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異世界転移で兄妹チート  作者: ロムにぃ
第一部 第四章 異世界で孤児院経営
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第三話 決意


 孤児院を見に行った数日後、俺達は再び孤児院を訪れていた。だが、今回は見に来ただけではない。正式に孤児院を譲り受けた俺達は、この孤児院に今日から住む為に全員でやって来たのだ。

 

「ふわぁ~すごい大きいね~」

「ここが今日から私達の家になるんですね」

「わたし、がんばっておてつだいするね!」

「まずは住めるように掃除しなくちゃですね」

 

 俺の後ろに付いて来ている子供達の、驚いた声や気合いを入れている声等が聞こえてくる。だが、どの声もこれからの生活を楽しみにしている事が窺える。

 今は問題無さそうだが、実際に見る事で意見が変わる子もいるかもしれない。

 全員が見終わった後にでも、もう一度確認を取る事にしよう。

 

「それじゃ、まずは孤児院の中を見てくるといい。皆が中を一通り見たら、手分けして掃除をやるからな。30分後までには食堂に集合だ」

 

 俺の説明に子供達は大きく返事をし、一斉に孤児院の中へ向かっていく。そのせいで孤児院の入り口は渋滞してしまっていた。

 

「みんな、孤児院は逃げないから並んでゆっくり入ってね。慌てると怪我をしちゃうからね」

 

 年長者のククリが声を掛けた事により、子供達は並んで順番に孤児院へと入っていく。初めて会った時はおどおどした子だと思っていたが、しっかりしている一面もあるようだ。

 子供達全員が孤児院に入ったのを見届けた後に、俺達も孤児院の中へと入る。

 孤児院の中は子供達で溢れかえっており、はしゃいでる高い声がそこらじゅうから聞こえてくる。

 子供達が見回っている間に俺達は食堂へと向かい、そこで城から借りてきた掃除道具を【空間収納】から取りだし並べていく。

 城から借りてきたのは、この孤児院に元からある分では数が足りず、店も開いていない為、充分な数を用意出来なかったからだ。

 掃除道具を並べ終わった俺達は、子供達が集まるまで食堂に居ることにした。

 待っている間、コロナはサマーリと、メイナはヒルティと会話をしている。

 そんな妹達の様子を眺めていると、椿姫が話しかけて来た。

 

「ねえ、お兄ちゃん」

「どうした?」

「家族がいきなり一杯になっちゃったね」

「確かにな。まさかこの人数を世話する事になるとは、想像も出来なかったが……」

「そうだね………………ねえ、お兄ちゃん……えっとね、あのね」

「椿姫?」


 椿姫は何故か顔を赤くしてもじもじとしている。何か言いたい事があるようだが、中々口にしない。そんな椿姫を俺は急かさずにじっと見つめる。

 すると、椿姫は覚悟が決まったかのような表情になり口を開いた。

 

「お兄ちゃん、私と違う意味での家族にならない?」

「椿姫? 何を……」

「前から言ってたよね……兄妹としてじゃなく、私はお兄ちゃんと──」

「お兄様、全員揃いました」


 椿姫がそこまで言ったところで、コロナの声が掛かり中断される。

 椿姫が言いたい事は察したが、途中で止められてしまったため、答える事は出来なかった。

 

「……」

「……」

「お兄様、椿姫ちゃん、どうかされましたか?」

「いや、何でもない。全員揃ったんだったな」

「はい、一人も欠ける事なく揃っております」

 

 椿姫が今、言おうとした事はこれが初めてではない。今まで幾度も聞いてきた。だが、今回の様に躊躇いながら真剣な表情で言おうとしたのは初めてだった。

 何時もは笑顔だったり、はしゃいでいたりといった表情だったからだ。

 椿姫に視線をやると、何とも言えない表情をしていた。

 気にはなるが、今は状況的に続きを聞くのは無理だ。なので俺は意識を切り替え、集まった子供達に話を始める。

 

「まず、もう一度確認する。皆ここで住む事に反対の者は居るか? もし居るならまだ遅くはない。遠慮せずに言ってくれ」

 

 だが、全員が首を横に振り、否定の意を示してくる。

 

「分かった。これから全員で数人ずつで班を作り、孤児院内の清掃を行う。班長に年長者を付けて振り分けている。班によって人数が異なるのは、場所によっては範囲が広い為だ。これから班ごとに名前を言っていくから班で固まってくれ」

 

 俺がそこまで説明すると、サマーリが班ごとに名前を呼んでいく。それに合わせて子供達が班ごとに分かれるために移動を始める。

 その後、誰の班がどこの掃除を行うのかをコロナが説明していく。

 担当場所を聞いた班は、その場所に合った掃除道具をメイナから渡され、それぞれの場所へと向かって行った。

 椿姫を除いた妹達もそれぞれの班を率いて食堂から出て行った。

 食堂に残されたのは俺と椿姫の二人のみ。それもその筈、俺と椿姫の担当場所は二人のみで行うからだ。

 

「お、俺達も行くか」

「う、うん」

 

 俺と椿姫は少し気まずい雰囲気を漂わせながら、担当場所へと向かっていった。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 俺と椿姫が向かったのは雑草が生い茂っている庭だ。

 この広い庭を二人でというのは、余りに無謀だと思うだろう。だが、それには理由がある。その理由は俺が剣術で、椿姫が魔法で草を刈るのが早いと椿姫から提案があったからだ。本当なら根から引き抜いた方が良いんだろうが、幼稚園の運動場位はありそうな庭の草を一本一本抜いていくのは、人数がいてもかなり大変だ。

 そこで今回は取り敢えず刈るだけ刈ってしまって、後は日々草むしりを行っていく形となったのだ。

 

「……それじゃ、やるか」

「……うん」

 

 何時もと違い、お互いに言葉数が少ないのは、先程の中途半端なやり取りのせいなのは間違いない。だが、それを聞き直すのも躊躇われる。椿姫も恐らく続けにくいと思い、二人になった今でも言い出して来ないのだろう。

 ともかく、今は雑草を刈る事に集中する。

 俺は腰を沈め、鞘に納められた刀の柄を握る。それを見ていた椿姫は俺とは違う方向を向き、手にした杖を構える。

 

「はっ!」

「【風刃】」

 

 俺は常人では見えない速度で刀を抜き放ち、前方に生える雑草を切り払う。

 直ぐ様、納刀し前方を確認すると、狙い通りに刀の間合いにある雑草が根元近くから切れて、地面に草の小さな山が出来る。

 椿姫の方を見ると、風の刃が見事に椿姫の前方に生える雑草刈り取っていた。

 雑草刈りを二人で担当したのはこれが理由だ。ある程度の範囲を纏めて刈る事が出来るのが俺と椿姫しか居なかったからだ。

 流石に刈った後に集める作業は二人では無理なので、他の部屋を掃除し終わった班が来る事になっている。

 俺達二人は無言で雑草を次々と刈り取っていく。この感じならば、それほど時間は掛からずに雑草を刈り終えるだろう。

 それよりも今はこの静かな状態の方が問題だ。何時もならこういった事を二人でしている時は、ちょくちょくと椿姫から話題が振られる事が多い。

 だが、今は振ってきそうな気配が一向に感じられなかった。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 30分経った頃には、庭の雑草の殆どを刈り尽くしていた。

 その間、俺達は一言も言葉を交わしていない。交わさずともお互いがどこを刈ろうとしているか理解してしまっているのも、交わさなかった理由の一つだろう。

 もし息が揃った兄妹でなく、声を掛け合いながら作業を行わなければならなかったと思う。だが、もしそんな兄妹だったなら、こんな空気にすらなっていない。

 お互いに分かりあい過ぎているからこその、今だ。もし、は存在しない。

 そんな事を考えている内に、庭の雑草を刈り尽くしてしまっていた。

 掃除を終えた班が庭に来る気配はまだない。俺は雑草を集める前に休憩をしようと思い、椿姫に声をかけようとしたその時──

 

「お兄ちゃん──」

 

 唐突に椿姫が俺を呼ぶ。

 

「聞いて欲しい事があるの──」


 椿姫の言葉に俺は思わず身構えてしまう。

 

「お兄ちゃんにとって私は妹でしか無いのかも知れない──」

 

 そうだ。その通りだ。だからそれ以上は……。

 

「でも私にとってはお兄ちゃんはお兄ちゃんだけじゃなくて──」

 

 分かっていた。でも深く考えない様にしていた。

 

「私は──」


 兄が一番身近な異性なだけで、ただの一過性のものだと考えていた。

 

「お兄ちゃんが好き──」

 

 だが、そう言われるのが嫌じゃない。

 

「男の人としてお兄ちゃんが大好き──」

 

 いや、寧ろ嬉しく思う。

 

「だから、私と結婚して欲しいの」

 

 だが──

 

「すまん……」

 

 俺はそう答えていた。

 

「何で……?」

 

 捨てられた子猫の様にこちらを見上げて来る椿姫。

 だが、その想いに応える訳にはいかない。

 

「俺にとって椿姫は……妹だからだ。守るべき存在の妹に今はそれ以上の感情は……」

 

 椿姫を妹としてしか想っていないのか……今は自分では分からない。


「ほんとうに……? ほんとうにそれ以上の感情は無いの?」

 

 椿姫の哀しそうな表情が……目が俺に突き刺さる。


「………………ああ」

 

 絞り出すように椿姫にそう告げる。少し胸が痛い……。

 

「………………そっか」

 

 俯いて呟く沈んだ声が俺の胸に突き刺さる。痛みが強くなり椿姫から視線を外してしまう。

 

「分かったよ……でも今は、だよね?」

 

 沈んだ表情から一転して、何かを決意した表情へと変わっていた。

 

「だから……お兄ちゃん、ちょっとしゃがんで貰って良いかな?」

 

 何をするつもりかは分からないが、片膝を付き椿姫と目線の高さを合わせる。

 すると椿姫が呼吸の音が聞こえる程、近くに寄ってくる。

 

「……これは私の決意の証」

「っ!?」

 

 椿姫の行動に気付いた時にはもう既に遅かった。

 椿姫の柔らかい唇が俺の唇へと押し付けられる。

 

「…………」

「…………」

 

 引き離そうと思えば引き離せた筈なのに、俺の身体は動かない。

 身体が椿姫と接した面と離すのを拒否しているかの様だ。

 

「…………」

「…………」

 

 一体そのままの体勢で何秒たっただろうか。気が付けば椿姫と俺の唇は離れていた。

 今まで椿姫が触れていた部分を思わず触ってしまう。

 

「つ、椿姫……何を……」

「これが私の決意の証。絶対にお兄ちゃんを振り向かせて見せるから」

 

 椿姫が悪戯っぽい笑みを俺に向ける。

 

「だから覚悟しててね、お兄ちゃん♪」

 

 そんな椿姫に俺は何も言う事が出来なかった……。

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