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九四式軽装甲車

 昭和七(1932)年、TBこと九二式重装甲車の試験が続いている。ディーゼルエンジンは三菱が開発することになった。もちろん、技術本部が手助けするのは変わらない。


「これが欧州で開発しているエンジンですか」


 三菱の技術者が俺の示した図面をしげしげと見ている。いや、これは戦後に三菱が開発したエンジンだけどね?


 それは61式戦車のエンジンなどではない。10馬力から30馬力程度の小型水冷ディーゼル。トラクター用だ。この程度のエンジンならもしかしたら作れるかもしれないと思ってプリントアウトしてみた。


「しかし、これは噴射ポンプがかなり精密ですね。最近は品質管理や工程管理と以前と比べて随分マシになりましたが、これはさすがに欧州だ。このレベルを作れるように頑張るしかないですね」


 あれ?さすがに即制作ってわけにはいかなそうだ。俺や海軍がKAIZEN運動はじめてはや5年だろうか。大企業にはその影響が見え始めている。聞いた話では、俺が話した内容を陛下が大層感心して、すぐにでも実施するようにと周りに触れて回ったらしく、俺が欧州に居る間にバタバタ様々なところで混乱も起きていたらしい。

 帰国する頃には混乱も収まり、内容を理解した三菱のような会社ではその手法を取り入れだしてもいる。一番早く実践したのは海軍工廠だったらいい。そして、造船所繋がりで三菱にも波及し、今や重工でもその波が押し寄せているそうな。


 九二式が12ミリの溶接を導入できたのも、海軍が積極的に溶接技術の研究開発を行っているためらしい。なんでも、溶接用高張力鋼の開発まで行われ、その安定生産の体制まで整えようとしているらしい。これ、絶対海軍に転生者が居るよ。小野田兄弟だろうか?


「陸軍の要求は空冷エンジンですが、これは水冷ですね。参考にはなりますが・・・」


 疑問はごもっとも。


「この小型エンジンは、軍用としてよりも、民間向けです。トラックや農機具向けと考えてもらえればよいかと」


「なるほど、そうですね。自動車向けに良いですね。この横置き型は?」


 おっと、余計なものが出ていたか。


「これは・・・、コンバイン用エンジンです。欧州で先ごろ開発されている麦収穫用の機械ですよ」


 困った、どうすりゃあいい?


「さすが欧州ですね。収獲、脱穀ならたしか・・・」


 どうしたんだろう?誰か呼んでいる。そして、しばらくして一人走ってきた。


「彼は島根の佐藤造機と協力して農機具の開発にあたっているものです。流石にまだ機械化には早すぎるとも思うんですが、早いうちから取り組む方が良いと思いましてね」


 そう言って紹介された後、欧州のコンバインについてという話になった。正直、そんなものは見てきていないので、21世紀の話を多少混ぜながら話しておいた。コンバインなら任せてくれ。分かるから。が、困ったことに、エンジンあるなら車体も参考にと言われた。どうしよう。乗用型コンバインが日本で発売されるの40年先だし、欧州の汎用コンバインはこんな小さなエンジンでは動かんのだが・・・


「ちょっと、資料を整理してお持ちします。はい」


 とりあえず、切り抜けてその場をまとめた。しかし、どうしよう・・・




 そんな、本来必要ない事で頭を抱えていると、上司から声がかかった。


「牽引車ですか?」


「そうだ、小型の牽引車を開発してほしい」


 牽引車?普通のトラクターで良くないか?


 と思ったのだが、どうやらガーデンロイドっぽいものをご所望とのことらしい。それって、戦車じゃね?

 だが違うらしい。意味が分からん。


 意味がよく分からんが、小型で装甲があって、速度も出せる牽引車。しかも、自衛用の武装も欲しいという。ちょっと欲張りすぎでないか?


 そう思って該当する車両を調べてみたら、九四式軽装甲車というらしい。


 敢えて言おう、原さん、あんた、和製カヴァナンター作ってんじゃねぇよ。


 和製カヴァナンターの特徴は、本家より酷い。操縦手の横に空冷エンジンが鎮座し、熱と轟音を提供する素敵仕様じゃねぇかこれ・・・


 という訳で、機関室と操縦室を分離してやった。シーソー式はそのまま、装甲も正面12ミリの溶接構造。タブレットのデータに比べて隔壁分200キロ重くなって3.7トンになったが、特に問題はないらしい。


 とはいえ、この程度でまともな能力がある訳もないのだが、この時点においてはエンジン出力も低く、生産に必要な工業基盤もこのくらいのモノしかどうしようもない。

 そうそう、トーションバーは後3年くらい待ってくれと言われた。


 そして、これを設計している時にふと思い出した。


「最近忙しくてなかなか整理が出来ませんでしたが、コレです」


 三菱で例の話に出ていた資料を渡すことが出来た。


「これは凄いですね。こんな小さなコンバインが出来るのであれば、このフレームをベースに稲用のコンバインも作れるかもしれませんよ」


 そう言われた。何を渡したかって?1980年頃に販売されていた大豆用小型汎用コンバインさ。大きさはちょうど渡した横置き型ディーゼル14馬力でどうにかなる車体。


「しかし、これ、カタピラはゴムなんですか?進んでますねぇ~」


 感心されたが俺は凍り付いた。ヤヴァイ、やってしまった。


「まだあちらでも開発中ですから、情報は出てこないと思いますよ。ハハハ」


「それならば、我が国で開発しましょう!」


 アカン、さすがにやりすぎだろう。ゴムクローラっていつできるん?


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