鏡よ鏡、121
母親に、あんな男どうでもいいわ、と言って欲しい気持ちが私にあったんだろうな…と、部屋の壁を見ながらひとみは子どもの頃の記憶を辿った。
母親にとって、男に、あるいは夫に依存することが女の務め、あるいは女らしさ、だったのなら、母親を責めてはいかなかったのかもしれない…
女らしく生きている母親の生活を台無しにした女と、その女を選んだ夫。
(あんたの父親はお母さんとあんたをほったらかしにして、違う女のとこに行ったんだよ…)
私に向けて繰り返されたその言葉も、母親の世代の、女の価値観を踏襲したもの、だったのかもしれない。