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異世界転移で兄妹チート  作者: ロムにぃ
第一部 第一章 異世界に兄妹転移
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第四話 取調

「あれは……城、か?」

「うん、西洋っぽい城が壁の向こうに見えるね、恐らくあの壁の内側には街があるんじゃないかな」

「他には何も見当たらないな……」

「とりあえず、あそこに行ってみよう? この辺りの地名とか聞ければ、地球に存在する場所かどうかも判断できるしね」

「そうだな現状それしか手がないか……分かった、それじゃ行ってみようか」

「うん!」


 元気に返事をして手を差し出して来る椿姫の手を取り、俺達は手がかりを求めて街があるであろう場所に向けて歩き出した。

そうして1時間程歩き、城壁前の建物が建ち並ぶ場所に辿り着いた。

 その間にふと思い出し携帯のGPSが使えないかとポケットを確認したが、携帯どころか身に付けた服以外何も持っていない事が発覚した。まあ、地球じゃないなら携帯どころかお金も使えないが……。

 そして城壁に辿り着いた俺達が見たものは、今にも崩れそうな粗末な造りの木製の柵や、その内側にある所々が壊れている家だ。

 辺りには何をするでもなく座り込んで俯いている、薄汚れた粗末な格好をした人達が居た。どう見てもまともな暮らしをしているとは思えない。

 

「お兄ちゃん、ここ……」

「ああ……所謂、スラム街と言うやつか……?」

「ここは通らない方が良さそうだね……」

「そうだな……迂回して行くか」

 

 ここを通るのは危険だと判断し、右回りで別の入り口を探すことにする。

 暫くするとスラム街が途切れ、城壁のみの景色に変わる。

 そこで一度休憩を取り、それから1時間弱くらい歩いてようやく門らしき場所に辿り着く。

 門の幅は車ならすれ違えそうなくらい広く、高さは俺の二人分くらいの高さがある。

 門を出入りしている人は一人も居らず、門の端に鎧を着けた男が一人立っているだけだった。恐らくこの男は門番なのだろう。

 門の先には石作りの建物が建ち並んでいる。だが人通りは余り無く閑散としていた。

 外向きに大きく開いている門扉(もんぴ)を見ながら、門を閉める時大変そうだなぁと、俺はどうでもいい事を考えながら、門に向かって歩いていく。

 

「そこの二人、そこで止まれ」

 

 門の真下に差し掛かろうとした時、俺達を呼び止める声が左手側より聞こえる。

 俺達は声がした方へ視線を向けると、その視線の先に居たのは、先程門の端に立っていた門番と思われる男だった。

 

 俺達を呼び止めた男は、どう見ても日本人には見えない。だが聞こえてきた制止の声は間違いなく日本語だった。その西欧風な顔立ちの門番は気の乗らなそうな表情をしている。同じ日本人では無いので、少し判断しづらいが年齢は恐らく30才位だろう。

   

「……俺達が何か?」

 

 相手が偽物とは思えない武器を持っている事や、日本語で話しかけられた事に内心動揺しながらも、なんとか冷静を装い返事をする。

 俺達を怪しんで話し掛けてくる門番に何か違和感を感じるが、その違和感が何なのかは掴めなかった。


「お前達何者だ? 見た事が無い顔立ちや服だが……遠くの国からやって来たとしても旅をするような出で立ちでもないな」

 

 確かに目の前に立っている門番の顔が一般的な顔立ちなら、日本人然とした俺達の顔は珍しく映るに違いない。

 服装に関しても椿姫は白のワンピースを着ているし、俺は学校指定の制服である。どう見ても旅装には見えないだろう。

 

「街がこんな状態で取り調べても意味は無いが、他国の間者の可能性があるからな……ちょっと詰所まで来て貰おうか」


 口ではそう言っているが、面倒臭いと思っているのだろう。表情から簡単に心情が読み取れる。それならば、そのまま通してくれても良いものだが、そういう訳にも行かないようだ。

 

(椿姫、これは大人しく従った方が良いか?)

(そうだね、お兄ちゃん、ちょっと様子を見よう? この人の感じからして直ぐ済みそうだしね)

(分かった)

 

 俺達は小声で話し合った結果、椿姫の判断が最良だと結論付け、大人しく門番の後に付いていく事にした。

 門の内側に詰所の入り口が有り、その中が詰所らしい。

 その時に、詰所の周りを見回したがやはり人通りが少ない。家の作りもスラム街の物よりはましだが、所々崩れており住みやすそうとは思えなかった。

 そんな事を考えている内に詰所に辿り着く。門番が詰所の木製の扉を開けた先には、門番と似た姿をした男達が五人程居り、全員が真面目に仕事をしているとは思えない程、寛いだ姿勢をしていた。

 その中の一人だけ鉄製と思われる鎧を着けた男が、門番に声を掛けて来た。

 

「ん? そいつらはどうしたんだ?」

「はい、隊長。見た事の無い顔立ちや奇妙な出で立ちをしていましたので、これから取り調べを行う所です」

「ふうむ、確かに見た事が無い顔立ちをしているし、服装も奇妙だな……。分かった、今は2番の部屋が空いているからそこを使え。門には別の者を配置しておく」

「はい、了解しました」

「次はお前が門の番だったな。代わりはお前がしろ」

「了解しました」

 

 指示された兵士の男は声とは裏腹に、気だるそうな様子で詰所を出て行く。

 門番といい、この兵士といい、やる気というものが感じられない。門番が言っていた、街がこんな状態と言うのが関係があるのだろうか? 単純にこの兵士達のやる気が無いだけかも知れないが。

 俺達は門番に連れられ、詰所の奥にある通路の手前から2番目の部屋の中へと入る。

 6畳くらいの四角い部屋の中心に、木製のテーブルと対する様に椅子が2脚ずつ置かれており、他には窓一つ無い殺風景な部屋だ。

 俺達は奥の椅子に座らせられ、門番は扉側の椅子に座る。

 

「さて、まずはこれを持て」

 

 門番はA4サイズくらいの銀色をした板を差し出してくる。

俺は一瞥して、特に危険は無さそうだと判断し、その板を受け取る。

 

(ダメ! お兄ちゃん!)


 小声で椿姫が言ってくるが、その時にはもう遅く、俺はその板を受け取ってしまった後だった。そして俺が受け取った瞬間、板が淡く光りだす。


「な、何だ?」

 

 俺が光った事に吃驚(びっくり)し、机の上に落としてしまった。

 机の上に落ちた板を、訝しげな顔をしながら門番が拾い眺め出す。

 

「名前はカズト・ツカハラか、この国にはない珍しい名前だな。しかも家名があるのか」

「えっ……」


 名乗っても居ないのに名前を当てられた事に、俺は思わず声を上げてしまう。

 隣に居る椿姫に視線を向けると、その顔は少し硬くなっている。


「どうかしたか? 【能力板(タレントサニス)】はどこの国にもあるし、珍しい物でも無いはずだが?」

「あ、いや……」


 門番の言葉に動揺していた俺は上手く言葉が出せないでいた。


「おかしな奴だな……ん? これは……」

 

 板を眺めていた門番が何かに気付き、怪訝な顔になる。

 そして、それは思案顔に変わり、俺達の顔をもう一度確認するかの様に視線を向ける。

 

「ちょっと待ってろ」

 

 そう言って門番は席を立ち部屋から出て行く。

 門番が部屋から出た途端に椿姫が声を掛けて来る。

  

「……お兄ちゃん、不味いかもしれない」

「え? なにがだ?」

「さっきの【能力板】って言ってた板だけど、あれに触ると触れた人の名前とかが表示されるんだと思う。あの板を持てって言われた時に、もしかしたらとは思ったけど……」

「何だそれは……? そんな物がこの世界には有るのか……だがそれの何が不味いんだ?」


 椿姫の表情は強張っており、現状が不味い事を告げているが、俺にはその理由が分からなかった。


「あの板は恐らく名前だけじゃなく、それ以外の情報も表示されるんだと思う」

「それ以外の情報?」

「まず、私達の世界には無い、あの【能力板】の存在。それに門番さんの口の動きと発音が合ってなかったから、本来は日本語じゃ無い言葉で喋ってるんだと思う。何故私達と言葉が通じるのかは推測だけで正確には分からないけど……」

 

 そこで椿姫は一度言葉を切り、俺の顔を伺う。

 【能力板】という地球には存在しない物。それはここが椿姫が推測した通り、地球では無い事を示していた。そして門番との会話をした時の違和感の正体もはっきりした。

 それを理解した俺は小さく頷いて椿姫に先を促す。

 

「ここが地球じゃ無いのはもう間違いないと思う。それを前提とすると、【能力板】を見た門番さんの態度からして、恐らく【能力板】にはお兄ちゃんがこの世界の人間じゃ無い事、若しくはそれに準ずる事が表示されているんだと思う」

「ん? それって何か不味い事が有るのか? それを知られても問題が有るとは思えないが……」

 

 その俺の言葉に椿姫は静かに首を横に振る。

 

「少し見ただけだからまだ確定では無いけど、この街の文明は明らかに日本に比べて低い。もし地球人と言う存在を知っている為政者なら、私達を利用するかもしれないって事」

「まさか……!?」

 

 椿姫のその言葉に俺はハッとする。

 そうなるとこの流れは非常に不味いのかもしれない。

 椿姫は硬い顔のまま小さく頷く。

 

「それが生活水準向上等の平和利用とかだったらまだ良いけど、良くない事……人に害を及ぼす事……所謂(いわゆる)、軍事目的で私達の事を利用するかも知れない」

「──っ!」

 

 椿姫の推測通りであれば、先程の門番の反応にも納得出来るが……。

 だが、ここの為政者が俺達をどう扱うかは現時点では判断が付かない。

 出来れば、この場から離れた方が良いのだろうが、状況的に難しいだろう。

 そこまで考えたところで扉が開き、先程の門番に加えて隊長と呼ばれた男、更に他数人が部屋に入って来る。


「城まで付いてきて貰うぞ、国王陛下に会って貰う」

 

 西洋風の剣を此方に向け、隊長と呼ばれていた人物が俺達に拒否権は無いと言わんばかりの態度で告げてきた。

 その隊長の態度で、良くない事態になっているのを理解した俺は顔をしかめる。

 俺達の前に大剣を持つ隊長を中心に、左右に片手剣を持つ兵士が各二人づつの計五人が部屋の中に展開していた。

 だがこちらは丸腰の状態、更には椿姫を守りながらになる。

 この状況では脱出するのは無理だろう。

 従いたくは無いが、ここは大人しく従うしかなさそうだ。

 

「分かった……抵抗はしないから武器は下げてくれ」

 

 俺は両手を上げ、抵抗の意識が無い事を告げる。

 椿姫は俺の服をギュッと掴んでおり、その手は若干震えている。


「それが賢明だ……よし、これからあいつらを馬車に乗せて王城へ連れて行くぞ」

「「「「ハッ!」」」」

 

 そうして、俺達は投降し兵士達に拘束された。

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