表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移で兄妹チート  作者: ロムにぃ
第一部 第三章 異世界で人質解放
61/90

第十六話 対峙


 ──一刀視点──

 

「ほう……お前は確かあの時の異世界人か。その殺気、多少はましになった様だな」

 

 刀を受け止められた体勢のまま固まっていた俺は、フランツの声で我に返り距離を取り、【防】の構え──所謂下段の構え──を取る。この男相手に迂闊に攻撃を仕掛ければ、返り討ちに会ってしまうからだ。

 

「しかし、あれの拷問を受けてよく生きてたな。あれが拷問した者はほぼ死ぬからな、それだけでも大したものだ。……それにしても、お前が生きてここに居るという事は、あれは死んだか?」

「……俺が殺した」

「ほう……成る程、それで漸くまともな殺気を放てる様になったか。それでもまだまだ未熟の様だがな」

「……」

 

 フランツは剣を鞘に入れたままで、構えもせずに話を続けてくる。

 フランツやルドルフにとって、現状は時間が経てば経つほど不利になる筈だ。なのに何故、ここまでのんびりと話をするのか分からない。

 

「……だんまりか、まあいい。ところでそこにおられる我が王を弑したのか?」

「……まだ、生きている」

「ふむ、分からんな、何故殺さなかったのだ? お前にとって私や我が王は憎い相手の筈だ。見たところ一部の兵士は殺しているしな、今更人を殺せぬ訳ではあるまい?」

「……」

「言わんか、まあ予想は付く。この反乱、お前も無関係ではなかろう。となればエドワードかベルンハルトに引き渡す積もりなのだろう?」

「ああ」

 

 ちょっと考えれば分かる事だ。隠す程の事でもない。

 

「だが、何故この場所に居るのかが分からんな。何故、ここを通るのが分かった? ここは一部の人間しか知らん。まして異世界人であるお前が知る訳がないし、知っていたとしても、ここを通るなど予測出来んだろう」

「……それに答える義務はないだろう?」

 

 妹達や逃がした子供達の事を考えれば、正直に答える訳にもいかないので俺はそう答える。フランツもそれは分かっているのだろう、表情に変化はない。

 

「まあいい、この状況では王が生きていようと関係無いからな。今は……お前の相手をしてやろう」

「っ!?」

 

 ルドルフが生きていようと関係無い? どういう事かと思ったが、フランツから発せられた殺気で俺の思考は中断させられる。

 何かを考える余裕など無い。この戦いに集中しなければ、一息で殺されてしまう。

 フランツが持っていた大剣を鞘からゆっくりと引き抜き、正眼の構えでこちらを睨み据える。それだけで竦み上がりそうになる。

 萎えそうになる心を抑え込み、必死に構えを維持する。

 だが、こちらから動く事は出来ない。俺から仕掛ければ間違いなく、前回の二の舞になってしまう。俺が出来る事は受け流しながら、エドワード達が来るまで時間を稼ぐ事だけだ。と、思っていたがフランツはまだ動かない。前の様に俺が動くのを待っているのかも知れない。であれば対策を練るためにも、フランツに【鑑定】使用する。

 だが──

 

「見れない……?」

 

 【鑑定】を使用したにも関わらず、フランツの能力は見る事が出来なかった。

 その事に動揺してしまったのがフランツも分かったのか、怪訝な表情をしている。

 

「見れない……だと? ……ああ成る程、【鑑定】持ちか。残念だが私は【鑑定遮断】を持っているからな。私の能力はみれんよ」

 

 フランツの能力を見る事が出来れば、多少なりとも判断材料にはなっただろう。だが、フランツの言う【鑑定遮断】の技能のせいで見れないのなら、仕方がない。

 気を取り直し、フランツの動きを見逃さないように注視しながら数歩下がる。

 そんな俺の姿を見ていたフランツが目を細めた。

 

「……仕掛けてこないか。ではこちらから行くとしよう」

 

 その声と同時にフランツが踏み込んで来ると思った瞬間、直ぐ目の前にフランツがおり俺に斬りかかろうとしていた。

 すんでの所で身体と大剣の間に刀を割り込ませる。だが、大剣の勢いは殺せずに押し込まれた刀の峰が俺の肩に若干食い込んでしまった。

 

「ぐうっ!」

 

 無理に対抗しようとせずに後方へと跳び、大剣の間合いから外れる。

 追撃を警戒し直ぐ様刀を構え直すが、追撃が来ることは無かった。

 

「ほう……まさか、受けられるとは思わなかった」

 

 余りに速すぎる。近づかれるまで全く気が付かなかった。今の俺では防御を固める事すら厳しい。エドワード達が来るまで持たないかも知れない。

 それにエドワード達がどの位でここに着くかも分からない。【俯瞰探査地図】はそちらに意識が向いてしまうので、フランツを相手取るには危険すぎて切っているからだ。

 フランツ相手には焼け石に水だろうが、俺は技能の【身体強化(極)】を使う。

 

「さて、何時まで持つか、見物だな」

 

 そう言いながら、フランツは俺に見えるギリギリの速度で近付き、大上段から斬りかかって来る。刀で力の方向を変えさせ、何とか斜め下へと受け流す。だが、直ぐ様下からの斬り上げが俺を襲う。その斬り上げを大きく後ろに飛んでかわす。

 しかし、それにより体勢が崩れてしまう。そして、気が付くと俺の胸にフランツの拳が迫っていた。避ける暇もなく、俺はその拳をまともに食らってしまった。

 

「かはぁ……っ!」

 

 殴られた衝撃で後ろへと吹き飛ばされ、地面へと仰向けに倒れ込む。

 殴られた事と地面へと倒れた衝撃で、息が詰まり呼吸が出来なくなる。

 視界も白く染まり、周りの状況も見る事が出来ない。

 このまま倒れていれば殺されてしまう。そう思い身体を動かそうとするが、胸に鋭い痛みが走る。もしかしたら肋骨が折れているかも知れない。

 少しして視界が戻り立ち上がろうとするが、足に力が入らなかった。刀を支えにしてどうにか片膝を付いた状態で起き上がる事が出来た。

 ふと、フランツの方を見ると、大剣を肩に担いだままこっちを無表情で見ていた。

 まただ。殺そうと思えば、何時でも俺を殺せる筈なのにそうしない。全く意味が分からない。その表情からは何も読み取れない。

 

「……終わりか? もう時間も無いことだ。これで終わりにしよう」

 

 無造作に近付いて来るフランツを、俺はただ見ている事しか出来なかった。

 徐々に近付いて来る死に、どうする事も出来ずにただ蹲っているだけ。

 フランツが大きく大剣を振りかぶる。これが降り下ろされれば、俺は間違いなく死ぬだろう。フランツ程の者が斬り損なう事などないと断言出来る。

 そこで、妹達の事が頭に浮かぶ。

 妹達を残して死ぬ? あり得ない。妹達はこれからも俺が守る。それにはここで生き延びなければならない。

 大剣が降り下ろされる。俺はどうにかそれをかわそうとして──

 

「お兄ちゃんっ!!」

 

 俺を呼ぶ声と同時に、何かが弾かれ割れた様な音がした。

 フランツを見ると、驚きの表情を浮かべている。その視線は俺の後ろを見ていた。

 フランツの視線を辿るように、俺は後ろに振り向く。そこには──

 

 杖を掲げた椿姫の姿があった。

 

「間に合った……!」

「つ、椿姫? な、んで……」

「ヒルティちゃんに聞いて来たの。お兄ちゃん、無茶しないでよ……お兄ちゃんが死んじゃったら、私……」

 

 椿姫が泣きそうな表情を浮かべるが、今はそれを気にしている場合ではない。

 この場にはフランツが居る。このままでは椿姫も殺されてしまう。

 俺は直ぐ様正面を向き、フランツの様子を窺う。するとフランツは大剣が弾かれた状態のまま、驚愕の表情を浮かべており、こちらに追撃を仕掛けてくる様子もない。

 

「っ!? ……お前はこの男の妹だったな。今のは何だ……? 普通の防御魔法では無いようだが……」

 

 どうやら椿姫が使った魔法に驚いている様だ。その間に体勢を整えたいが、身体が言うことを聞かない。

 

「もう、これ以上お兄ちゃんは傷付けさせない!」

 

 そう叫びながら椿姫は、瘴魔犬と戦った時に使用した【空間障壁】を俺達の周りを囲うように出現させる。

 

「これは……まさか【空間魔法】か!? ……成る程、異世界人という事だけはあるな、だが──」

 

 フランツが大剣を一振りするだけで、先程と同じ音を立てて【空間障壁】が破壊されてしまう。だが幸い 【空間障壁】ごと俺達を斬る事は出来ない様だ。

 

「お前の力量では私の剣を防ぐことは出来ん。一時しのぎなだけだ」

 

 椿姫は壊された障壁を直ぐ様、再出現させる。確かにフランツの大剣を弾く事は出来ているが、フランツの言うとおり一時しのぎだ。椿姫は魔法を使えば精神力が消費されると言っていた。対してフランツは剣を振るだけだ。ならば何時かはこちらが先に限界が来てしまう。

 そんな事を考えている間にも、数度【空間障壁】が破壊されていく。

 

「うぅ……」

 

 椿姫の苦しげな声が背後から聞こえる。

 椿姫は侵入する際に複数の魔法を使っている。その影響もあり、もう精神力が残り少ないのかも知れない。

 俺は未だにまともに立つ事が出来ない。それほどにフランツから受けた打撃は、俺の身体に甚大な影響を及ぼしていた。

 このままでは、と思っているとフランツの攻撃が唐突に止まる。

 

「……そんなにこの男に死んで欲しくないのか?」

「当たり前だよ! 私の大事な、お兄ちゃんなんだから……!」

「……そうか、ならば提案だ。お前が私の元に来れば、この男は生かしてやる」

「なっ!?」

「え……」

 

 フランツの唐突な提案に面食らう。フランツが椿姫を求める理由が分からない。

 それにフランツの能力ならば、俺を殺すなどして無力化し、椿姫を拐うなど造作もない筈だ。わざわざ、そんな提案をする意味も分からない。

 フランツの意図は分からないが、椿姫を差し出してまで自分が助かろうなどと思う訳がない。そして、きっと椿姫も──

 

「勿論、断るに決まってるよ。お兄ちゃんと、離れ離れになるとか考えられないから」

「そうか……そうなるとこの男を殺すしか無いが? もう魔法を使って防ぐのもそろそろ限界だろう。どう切り抜ける積もりだ?」

「それは、もう直ぐにでも分かるよ」

「何……? まあいい続けるとしようか」

 

 椿姫とフランツの会話が終わり、フランツは再度大剣を振るい始め、椿姫がまたも障壁を破壊される度に再度障壁を張る。

 そんな攻防の途中に、椿姫が杖を持っていない方の手で俺の頭を抱えてきた。

 その椿姫の行為に、頑なな信念を感じ取った。きっと椿姫は精神力が尽き魔法を使えなくなっても、俺から離れないだろう。それは、この世界に来る前に、身を呈して俺を庇って殺された事からも証明されている。

 椿姫が魔法を使う度に、椿姫は俺にもたれ掛かってくる。恐らく立つ力も無くなって来ているのだろう。

 椿姫が俺にもたれ掛かる程に、打撃で痛めた胸の痛みが増していく。痛みにくずおれそうになるが、椿姫が頑張っているのに倒れる訳にはいかない。

 

「そろそろ限界の様だな」

「そう、だね……でも、もう十分、だよっ」


 椿姫がそう告げてもう一度障壁を張り、完全に俺に身体を預けた瞬間──

 

「フランツッゥゥゥ!!」

 

 待ち望んだ声の持ち主が、フランツの背後から斬りかかる姿が見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ