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銀麗の魔女  作者: 龍翠
第五話 ソフィア
38/46

04

 たくさん来てくれたので、せっかくなので動物たちと触れ合えるコーナーを作ることになりました。ソフィアがまた地面に模様を描くと、木の柵があっという間にできあがりました。魔方陣はとても便利なようです。

 そうしてできあがった柵の中に動物たちを案内します。動物たちに簡単に事情を説明すると、快く引き受けてくれました。ちなみに彼らへの報酬はソフィアが作れる美味しいご飯です。あと希望する子は始まりの町の森にご案内。スピカがかわいがる予定です。

 完成した触れ合いコーナーを見て、三人で謎の達成感を味わいます。むふう。


「冒険者の皆さんが旅の疲れを癒やす場所、ですね」

「そうなるのかな。入場料とかは取るの?」

「いらないよ。使い道ないし」


 いそいそと、ソフィアが簡単な看板を作ります。触れ合いコーナー、ご自由にどうぞ。そのまんまです。


「さて、遊びに行く?」

「へ?」


 ソフィアの提案に、スピカとフェルトが目を丸くしました。




 ソフィアが案内してくれたのは、広場から徒歩一時間、ウルフに乗って十分ほど、転移で数秒の場所にある小さな湖です。小さな滝がある湖で、水の中には魚が泳いでいます。


「綺麗なところですね」


 フェルトがうっとりとした表情で言います。スピカも同意見です。ここで泳ぐと気持ちがよさそうです。


「まずは食料の調達もかねて、釣りでもしよう。その後は二人に任せるよ」


 ソフィアはそう言うと、釣り竿を人数分取り出しました。手際よく準備を進めていきます。

 この後のことを任された二人はどうしようかと顔を見合わせましたが、釣りが終わるまで保留にしておくことにしました。今は初めての釣りを楽しむことにします。

 ちなみに、結果としてなかなかに大漁で、夕食は焼き魚のパーティが決定しました。


   ・・・・・


 ミオが転移した場所は、島の北端のようでした。地図を開いたところ、町は南側にあるそうです。レベルが高い、もしくは何かしらの理由で強いと判断された人ほど町から遠い場所に転移することになると説明があったので、どうやらミオはプレイヤーの中でもトップクラスだと判断されたようです。

 もっとも、その理由には見当がついていますが。

 ミオがじっとりとした視線を隣へと向けます。そこにいる相棒、毒のドラゴンのヴェノムは首を傾げていました。なんだかんだとかわいいので許してしまいます。


 ミオのレベルは確かに高い方ですが、それでもトップかと聞かれればそんなことはありません。それなのに北端に転移したのは、このドラゴンが理由でしょう。間違い無く、ヴェノムは全プレイヤー中最強なのですから。

 そこまで考えて、例外がいたかな、と苦笑しました。もちろんスピカとあのミニリルのことです。ただ、この場には姿がないというこは、今回不参加なのかもしれません。それは少し寂しく思います。


「それじゃあ行こうか、ヴェノム」


 ミオが声をかけると、ヴェノムが小さく唸りました。そのヴェノムの背へと乗ります。ヴェノムがゆっくりと歩き始めます。

 一先ずは町へ。そう決めて、森を突っ切ることにしました。




 襲ってくるモンスターを倒しながら、のんびりとミオは進みます。進めど進めど景色の変わらない森ですが、地図を開くと真っ直ぐ南へ進んでいるので問題はないはずです。

 そうしてしばらく進んでいると、突然ヴェノムが進行方向を変えました。不思議に思いますが、ここはヴェノムに任せます。彼はなかなか自分で考えてくれるので、今回のこれもきっと理由があるのでしょう。

 そうしてたどり着いたのは、森から出た場所にある砂浜。そこでは一人の少女が戦闘を行っていました。白い法衣のヒーラー、レナです。必死に杖を振り回して、モンスターの群れに対処しています。


「なにこれ、どういう状況?」


 大声で聞くと、レナはすぐにこちらに気が付きました。そして、


「助けてください!」


 その声を聞いた瞬間、ミオはヴェノムに殲滅の命令を下しました。




 長い戦闘が終わって、二人はようやく一息つきました。またモンスターが襲ってこないとも限らないので、歩きながら会話をします。


「助かりました、ミオさん。正直ちょっとピンチでした」

「いいわよ。でもまさか、レナまでこんな場所に転移しているとは思わなかったけど」


 レナはレベルが高いとはいえ、ヒーラーです。その程度はさすがに考慮してくれるだろうと思っていたのですが、まさか自分の側とは思いませんでした。もしかすると、ヴェノムが見つけることを想定していたのかもしれません。


「さてさて、長い道のりだし、ゆっくり旅でもしましょうか」


 ミオがそう言うと、レナは不思議そうに首を傾げました。


「え? 転移装置、使いましょうよ」

「へ? なにそれ?」

「あれです」


 レナが指差す先、森の入口に大きな石碑がありました。幾何学的な模様が描かれた石です。どこかで見たことのあるその石碑に触れてみると、この島の大きな地図が開かれました。そして、いくつかの光点。触れてみれば、この場所へ転移しますか、というメッセージが。


「…………。えー……」

「あはは……」


 呆然とするミオと、苦笑いのレナ。ミオが言い訳をするように言います。


「だって聞いてないし!」

「公式サイトのイベントの説明にありましたよ? さては読んでませんね」

「ぐふう!」


 確かに参加方法しか読んでいません。詳細なんて流し読みでした。まさかこんなところで影響が出てくるとは。


「じゃあどうしてレベルが高い人ほど遠い場所なのよ」

「同レベル帯が見つかりやすいように、ではないでしょうか。イベントの趣旨は交流会みたいですし」

「パーティで転移できないのは!」

「同じパーティで交流が完結してしまうでしょう? 交流会なのに」

「くっ……!」


 認めましょう。レナが正しいと。

 ミオは肩を落として、どこに行こうか、と沈んだ声で聞きます。レナはどうしたものかと困っているようでしたが、どうやら放置することに決めたらしく、返事をしました。


「町に行きましょう。私もそこでクエストをもらっていますし」

「…………」


 出遅れた感がすさまじい。ミオはため息をつきながら町の側の光点に触れようとして、そしてそれに気が付きました。

 光っていない点があります。それに触れても、反応がありません。レナに聞いてみても、彼女も知らないようでした。


「気づきませんでした。何でしょうか、これ……」


 暗い点は島の中央付近とその側にあります。タッチしてみても、やはり反応がありません。

 ミオはしばらく考えた後、よしと頷きました。


「ここに行くわよ」

「え? 別にいいですけど、どうして?」

「その方が楽しそうだからよ!」


 ある意味ゲームの真理でしょう。力強いミオの言葉に、レナは楽しそうに笑いながら承諾しました。


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