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異世界転移で兄妹チート  作者: ロムにぃ
第一部 間章三
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王位


 彼が王女と心を通じ合わせた翌日、王国軍と反乱軍は左右を森に囲まれた、とある平原にて対峙した。

 対峙する王国軍8,000と反乱軍4,000。王国軍は前面に騎兵4,000を全て配置し、歩兵を後方中央に2,000、左右に1,000ずつ配置している。

 騎兵で反乱軍を壊滅させ、歩兵で副都を攻め落とす算段だ。

 対する反乱軍は、魔銃兵が2,000に歩兵が2,000、数は半分と少ないが、反乱軍の陣地には幾重にもわたる塹壕と柵が設置されている。陣地の左右は騎兵では抜ける事が不可能な森があり、回り込まれる事もない。

 戦いは何の合図もなく始まった。

 王国軍の前方に配する騎兵4,000の内、2,000が突撃を開始する。

 王国軍の将軍は騎兵のいない反乱軍など、これで蹂躙出来ると考えていた。

 だが彼が見たものは、2,000の騎兵がほぼ何も出来ずに全滅させられる、信じがたい光景だった。騎兵隊2,000は反乱軍前面に構築された一列目の柵を越えた所で塹壕に嵌まり、二列目の柵と塹壕の中にいる魔銃兵達の良い的にされた。塹壕を越えた騎兵も絶え間なく繰り出される魔銃の弾丸に撃たれ、なすすべなく倒れていく。

 極一部で柵と塹壕を抜けた騎兵もいたが、後方にいた歩兵に囲まれ倒されてしまう。

 魔銃は連射出来る構造をしていないのに何故、と将軍は戸惑う。

 その答えは反乱軍で王女の補佐となったとある人物が、魔銃を撃つ者と弾丸を込める者とで分ける事を提案したからだ。しかも半数が時間差で撃つ事により、連射していると変わらない速度で相手に魔銃を撃つ事に成功した。

 

「ここまで上手くいくとは……」

 

 それを提案した彼自身も、ここまで上手くいくとは思っていなかった。

 だが、まだ数の上ではまだまだ負けている。油断は出来ない。

 しかも、最前列の柵は倒され、塹壕は騎兵の死体で埋まり簡易的な道も出来ている。

 このまま、突撃されれば蹂躙されてしまうだろう。

 しかし、彼はそれも含めて準備を整えていた。敵の第一陣の全滅を確認した後、直ぐに全軍を後退させ、後方に構築していた三列目の柵の後方へと再び陣を構える。

 すると先程までいた二列目の柵や塹壕が一列目の代わりをする。

 それを見た将軍はこのまま突撃しても、二の舞になると判断し、歩兵の半分──2,000を森から側面を突くと同時に、騎兵を突撃させる作戦に切り替える。

 将軍は歩兵を森に向かわせた後に、時間差で騎兵を突撃させた。そして、騎兵が柵に辿り着く頃に歩兵が側面を突く──筈だった。

 歩兵は側面を突くどころか、一人も森から出てくる事さえなかった。

 そして、騎兵は今更止まる事も出来ず──結果、全滅した。

 

「ば、馬鹿な……歩兵2,000はどこへ行ったのだ!?」

 

 将軍で無くともそう叫びたくなるだろう。

 将軍が呆然としていると、森の中から漸く歩兵が出てきた。……入ってきた場所から。

 

「しょ、将軍……申し訳ありません、失敗致しました……」

 

 将軍の元に報告に来たのは別動隊を任せた内の一人だ。別動隊の隊長はあちこちが傷だらけになっている。

 

「一体何があったのだ!?」

「森の中は罠が多数仕掛けてあり、負傷者多数により通過するのは不可能でした……」

「な……」

 

 隊長が言った通り、森の中はかなりの数の罠が仕掛けられていた。命を奪うほどではない、身動きが取れなくなる等の通行を妨げる罠。

 それにより森を抜けるのを断念せざるを得なかったのだ。

 これを指示したのは、勿論王女の補佐となった彼だ。

 彼はこれだけの塹壕や柵に数多の罠を兵士だけでは準備は出来ないと考え、冒険者には依頼を、副都に住む国民にも報酬を約束し人員を確保した。

 国民も今の国王には不満を持っていたので、積極的に参加してくれたのも大きいだろう。結果、半数以上の敵兵士をほぼ無傷で倒す事が出来た。

 こうなれば、もう王国軍に勝ち目はないだろう。撤退しても将軍は間違いなく敗戦の責任を取らされる。ならば……と、それほど王に忠誠を持っていた訳では無い将軍は反乱軍に投降した。

 

 ◆◆◆◆◆

 

「────!!」

 

 無事帰って来た彼に、王女は兵達がいるにも関わらず抱き付いてくる。

 それは不味いと慌てる彼だったが、周りにいる兵士達は温かい目で彼と王女を見ていた。何故、と思っている彼に、冒険者時代からの仲間から告げられる。

 

「二人が想いあっていたのはバレバレだ」

 

 第三者から見ればバレバレだったとは思っていなかったのか、彼と王女は二人揃って顔を赤くする。だが、そんな温かい空気の中、医療院から訃報がもたらされる。

 

 ──王子殿下が亡くなった、と──

 

 ◆◆◆◆◆

 

 王子が亡くなって数日後、反乱軍の正式な旗頭となった王女と補佐を務める彼は、王都に向かい進軍していた。

 その数約7,000──王国軍の捕虜を希望者のみ組み込みんだ結果だ。希望者といっても殆どは逆らえずに王国軍に従軍していた者ばかりで、寧ろ率先して反乱軍に入りたいと言ってきた者が殆どだ。流石に負傷者は連れて来てはいない様だったが。

 出発まで王女は兄を喪った哀しみで塞ぎ込んでいた。大切な者を喪った時の気持ちを知っている彼は、なるべく王女の側に居るようにした。周りの者も気を使ってくれたのか、どうしても指示が必要な時以外はそっとしてくれていた。

 こんな状態で王都に出発出来るのだろうか、と彼は思ったが、出発日の朝になると王女はしっかりとした顔付きで、もう大丈夫です、と彼に言った。

 そんな王女を見て、儚そうに見えてもやはり王族なんだな、と彼は思ってしまう。

 公認の仲になってしまった二人は、手を繋いだ状態で兵士達の前に立ち、王都へ進軍を開始すると告げた。

 二人を祝福する者、王子の仇を討つと言う者、圧政からの家族解放を望む声を上げる者、様々な声が上がる中、王都へと進軍を開始した。

 そして、もう王都は目の前へと迫っている。

 王国軍にはもう余力が無いのか、あの戦い以降は軍を差し向けて来る事は無かった。

 それどころか、王都に到着すると門が開け放たれているのが見えた。彼らは訝しみながらも、先見隊を出し王都へと入る。すると王都内は彼達を歓迎するかの様に歓声を上げていた。

 驚きながらも、彼は王女と共に手を振りながら王都の中心──王城へと向かう。

 凱旋を行っている様な心持ちで進む彼らの前に、閉ざされた城門が目に入る。

 流石にそこまで甘くは無いかと、彼は兵士達に城壁周辺を見て回るよう指示を出す。

 国自体が大きくは無いため、王城もそれほど大きいものではない。それほど時間も経たずに兵士達が戻ってくる。

 城壁の上には余り兵士もおらず、高さもそれほどではない。これならば城門を破壊するよりは、城壁を越えた方が良いと彼は判断した。

 そして抵抗らしい抵抗もなく城壁を越え、内側より城門を開き城内へと反乱軍が雪崩れ込んだ。

 殆どの兵士が出会う度に投降した為、あっという間に城内は反乱軍に占拠される。

 そして、捕縛した国王は惨めにも命乞いをしてきた。直ぐにでも殺してしまいたい気持ちはあったが、彼は何故村を襲ったのか聞く為だけに国王をその場では殺さなかった。彼は兵士達に国王を投獄するように告げる。

 何故この場で聞かなかったかと言うと、王女には誰が彼の妻や村人を殺したのかは告げていないからだ。彼の事を王女に話した仲間達も言っていないと言っていたので知らないだろう。そして、彼はその事をこれからも王女に言うつもりも無いため、この場で聞く事はしなかったのだ。

 何事も無い振りをしながら彼は王女を玉座へと導く。

 彼に導かれながら玉座へと王女が座る。

 その瞬間、王位は王女──いや女王へと継承された。

 

 だが、その数ヶ月後、王位は別の者に継承される。

 

 王女と結婚した彼へと──

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