸らして、オタクと目を合わせないように努めた。
「拙者は奥田 卓男と申す者……上から読んでもおくたたくお、下から読んでもおくたたくおと覚えてくだされ」
オタクが何か勝手に名乗り始めたので、思わず私は吹き出しそうになった。笑いを堪えてるせいで、肩がプルプルと震えてしまう。
クソッ、ちょっと面白いじゃんか! しかも苗字も名前も並び替えるとオタクになるとか何だよこいつ! オタクになるために生まれてきたのかよ!
い、いや、しかし……こんなあからさまに普通じゃない奴と関わりを持ってしまったら、高校デビューなんて夢のまた夢だ。
オタク君には悪いが、私は高校からは華麗な生活を送ると決めているのだ。私はオタク君の存在に気付かないフリをして立ち上がり、その場から去った。
「無視でござるか……残念でござる……同類のニオイがしたんでござるが……」
背中越しにオタク君の寂しそうな声が聞こえてくる。
危うく脊髄反射で「ブチ転がすぞ!」と言いそうになり、慌てて自分の口を押さえた。
オタク君さぁ! 誰が! おまえみたいのと! 同類であってたまるか!
心の中で呪詛を吐き出し、記憶の改竄を試みた。
ここでは何もなかった。いや、何もなくはないな、男に声をかけられた。……イケメンだったよ、うん。
やだー、私ったらイケメンにナンパされちゃった〜♥
でもね、私はナンパされて付いていくような安い女じゃないから、シカトしてやったの。
……ということにしておいた。
ああもう、最近いい事ねぇなぁ。
せめてこれを読んでくれているそこの読者が感想とかブクマとか評価とかくれねぇかなぁ!(チラッチラッ)
感想も別に難しいことは書かなくていいからさぁ! 卯月ちゃん可愛いとだけ書いてくれりゃいいからさぁ!(土下座)
……嘘です、チョーシこきました、ごめんなさいでしたーッッッ!




