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異世界転移で兄妹チート  作者: ロムにぃ
第一部 第四章 異世界で孤児院経営
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第十九話 顛末


 翌日の午後、サマーリとユーリを子供達の保護者として、セリーヌを念のための護衛として孤児院に残し、俺達は城へと向かった。

 城門にたどり着くと、俺達の姿を見た門番が直ぐに案内を呼ぶと城内へと入っていった。程なく俺達の案内をしてくれる人が来て、城内へと通される。

 そして、俺達が通されたのは応接間らしき部屋だ。部屋に置かれている長椅子は俺達全員が座っても少し余裕がある程の大きさで、左からコロナ、ヒルティ、俺、椿姫、芽衣の順番で座った。

 座って少しすると部屋の扉が開かれ、数人の人物が入室してくる。

 一人目は勿論ベルンハルトだ。部屋に入ってくるなり、コロナに対して臣下の礼をしようとし、コロナがそれを止めるという一幕もあったが、ベルンハルトは俺達の正面の椅子へと腰をかけた。

 二人目は護衛らしき青年だ。彼はベルンハルトの左後方に位置取る。

 最後はティーセットやお茶請けを載せた台車を押している侍女だ。彼女はベルンハルトや俺達の前にお茶を淹れたカップとお茶請けを並べ、部屋の隅で待機する。

 それを確認したベルンハルトが漸く用件を切り出す。

 

「さて、飲みながらで良いから聞いてくれ。せっかく淹れたお茶が冷えてしまうからな」

 

 ベルンハルト自身も一口お茶を飲みながらそう言う。俺達は遠慮せずにお茶を飲みながらベルンハルトの話を聞く。

 

「まず、今回の事件に関してだが……正直分かった事は余り無いと言って良い」

「やっぱりですか……」

 

 椿姫は予想していたのか、ベルンハルトに直ぐ様そう返す。

 

「ああ、分かった事と言えば、あの孤児院が元々は孤児達を暗殺者を育てる施設に送っていた所だったという事と、あの瘴薬と言われていた物が普通の人間には作れそうにも無いって事だな」

 

 そう言えば芽衣が言っていたな、そんな孤児院があると。ロバートの孤児院がその孤児院だったと言うことか。まあ、それは今気にしても仕方がない事だろう。

 

「人間には作れない……ですか?」

「ああ、残留していた瘴気を調べて見たが、その余りの濃い瘴気のせいで下手に触ると汚染される可能性もあり、まともに調べる事も出来なかった。分かったのは自然に発生している瘴気で、一番濃いと判明している物の数倍ではきかない位に濃い。あんな風に瘴気を圧縮させるなど聞いた事が無い。恐らく、普通の人間なら間違いなく製薬の途中で瘴魔になってしまうだろう」

 

 もしベルンハルトの推測が合っているのなら、誰がそんな薬を作り、ロバートに何の目的で渡したのか……それとロバートの言っていた邪神の復活も関係している可能性は高い。

 

「瘴薬に関してはそんな所だな。ロバートが行っていた生け贄の儀式も実際に効果あるかは不明だ。試す訳にもいかないからな。ただ、あの地下で若干の瘴気が発見されたのは事実だ。それが儀式のせいなのか、瘴薬のせいなのかは分からないが」

「今はその地下は大丈夫なのか?」

「ヒルティが浄化した方が良いの?」

「いや、今はもう浄化してあるので大丈夫だ。神聖魔法の使い手はうちの軍にいるからな」

 

 神聖魔法の一部に、瘴気の浄化出来る魔法があるのを思い出す。恐らくヒルティが瘴魔に使っていたのと同じ魔法だろう。


「そして、あの孤児院は封鎖の上、情勢が落ち着いたら解体を行う予定だ。地下も含めてな。あんな事件が起こった以上、人を住まわせる訳もいかんからな」

「それでは、あの場所は更地にされるおつもりですか?」

 

 俺達の孤児院程広くは無いが、それなりに土地の広さはあったはずだ。それを使わないのは勿体無い気もするが、ベルンハルトの言う様に住む気にはあまりなれない。

 

「いえ、使い道は既に決めております」

「それはお聞かせいただいても? それとわたくしに敬語は不要だと申した筈です。わたくしはもう王女では無いのですから」

「分かり……いや、分かった。それで使い道だが、あの場所には慰霊碑を建立しようと思っている」

「慰霊碑?」

「ああ、今回の戦争と内乱、それに圧政で亡くなった者達の慰霊碑だ。恐らくだが、この国の半数以上の国民が亡くなったとみている。純粋に犠牲者を慰める為と、この様な事が二度と起こらぬように戒めの意味も込めて慰霊碑を建立すると決めた。国自体が無くなるのに建立する意味は薄いのかも知れないが」

「その様な事はありません。人は失敗から学ぶ生き物……わたくしも失敗したからこそ分かります。証が無ければ、いつしか人はそれを忘れてしまうでしょう。わたくしにとっての証は、今までのわたくしの状況そのもの……目には見えませんが、わたくしの心には明確にに記憶されています。ですが、多くの人々が共通で記憶しておくには証は間違いなく必要です。それは国が代われど変わりはありません」

 

 コロナの言葉は俺にも当てはまる。この世界に来る直前に椿姫を守れず、自分も死んだ。その前は両親を目の前で失い、さらにその前は芽衣も失った。

 俺の人生は失敗だらけだ。今はどうにか椿姫と芽衣とも一緒にいることが出来ているが、あの時技能が発動しなければ、俺は椿姫を守る事も出来ずにいたし、この街に来る事がなければ芽衣と再開する事も無かった。

 

「そう考えているのが俺だけじゃないと分かって良かった。まあ、それ以前に復興が完了しなきゃいけないが」

「その復興はどのくらい進んでいるんだ?」

「この街に関しては衣・住はどうにか形にはなってきている。後は食料の自給に目処がつけば、大丈夫だろう。……だが、問題はこの街以外だな。現トゥレラ国内の街や村へ調査隊を送ったが、ほぼ壊滅状態だ。取り敢えず、生き残っている国民をこの街に移住させる事で、これ以上死者が出ないようにしている」

 

 俺は途中で立ち寄った街の惨状を思い出す。働き手と食料を全て奪われ、残った街の住人は餓死状態、そんな街が他にも存在する……日本じゃ有り得ない光景だ。

 

「無論、何時かは国内全てを復興させるつもりだが……間違いなく数十年は掛かるだろうな」

 

 減った人口は直ぐには戻らない。生まれた子供が大きくなるのに十数年、しかも一人二人では意味がない。例え衣食住が問題なくなろうとも、直ぐにどうにかなる問題では無いのだろう。

 

「ところで孤児院はどんな感じだ? 子供達は元気に暮らせているか?」

「ああ、援助のお陰で皆問題なく暮らしていけている。今は本人の能力と希望に合わせて、家事をさせたり戦闘訓練をさせたりと独り立ち出来る様に教えている所だ」

「そうか、宜しく頼む。人口が激減したこの国では子供達は未来への希望だ。……もしかしたらその子供達の中から、国を救う者がいるかもしれないしな」


 今まで俺は沢山の他人を救ってきた。それは妹を守る力をつける為、どのような状況でも妹を救える様になる為だ。前の世界で他人を救った後は会えば挨拶位はするが、殆ど干渉はしていない。だが、この世界ではその場で救っただけでは充分ではない。親若しくは保護者が居ない子達を放置する事は出来なかった。放置すればまた同じ様な目に合う事が分かりきっていたからだ。その結果、孤児院で子供達の世話をする事になった。

 それが嫌という訳じゃない。妹を守りたかっただけで行動し、結果今の様な状況になった事に悪くないと思っている自分がいる。

 俺は自身を利己的な人間だと思っていたが、本当はそうでは無いのかと思い始めていた。

 

「と、そう言えば、もうひとつの用件を言ってなかったな」

 

 ベルンハルトの声に、物思いに耽っていた思考が呼び戻される。

 

「実はな、アギオセリス王国からエドワードに手紙が来ていてな。その手紙にお前達の事が書かれていたらしい」

「俺達の事が?」

「ああ、詳しい事はアギオセリス王国の国政に関わる事らしいから聞いてはいない。詳しい内容はエドワードから聞くと良いだろう」

 

 ◆◆◆◆◆

 

 それから俺達はベルンハルトと別れ、侍女の案内でエドワードのいる部屋へと通される。わざわざ別室で話す事から重要な話かと思ったが、エドワードは特に気を張った様子も無く、自然体で椅子に腰掛けていた。

 入ってきた俺達に空いている椅子に腰掛けるよう促してくる。全員が腰掛けたのを確認したエドワードが口を開いた。

 

「すまんな。わざわざ部屋を移動して貰っちまって。ベルンハルトなら大丈夫だろうが、国政に関する事だから念のためだ」

 

 エドワードの様子から重要では無いかと思ったが、それなりに重要な話らしい。

 

「それで用件っていうのはな、お前達に護衛の仕事を依頼してぇんだ」

「護衛の仕事? 誰の護衛だ?」

 

「簡単に言うとレオン王子殿下が、とある理由で別の国に行く必要があってな。それにお前達を護衛として雇いたいと言われたんだよ」

 

 俺達をレオン王子の護衛に? 何故、俺達を護衛として連れていくのかが分からない。護衛であれば自身の兵士達がいる筈だ。

 

「私達を護衛にする意味……確かに私達なら普通の兵士より護衛として役に立つかも知れないけど、わざわざ別の国から呼び寄せてまで護衛にする意味なんて無い筈だよ。となると私達が行かなければならない、若しくは行った方が良い理由があるんだよね」

「流石、椿姫の嬢ちゃんだな。その通りだ。レオン王子殿下からの情報が確かなら、お前達は行った方が良いかも知れない」

 

 行った方が良いかも知れない? 行った方が良いじゃなく、かも知れないか……その言い方からして絶対では無いのだろう。

 

「かも知れない……って言う事は私達が行っても、無駄足になる可能性もあるって事だよね?」

「ああ、寧ろその可能性の方が高ぇだろうな。だから手紙にも出来れば、と書かれている。行くかどうかはお前達に任せる」


 成る程、レオン王子はこちらの得になるかもと判断して、俺達に連絡をくれたっていうところか。俺達がこの世界に来て、それほど経っていない。俺達の気を引く事はそんなに無いと思うが……。

 

「それで、その肝心の内容はなんだ?」

 

 そこでエドワードが真剣な表情になる。まるでこれから戦闘でも行うかの様な表情だ。

 

「…………兄妹神教国で勇者召喚が行われ、異世界より勇者が召喚された」

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