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異世界転移で兄妹チート  作者: ロムにぃ
第一部 第四章 異世界で孤児院経営
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第六話 準備


 エドワードが戻って来て数日後、第一陣の救援物資が到着した。

 それと同時に、ヒルティの精霊魔法封印解除が行える月光が満ちる三日前になった。

 その間は異性に会うことは出来ないので、その間のみヒルティは別の部屋へ移る事になる。

 俺は哀しそうなヒルティを抱き締めた。

 

「にーに……」

「ヒルティ、三日経ったら会えるから、それまで頑張れるか?」

「うん、精霊ともまた会いたいから頑張るの。だから封印が解けたら、またぎゅってして欲しいの」

「ああ、約束だ。それまで体調を崩さないようにな」

「うん、気を付けるの。儀式に必要な事は、椿姫ねーねに言ってるから準備をお願いするの」

「分かった。準備は任せておけ。サマーリ、ヒルティの事は頼んだぞ」

「はい兄上様、その間のヒルティちゃんのお世話は任せて下さい」

 

 ヒルティはこれから三日間、とある部屋で閉じ籠る。万が一にも異性と接触しない為の対処だ。もし、異性と会ってしまえば、儀式を行う事が出来なくなり、次の月に持ち越しになってしまう。

 流石にもう一月も待たせてしまうのは忍びない。そうならない為には僅かな可能性でも除かなければならない。

 その為の部屋への閉じ籠り。そして、その間のヒルティの世話はサマーリが行う。ヒルティへの用事は全てサマーリを通し、例外はサマーリが体調を崩した場合のみ、代理を立てる形にしている。勿論、代理も女性のみだ。

 その為にサマーリも、ヒルティの閉じこもる部屋へと移る事になった。

 それに加えヒルティが一人で眠るのは寂しいと言うのもあるが。

 ヒルティが三日間閉じこもっている間に俺達は儀式の準備を行う。と言っても孤児院の通常業務に加え、復興の手伝いもあるため手分けしないと回らない。

 俺は復興の手伝いに儀式の準備補佐を、椿姫は儀式と孤児院皆の食事の準備を、芽衣は復興の手伝いに子供達の相手を、コロナは孤児院の警備に孤児院の家事手伝いを、サマーリはヒルティの世話に椿姫の食事の準備補佐を、ククリ達年長者には孤児院の家事を、という形で仕事を分散させている。

 その間は復興の手伝いに関しては減らして貰った。

 儀式に関しては前もって行えば良かったのではないかと思ったが、儀式は準備においても三日前に行わないと効果が見込めないらしい。と言っても、一日あれば充分に終わらせられる内容ではあったが。

 

「まずはこの図形を地面に書けば良いんだな?」

「うん、大きさはこのくらいだよ」

 

 そして俺と椿姫は、先日草刈りを行った庭の一角にて、その儀式の準備を行っている。範囲は一辺が三メートルの正四角形。その範囲内に大きな円を描き、更にその円の中に隣り合った二つの円を描く。そして、二つの円の境目に台座を置き、その台座の上に封印珠を置く形になる。

 だが、地面に描いた円もただ描くだけでは無く、円を描いている線の上には瘴魔石を砕き小石位に細かくし粉状にした物を撒く必要がある。

 瘴魔石自体は城に山のように集められていたので、その一部を買い取っている。そして子供達にも手伝って貰い砕いて粉状にした。これについては三日より前に行っても問題無いらしく、既に粉状にしている。

 そこまでが、儀式までに済ませなければいけない事だ。

 特に問題が起きなければ、一日も掛からないだろう。

 しかし、この儀式にはもう一つ注意する点がある。いや、正確には注意したとしても防ぎようがない。それは、儀式は屋外でなければいけないが、儀式の日を含めた四日の間に雨が降れば、その時点で儀式は行えなくなってしまう。

 そうなれば、次の月光が満ちる日まで待つしか無くなる。完全に天候次第だ。こればかりは運に天を任せるしかない。

 ただ、運が良い事に今の時期は、雨が降る事は殆ど無いとの事だった。

 後は子供達が誤って入らない様にすれば問題は無いだろう。

 

 ◆◆◆◆◆

 

「……こんなものか?」

「……うん、大丈夫かな間違ってないよ」

 

 数時間後、ヒルティから貰った儀式の準備の仕方が書かれた紙を見ながら最終確認を行う。もし違っていれば儀式は失敗してしまう。なので、確認は時間を掛けて行った。

 最後に縄を張って誤って人が入らない様に区切り、立ち入り禁止の立て看板を設置する。後は全員に言っておけば良いだろう。

 俺と椿姫は孤児院の中へと戻る。そこでは今日も沢山の子供達が動き回っていた。家事の手伝いをしている者、楽しそうに遊んでいる者、皆が笑顔で日々を暮らしている。

 街はまだ復興が終わっておらず、収入も安定していないし、治安もまだ良くはない。

 だが、平和な光景がここにはあった。だから妹達だけではなく、この子達もこの場所も守っていくと俺は心に誓う。

 元の世界ではいち高校生でしか無かった俺に出来る事は限られていた。

 剣道を習う事により、普通の人より強くはなってはいた。だが、一丁の拳銃の前では無力でしか無かった。しかし、この世界では準位を上げれば強くなれる。エドワードが良い例だろう。

 勿論、準位だけに依存していても強くはなれない。準位に比例した自身の技術向上も必要だ。その為に俺は孤児院へと移り住んでから、元の世界で行っていた鍛練を再開した。エドワードの時間が空いたときに、鍛練を手伝って貰ってもいる。

 そのお陰か、準位も技術も徐々に上がっている。妹が増えた事もあり、加護や称号による補正値も増えている。それでもエドワードとの能力差はなかなか縮まらないが。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 そろそろお昼頃だと思い食堂に行くと、食事の準備が終わろうかとしている所だった。午前中椿姫は儀式の準備を行っていたため、今日の食事はサマーリが中心に行っている。と言っても、サマーリは儀式に備えて部屋に籠っているヒルティの世話もあるので、作業よりも指示を行うのが主だ。実際の調理は子供達が行っている。

 子供達には基本的に得意な家事を割り振ってはいるが、余程壊滅的で無い限りは色々な家事をやらせる様にはしている。

 一つの事が得意でも、他の事が出来なければ独り立ちなど望むべくもない。

 子供達に対しては『これは得意だけど他の事も出来る』となるように色々な事を教えている。中には戦う事を前提とした訓練もしている子供達もいる。何故かと言えば、子供達の中には戦闘に関する技能を持つ者が少なからず居たからだ。

 勿論、その全員が訓練を行っている訳ではない。訓練は希望者のみに行っている。にもかかわらず、殆どの子供達が訓練を希望してきた。

 中には戦闘の技能を持っていない子が訓練を希望したりもしていた。

 戦いに向いているとは思えないククリも希望してきたのは驚いた。

 そして、その殆どの理由が、理不尽な出来事を退けたい、という想いからだった。

 ここにいる子供達はほぼ全員が理不尽な目に遭い、孤児となっている。強くなりたいという想いは、俺もそうなので理解できる。そんな想いを無下には出来ず、希望者全員に訓練を行う事になった。

 そんな想いが原動力だからなのか、訓練を希望した子供達は根を上げる事無く訓練を行っている。そして、それは結果にも繋がっている。と言っても、始めたばかりなので極端に強くなった訳じゃない。例えば今まで剣を持ち上げる事が出来なかった子が、数日で素振りが出来るようになった位だ。

 勿論、子供によっては魔法が得意な者もいるので、全員が剣の素振りを行った訳ではない。

 そんな訳で数日前から俺達の日常には、戦いの訓練も追加された。

 そして今日の午後は俺による剣の指導だ。まだ始めて数日なので、走り込みや剣の素振りしか行っていないが、全員が真剣な表情で訓練を行っている。

 

「あと10回で休憩するぞ」

「「「「はい!」」」」

 

 昼食を終えた俺は訓練希望者と共に、孤児院の庭で素振りを行っている。

 俺が空いていない場合はコロナが行う事になっている。

 剣や短剣の訓練を希望してきたのは50人中31人だ。その内戦闘の技能を持つ者は半数にも満たない。残りは6人が魔法の素質があったので魔法の訓練を、8人は弓に関する技能があったのでその訓練を、5人は戦い自体が無理と訓練には参加していない。

 問題は魔法については椿姫が教えれば良かったが、弓の指導者がいない事だ。コロナが多少習っていた位で、本当に基礎しか教える事が出来ない。今は取り敢えず、弓が引ける力を付ける為に一緒に剣の素振りを行ってはいるが、何時かはどうにかしなければならないだろう。

 

「よし休憩だ、各自充分に水分の補給を行う様に」

「「「「はい」」」」

 

 休憩と告げたと同時に、訓練を希望しなかった5人が皆に水や塩を配っていく。

 これは俺達が指示した訳ではなく、この子達自身が言い出した事だ。

 戦う事は出来ないけど手伝い位はしたいと言って、自主的に訓練希望者の補佐を行っている。そんな子達を訓練希望者達も蔑んだりはしていない。

 

「お兄ちゃん、お疲れさま」

「ああ、ありがとな」

「水だけじゃ無くてちゃんと塩分も取ってね」

 

 椿姫から水入りの容器を受け取った俺は、ゆっくりと水を口に含み喉を潤す。

 その後、もう一つの容器に入っていた塩を指でつまみ、口に含む。

 この世界の塩は海の水から採っており、海辺にあるこの街ではそれほど珍しい物ではないので入手は容易だった。

 逆に砂糖はクスィラ大陸北部では殆ど作れない為に手に入りづらい。南部では豊富に作れているらしいが、北部に輸送される量は限られているらしい。

 それにより北部では甘い食べ物は余り存在しない。椿姫や芽衣はそれを非常に残念がっていた。

 それはともかく塩があるお陰で、塩分不足による熱中症になる可能性は低いだろう。

 子供達にも塩分を取りすぎない程度に取るように言っている。子供達の健康管理も俺達孤児院を経営する者の仕事だ、と言っても、俺は余り詳しく無いから椿姫の知識頼りだ。椿姫が居なければ、栄養管理など出来なかっただろう。

 そのお陰か数日にも関わらず、早くも子供達の血色は徐々に良くなっている。

 城から配給される限られた食材で良くやっていると思う。

 

「ねえ、お兄ちゃん」

「ん、何だ?」

「こんな日々がずっと続いたら良いね」

「……そうだな」

 

 俺もそう思ってはいる、だが何となく長くは続かないんじゃ無いかとも思っていた。

 この世界に来て一月も経っていない間に起こった事を考えると、そんな思いが頭から離れないのだ。

 今、この時は束の間の平和じゃないのかと……。

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