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異世界転移で兄妹チート  作者: ロムにぃ
第一部 第四章 異世界で孤児院経営
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第七話 儀式


 それは日光が満ちる──所謂地球で言う満月の夜の事だった。

 ヒルティの顔は月明かりの薄暗い中でもはっきりと分かるほど赤い。

 

「にーに、お願い、なの」

「……分かった」

 

 ヒルティの小さな肩を掴んだ俺は、目を瞑ったヒルティに顔を近付け──

 

 ◆◆◆◆◆

 

 ヒルティの精霊魔法の封印を解く、当日の朝になった。

 この三日間ヒルティの顔を見ていない。見てしまえば儀式が先送りになってしまうので、それはしょうがないのだが三日間も妹の顔を見れないのはやはり辛い。

 地球でも修学旅行で椿姫と数日間会えなかった時もかなり辛かった。

 妹が増えた今でもそれは変わらない。一人でも欠けていると心が不安になってしまう。サマーリからヒルティの話を聞くと、ヒルティも辛そうにしているとの事だった。

 だが、精霊に会えないのも辛いようなので、頑張って堪えているのだという。

 ヒルティが頑張っているのに俺が弱音を吐く訳にはいかない。それに今夜には会えるので、それまでの我慢だ。

 

「お兄ちゃん、おはよう」

「お兄様、お早うございます」

「一刀にぃ、おはよっ」

「ああ、皆おはよう」

 

 この場にいないヒルティとサマーリ以外の妹達が、俺が起きた事に気付き挨拶をしてくる。どうやら、今日は俺が一番起きるのが遅かった様だ。

 

「遂に今夜だね」

「ああ、ようやくヒルティの精霊魔法を解放させられる」

 

 この世界での一般的な普段着に着替え庭へと出る。儀式の為に庭に準備した三つの円に異常は見られず、ほっとする。ついでに剣の素振りを行った後に食堂へと移動する。

 

「あ、兄上様、お早うございます」

「にいちゃん、おはようっ」

「「「おはようございま~す」」」

「ああ、おはよう」

 

 食堂にて朝食の準備を行っていたサマーリやシノン達にも挨拶を交わす。

 朝食の準備は既にほぼ終わっていたので、俺は何時も座っている席へと座る。

 隅っこで良いと言ったのだが、上座らしき位置に座らせられた。因みに妹達も同じテーブルだ。

 少しすると、子供達がぞろぞろと食堂へとやって来た。

 その後、サマーリはヒルティの部屋へと二人分の食事を持っていった。ヒルティ一人の食事では可哀想なので、世話役のサマーリがヒルティと共に食事を取るためだ。

 食事を終えると各々がそれぞれの作業を行うために行動を始める。

 その中で動いていないのは俺達兄妹だけだ。

 

「今日の俺の予定は復興の手伝いだったな。皆の今日の予定はなんだったか?」

「私は希望者への魔法の指導だよ」

「わたくしは孤児院の警備になっております」

「ぼくは孤児院の年少組のお世話だよ」

 

 それぞれの予定に問題が無い事を確認し、俺達も行動を開始した。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 今日の俺の予定は、年長組の一部が街で炊き出しを行うので、その護衛だ。

 単純に護衛だけではなく、列整理に横入りの注意、二度以上の配給の受け取り等、そういった事が行われないかの確認も行ってる。そして、その際に妙な話を聞いた。

 

「貴方達はもしかして港の隣にある孤児院の方ですか? もしそうならお話ししておきたい事が……」

「ん? ああ、俺はその孤児院院長で、そこでこの子達の世話をしている」


 配給を受け取った一人の男性に問い掛けられた俺は、隠す必要も無いのでそう答えた。

 

「おお、貴方があの孤児院の新しい院長さんですか。まだお若いのにご立派ですね。前の院長さんも素晴らしい方でね、亡くなられてとても残念でなりませんでしたよ」

「はあ……」

 

 前の院長を知らない俺としてはそう答えるしかない。

 そんな俺の様子に気付いたのか、男性は話を元に戻してきた。

 

「おっと、すみません、話が逸れてしまいましたね。それでお話ししておきたい事ですが……実は孤児達が最近姿を消しているという噂がありまして……それを言っているのがある孤児院の関係者だけなので本当かは分かりません。私も他の街から連れて来られたので、孤児院の方とは殆ど面識が無いので……」

「何でわざわざ俺に?」

「私は子供が好きでしてね、子供達には不幸になって欲しくないんです……ですので、充分に気を付けて下さい」

 

 噂、か。今聞いた話が本当かは分からないが、もし、本当であるならば確かに注意する必要がある。戻った際に全員に話しておく必要があるだろう。

 護衛の仕事を終えた俺は孤児院へと戻る。それからは何事も無く時間は過ぎ、遂に儀式を行う時間が訪れた。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 時間は深夜0時頃、何故この時間かと言うと、この時期と時間に月光がほぼ真上に位置するからだ。

 俺が儀式を行う庭に足を踏み入れ顔を上げると、確かに月光は真上に位置していた。

 視線を正面に戻す。その視線の先には儀式を行う場があり、描いた円の一つに美しい姿をした妖精が存在していた。

 着ている服こそ白一色の地味な物だが、月光に照らされた緑色の髪が神秘的に輝いている。そして、こちらをじっと見ている翡翠色の目も髪以上に輝き、暗闇の中でもはっきりと見え、その神秘性に拍車を掛けている。

 

「にーに……」

 

 その神秘的な存在の妖精──ヒルティが小さい声で俺を呼ぶ。その声は久しぶりに会えた気持ちを隠しきれていない。いや、隠すつもりなど無いのだろう。

 その顔は満面の笑みを浮かべていた。

 

「ヒルティ、元気にしてたか?」

「うん、寂しかったけど、今会えたからもう大丈夫なの」

 

 俺の気の利かない台詞に、何でも無いように答えるヒルティ。

 ここで突っ立っていても儀式は行えないと思い、ヒルティの方へと歩みを進める。

 ヒルティが居る円とは別の、隣り合った円に俺は足を踏み入れる。

 俺が居る円とヒルティの居る円の境目に置いてある台座を挟み、俺とヒルティは向き合った。

 

「ねーね達は?」

「こんな時間だからな。先に寝て貰った」

 

 本当は見ていたかった様だが、儀式には俺とヒルティ以外は居てはダメと説明され、仕方なく寝床に着いていた。

 

「それじゃ、始めるの」

 

 そう言ってヒルティは、既に置かれている封印珠の横に雫の形をした透明の石を置いた。

 

「これは?」

「これが『精霊の涙』なの」

「これが……」

 

 妖精が亡くなった時に契約した精霊が流す涙。完全な透明度を持ったそれは、置いた事を言われなければ気が付かない程の物だった。大きさは飴玉位の大きさで、綺麗な雫型をしている。


「それで俺はどうすれば良いんだ?」

「これからヒルティが解呪の言葉を言うの。その中で『我が兄が立ち会う』って言ったらにーには『精霊の涙』を口に含んで欲しいの」

 

 『精霊の涙』は飴玉位の大きさ、口に含むのは問題無いだろう。

 

「それから『我と兄が請い願う』で、ヒルティと一緒に封印珠に両手で触れて欲しいの」

 

 『我と兄が請い願う』で封印珠を両手で触れる、と忘れない様にしないとな。

 

「最後に『我と汝らと再び縁を結びたまえ』で─────して欲しいの」

「なっ!? そうしないとダメなのか?」

「うん、他に方法は無いの」

「……ヒルティは嫌じゃないんだな?」

「もちろんなの、いやなはず無いの」

「分かった、ヒルティの為だからな」

 

 正直抵抗はあるが、行わなければ精霊魔法の封印は解除されない。ならば、行う以外の選択肢は存在しない。


「それじゃ始めるの」

 

『我、精霊の友ヒルティなり、我ここに汝に請い願うものなり』

 

 厳かな雰囲気を出しながら、目を瞑ったヒルティが封印解除の言葉を紡ぎ始める。

 

『我、封印されし汝らとの縁の復活を願う者なり』

 

 そこで外周の円が輝き出した。輝き出す事は聞いていたので驚く事はない。

 

『その証として精霊の涙を捧げる』

 

 次に精霊の涙が輝き出した。

 

『我と汝らとの縁を繋ぎし者として、我が兄が立ち会うものなり』

 

 指定された言葉を聞き、光り輝く精霊の涙を躊躇しながらも口に含む。

 

『我と兄が請い願う』

 

 更に指定された言葉を聞き、封印珠を両手で触れる。その俺の手の上からヒルティが両手で触れてくる。

 

『我と汝らの縁を阻む障害を断ち切りたまえ』

 

 俺達が居る円も光り輝き出す。それと同時に封印珠に大きくヒビが入る。

 

『二度と我と汝らの縁が切れない事を祈る』

 

 俺とヒルティが地面から発生した光りの柱に包まれる。

 

『我と汝らと再び縁を結びたまえ──!』

 

 俺は躊躇ったが覚悟を決め──ヒルティのその小さな唇に自身の唇を合わせる。

 ヒルティが少し震えたのを感じたが、そのままの状態で口を少し開き、精霊の涙を舌でヒルティの口の中に押し込んだ。ヒルティはそれを抵抗せずに口に含み、喉を鳴らし精霊の涙を飲み込んだ。

 その瞬間、硝子が割れた様な音をさせながら、封印珠が粉々に砕け散り、凄まじい力の奔流が俺達を包む。

 白色と緑色をしたその二つの力の奔流は俺達の周りを数度回った後に、ヒルティの胸へと吸い込まれていった。

 その後、地面から発生していた光りの柱は消え去り、描かれた円の光りも徐々にその輝きが消えていった。

 そして、辺りは元の月光が照らす光のみとなった。

 

「無事終わった、のか……?」

 

 俺がそう呟くと同時にヒルティの翡翠色の瞳が開かれる。

 その瞳が付いている顔は、喜色満面になっていた。

 

「成功……したの! ヒルティが契約してた精霊を感じるの!」

 

 嬉しそうにそう告げるヒルティを見て、俺の顔に笑みが浮かんだのが自分でも分かる。

 

「そうか、良かったなヒルティ」

「うん! にーにのおかげなの、ありがとうなの!」

 

 お礼を言いながらヒルティは俺に抱きついてくる。そんなヒルティを俺はしっかりと受け止めた。

 

「これで精霊魔法が使えるのか?」

「うん、ヒルティは二人の精霊と契約してるの。ちゃんと呼べるか試してみるの」

 

 そう言って、ヒルティが精霊を呼び出そうとした時だった。

 

「強い力を感じて来てみれば、人間と半端者か。どういう状況じゃ?」

 

 いきなり俺達の前に姿を現したのは、羽を背中に生やした少女だった。

これにて今年の更新は終わりです。

連載を開始して約一年、その間ブックマークや評価をしてくださった方々にお礼申し上げます(^-^)

また来年も宜しくお願いします(_ _)

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