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第21話 元の生活について

 晩ご飯を食べ終わって、部屋に戻ってきた。

 ベッドに座って、ふとアミュさんが励ましてくれた言葉を思い返す。


「戻りたいんでしょ?元の生活に。」


 元の生活か…。

 朝5時半に起きてシャワーに入り、朝食を摂って7時に家を出る。渋滞に巻き込まれながら8時ごろに会社について、メールチェック、朝礼、始業。

 あっという間に午前が終わって昼休み、昼食を取りながら作業のやり取り、定時付近に怒涛のメールラッシュ。

 作業を止めて諸々確認。何事も無ければ帰れるけど、クライアントは自分たちの定時までに情報を取りまとめて無茶な完了時間を提示して来る。結局そこからが俺の作業時間になり、翌日午前3時のアラームが鳴る前に帰らないといけない努力を押し付けられる。そして帰宅して、倒れこむように布団にダイブして就寝、朝5時半に起きる。これの無限ループ。

 彼女ナシ、友人とは不義理にしまくってるから連絡もナシ、家族…実家は盆と正月に帰ることが出来たらいいけど仕事に左右されるから近年はあまり会ってない。

 趣味と言えば、ソシャゲにログインしてチマチマとゲームをやって、SNSをちょっと見て、寝ることだけ。そんな元の生活。


 今は正直なところ、そんなに戻りたいと思っていなかったりする。


 命のやり取り、戦闘で死ぬような思いをしてたら別なのかもしれないけど、今の所そんな依頼はなく。

 今後も出来る限り、戦闘に巻き込まれないように仕事して、人探しできればいいなと思ってる。

 流音亭に一週間ほど居るけど、お店に来るのは喫茶店を利用する近くの住人たち。憩いの場としての役割は持っているみたいだけど、他の冒険者に会ったことがない。この辺りは治安が良いから、戦闘イコール金になる仕事が無いから誰も来ないという事なのかな。

 でも、こういった環境で、まったりと仕事をしていけたらいいなと思っちゃう。


 ただ、探す人が冒険者として登録している場合、人によっては同じような力が無いと話すらしてくれないかもしれない。

 そういう人と話をするためには、少なくとも闘う事が出来る人間にならないといけないのかな。これはさっき考えてた、巻き込まれずにまったりしたい~ってのと真逆なんだけど。


 強くなって、妖魔を討伐出来るようになったら行動範囲とか、受けられる仕事が広がる訳で、そうなることは俺にとってはプラスであり、メリットだと思う。

 だけど、漠然と怖いんだよな…。対峙したことは無いし、見たこともないけど。

 猛獣が目の前に現れるなんて事はテレビのニュースで聞く話。確かに、家の近くでクマが出ましたというのはあるけど、まさかそんなのを相手にすることはないし。


 あとさっきのライナさんの話、妖魔が接近していることを教えられてすぐに避難出来るっていうのは、日常的にそういう事が有り得る事として認識されてるからだよなぁ。だから、生活のために害獣を駆除する事が普通に行われるように、妖魔は悪意を持って危害を加えてくる存在だから、生きるために討伐する。そのために冒険者がいる。

 妖魔は生きているという事とはちょっと違うみたいだけど、魔獣と同じように話が出来ちゃったらイヤだなぁ。その時点でもうダメなのかもしれない。

 パーシャ姉さんは慣れって言ってたけど…そんなもんか?まだわからないな。


 でこの生活が1か月・半年・1年と続くとなると、探し出せないプレッシャーが尋常じゃなくなってくると思う。日々をダラダラと…してるとは思わないけど、無駄に時間ばかり過ごして結果を出せないというのは、自分自身がイヤだ。

 期待…してくれているのかな…そんなレナートさんを裏切るような事はしたくない。色々と便宜を図ってくれているリバルドさんとアミュさんに対してもそうだ。ちゃんと結果は出したい。


 そういえば、使命が果たされた後にどんな感じで元に戻るんだろうな。

 来た時は全身マッパで放り出されたから、帰りもそんな感じ?確実に事案になるわ。通報されてお縄を頂戴されちゃうわ。

 会社だって依願退職を余儀なくされるだろうし、社会的には終わった人まっしぐらじゃないか。


 使命を果たした瞬間に、パッと元の世界に居るのだけはイヤだなぁ…せめて皆さんにご挨拶をして戻って行きたい。

 最もベストなのは、こっちと向こうを行ったり来たり出来る事なんだろうか。

 考えたら悲しくなってきた。それもこれも、兄弟を見つけ出さなければ、無駄な考えなんだけど。


 ナディアと離れ離れになるのか…。


 それを考えた時、一番イヤだなと感じた。

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