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異世界転移で兄妹チート  作者: ロムにぃ
第一部 第四章 異世界で孤児院経営
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第十二話 推理


 それから暫くは何事も無く、平穏な日々が過ぎていった。

 俺達の孤児院を含め、子供達が行方不明になったという話は聞かない。

 復興もアギオセリス王国の援助のお陰でかなり進んでおり、街には徐々に活気が戻って来ている。店舗も少しずつ増えていき、冒険者組合の営業も再開された。

 時々、冒険者組合を訪れては依頼もこなしている。そのお陰か、俺、椿姫、ヒルティ、コロナは8級に、冒険者組合が再開されたと同時に上がった。ただ、芽衣に関しては暗殺者という称号のせいで、普通の方法では身分証が作れないらしい。今後、どうするか考える必要がある。

 それと冒険者による、瘴魔や危険な生物の間引きが長い間行われていなかった為、討伐依頼が多くあり、それを多く受けたせいか準位も上がっている。勿論、セリーヌとの特訓もあわせて行っているので、単純に準位だけではなく、戦闘技術等も少しずつではあるが身に付き始めた。

 子供達も今の生活に慣れ、日々を楽しそうに過ごしている。

 だが、そんなある日、とある孤児院が襲われたという情報が入ってきた。

 

 ◆◆◆◆◆

 

「それは本当なのか?」

「ああ、本当だ……」

「まさか、一気に全員なんて……」

 

 今、俺と椿姫がいるのは警備隊が駐在している建物の一室だ。

 俺と椿姫が並んで座わり、テーブルを挟んでエドワードが対面に座っている。

 そして、俺達はエドワードから孤児院襲撃の詳細を聞き終わったところだ。

 

「孤児院を経営していた院長夫婦は死亡、子供達12人全員も行方不明だ。昨日の夕方に院長夫婦の無事な姿が目撃されている。だが今日の朝、孤児院の前で何時も掃除を行っている院長の妻が、見掛けねぇのを不思議に思った近所の者が中に入り、院長夫婦が殺されているのを発見した。駆け付けた警備隊が調べたところ、子供達の姿がない事にそこで気が付いたって訳だ」

 

 院長夫婦が殺され子供達が拐われた孤児院は、あの時俺と椿姫が寄り道をして立ち寄った孤児院だった。院長の奥さんと孤児の一人の顔を知っていたのもあり、少なからず衝撃を受けていた。

 

「それにしても今回は前回と手段が明らかに違うね。前回は誰にも悟られずに子供達だけを拐っていってるけど、今回は殺人を犯してまで拐ってる」

「……別人の犯行の可能性もあるか?」

「無いとは言い切れないけど……可能性は低いと思う。理由としては子供達を拐った後、街の外への移送手段が無いよ。反乱後、街の出入口に関しては厳重な警備が敷かれてるよね、エドワードさん?」

「ああ、人や馬車の出入りは、入念に確認を行っているとベルンハルトから聞いてるな。そして、子供の出入りや馬車に隠れていた者は居ない事もな」

「だよね、それにこの街にはベルンハルトさん以外の貴族や、裕福な人はほぼ存在しない。この街での裕福な人は孤児院の出資者しか居ないから、子供を拐ったとしても売る手段は無いの。となると、私達では想像出来ない理由で子供達を集めている事になるかな。子供達を拐う事自体が目的なのか、何かの目的の為に子供達を集めているのか、それは分からないけど、多分子供達はまだ――」

 

 椿姫の推測が合っているのなら、子供達は──

 

「まだ、この街の中に居る……?」

「うん、私みたいに【空間魔法】が使える人が居るなら別だけど、その可能性はかなり高いと思う。エドワードさん、フランツが逃げた時に使った道具って、どれ程の希少価値がある?」

「あれか……はっきり言って見た事も聞いた事もねぇな。空間転移の能力を宿してるとなると、使い捨てでも恐らく国宝以上の価値があるだろうな。似たような魔導具も見た事はねぇな」

「そんな貴重な道具を子供の誘拐で使うとは思えないからね。この街の何処かに監禁されてると思うよ」

「となると、コロナを探した時の魔法で探せるな。街位の範囲なら探せた筈だよな」

「そうだね、誰かの私物があればだけどね。エドワードさん、どうにか借りれないかな?」

 

 椿姫の質問にエドワードは顔をしかめる。

 

「孤児院にあった物は、警備隊の手で証拠品として押収されててな。それを貸してくれと言っても、貸してくれるか……何とも言えねぇところだ。これまでの情報も、ベルンハルトがお前らに情報を流す為に聞けただけだからな。恐らく孤児達を誘拐されねぇ様に気を付けろって事だろう。犯人を捕まえてくれと言ってる訳じゃねぇ」

「うーん、エドワードさんでも無理そうなんだね……」

「本来なら使者の俺はその情報を聞ける立場じゃねぇ。お前らの知り合いだから伝達係として選ばれただけだ」

 

 私物を借りられないとすると、どうするか……。

 人死にまで出ている以上、自分達の孤児院の子供達に何かあってからでは遅い。その前には犯人を捕らえたいところではあるが……。

 

「今は良い案が浮かばないかな……。とりあえず今日は家にもどろっか」

「良いのか?」

「うん、これ以上は新しい情報も無さそうだし、孤児院も気になるしね」

「確かにそうだな、戻るとするか」


 エドワードと別れ孤児院へと戻る。 その途中、殺された院長夫婦の経営していた孤児院へと向かう道への分岐路に差し掛かる。

 その孤児院の方向を見やるが、もうその場所には誰も居ない事を思いだし、俺達の孤児院のある方向へと向き直る。と、そこで一人の男性が目の前に現れる。しかし、何処かで見た覚えがあるのは気のせいだろうか?

 年齢は俺と変わらない位だろう。赤に近い茶色の髪で、顔は特徴という特徴が無く、覚えにくい顔をしている。

 

「おや、貴方は院長さんではないですか。お久し振りですね。孤児院の子供達はご無事ですか? もしそうなら、あの時お話しした甲斐があったと言うものです」

 

 その言葉で思い出した。この男性は炊き出しの護衛をしている際に話し掛けてきた男性だ。その時にこの男性から、孤児院の子供達が行方不明になったという話を初めて聞いたのを思い出す。

 

「ああ、あの時の……そのお陰か、俺の孤児院では行方不明は出ていない」

「そうですか、それは良かったです。……おや、そちらのお嬢さんは妹さんか何かでしょうか?」

「ああ、俺の妹だ」

「妹の椿姫です。初めまして」

「おっと、そう言えば名乗っていませんでしたね。私はサヴェーリオと申します」

「俺は一刀という」

「そう言えばお聞きになりましたか? この先にある孤児院で殺人と誘拐があったのを」

「ああ、ついさっきな」

 

 それにしても、この男性も情報を手に入れるのが早い。 

 警備隊の者なら炊き出しに並んでいる訳は無い、恐らく警備隊の家族か何かなのかも知れない。

 

「あの方達にも、あのお話はしていたのですが……非常に残念です」

 

 その表情は悲痛に歪んでいる。前に子供好きと言っていたので子供達が拐われた事に哀しんでいるのだろう。


「でも少し前に聞いた時は、院長の奥さんは知らないって言ってましたけど……」

「え……ああ、私が話をしたのは最近ですからね。その時は知ってらした様でしたし」

 

 俺達があの孤児院に行ったのは半月以上は前の話だ。時系列に矛盾はない。

 椿姫も納得したのか、それ以上は何も言わなかった。


「では、引き続きご注意下さい。子供達の──」

「一刀にぃだ!」

 

 と、そこでサヴェーリオの言葉は遮られる。

 声がした方へ視線を向けると、笑顔でこちらに走ってくる芽衣と、その後ろを歩くコロナに数人の子供達がいた。因みに子供達は俺の孤児院の子達だった。

 芽衣は走って来た勢いのまま、俺に飛び込んでくる。俺は芽衣を受け止めながら、その勢いを数歩下がる事で逃がす。

 

「芽衣、危ないだろ」

「ごめん、一刀にぃと偶然会えた事が嬉しくて」

 

 そう言いながら、芽衣は俺の胸に顔を擦り付ける。その動作は猫の獣人らしく正に猫の様だ。俺はそっとその頭と耳を撫でてやる。

 ふぁ、と言う声と共に芽衣の表情が蕩けたものになる。と、そこで左腕に重みが掛かる。そちらに目線をやると、椿姫が左腕に抱き付いて来ていた。

 

「……」

 

 椿姫の表情は何時もと変わらない様に見えるが、少し赤くなっているのが見てとれた。俺はそれに何も言わず、そのままの状態で芽衣の頭を撫で続ける。

 

「お兄様、孤児院に帰られるところでしょうか? それにそちらのお方は……」

 

 椿姫の体温を感じながら芽衣を撫でていると、コロナから声を掛けられる。


「ああ、孤児院に帰る途中で話掛けられてな。俺とは……顔見知りと言ったところか」

「ええ、その様なところです。初めまして、私はサヴェーリオと申します」

「初めまして、わたくしはお兄様の妹のコ──フランと申します」

「っ!」


 コロナは偽名で挨拶を行ったが、芽衣はサヴェーリオの顔を見るなり、俺の後ろへと隠れてしまった。

 

「芽衣、どうしたんだ?」

「……っ」

 

 後ろを向き芽衣に問い掛けるも、芽衣は首を振るばかりで答えようとしない。

 俺の知る芽衣は、人見知りはあまりしないと記憶にあったが、もしかしたらこの世界での出来事で、人見知りになってしまったのかも知れない。

 

「おやおや、嫌われてしまいましたか。仕方ありません、今日の所はこれで退散致しましょう」

 

 そう言って、サヴェーリオは去っていた。その間、芽衣はサヴェーリオを睨むようにじっと見ていた。

 

「メイナ、あの方がどうしました?」

 

 そして、サヴェーリオの姿が見えなくなって、漸く芽衣は口を開く。

 

「あの人……嫌な感じがする」

 

 嫌悪感を滲ませる声でそう告げる芽衣。だが、少なくとも俺はそんな風には思わなかった。どういう事だろうか。

 

「俺は感じなかったが……椿姫やコロナは何か感じたか?」

「ううん、私も特に感じなかったよ」

「わたくしもです。……もしかしたら、獣人族特有のものかも知れません」

「獣人族特有?」

「はい、獣人族は他の種族に比べて感覚が鋭いと聞きます。そのせいでわたくし達人間族には感じ取れないものがあるのでしょう」

「そうなのか?」

「……うん、何か良く分からないけど、あの人に近付いちゃダメだって気持ちがわいてくる。あの施設に居た人と似た感じ……。もうあの人とは関わらない方が良いよ」

 

 芽衣はそう言って、俺に抱き付いてくる。そして、その身体は少し震えていた。俺はその震える小さな身体をそっと抱き締め返す。

 

「椿姫、どう思う?」

「そうだね、芽衣ちゃんの感覚を信じるなら、容疑者の一人として上げておいた方が良いと思うよ。ただ、それが誘拐に関係してるかは分からないから、調査する必要はあると思うけど」

 

 確かにそうだ。芽衣の感じたものが本当だとしても、誘拐とは関係なく反応している可能性もある。ただ、少しでも可能性があるのならば、調査を行う必要はあるだろう。

 そして、今後の平穏の為にも多少なりとも強引な手を使って、犯人を見つけ出す必要があるのかも知れない。

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