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異世界転移で兄妹チート  作者: ロムにぃ
第一部 第三章 異世界で人質解放
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第一話 王女

第三章開始です!


 ──???視点──

 

 ここに連れられて思った事は、コロナ様が無事に逃げられたかどうかだった。

 今、ボクが居るのは暗くてせまい牢の中。捕まった時に受けた傷がすごく痛む。

 ボクが殺されなかったのは、コロナ様への人質として使うかららしい。

 コロナ様の足を引っ張っている事が非常に悔しい。

 だけど、ボクの能力を使ってもここからは出れそうにない。

 コロナ様の顔が頭の中に浮かぶ。ボクとコロナ様の出会いが。

 その時の事は今でも鮮明に思い出せる。ボクの人生を変えた二つ目(・・・)の出来事だから。

 あの出来事がなければ、ボクはきっと今頃──

 そこまで考えてボクは首を振って、それ以前の記憶を思い出すのをやめる。

 もう、この状況ではボクが生き残る道はない。なら、せめてそれまでは楽しい記憶を思いだし、辛い事は忘れよう。

 ボクは思い出す。あの日あの時までは幸せだった記憶を──

 

 ──……もう一度、───に会いたいよ……──

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

 ──コロナ視点──

 

 わたくしはトゥレラ王国の王子の娘として生を受けました。

 ですが、当時王子だったお父様はお兄様ばかり構い、お兄様にも遊んで貰えず、お母様はわたくしを生んで直ぐに亡くなっています。その代わりにわたくしを不憫に思った叔父様に沢山可愛がって頂きました。

 叔父様とその妹である叔母様の間に子供が生まれなかったのも、可愛がって頂いた原因かも知れません。

 そのお陰でしょうか、たまにお会いするお父様とお兄様が、余りに周囲の人達に冷たく、自分自身の事しか考えていない事に気が付いたのは……。

 叔父様が居なければ、わたくしもお父様やお兄様の様になっていたかも知れません。

 それに比べ叔父様は素晴らしい程の人格者でした。同じ血筋の人間でここまで違いが出るものなのかと、幼いながらもわたくしは衝撃を受けました。

 そんな性格が正反対のお二人の内、次期国王は叔父様だと誰もが申しておりました。

 わたくしもその方が良いと思っております。

 ですが、それは意外な形で裏切られる事となりました。

 当時の国王陛下──お祖父様が亡くなられる際の遺言で、お父様が国王に選ばれたのです。わたくしはその事に、何かしらの工作が行われたと今でも思っています。

 生前、お祖父様はわたくしと二人きりの時に、お父様ではなく叔父様を国王にしても良いか相談を頂きました。きっと娘のわたくしを気遣ってくれたのでしょう。

 その時のわたくしは迷わず、叔父様を国王にと推しました。国民の事を考えるならば迷う必要はありませんと、お祖父様に即答致しました。

 お祖父様はそれに申し訳なさそうに、分かったそうしようと告げ、以降その話は一切されませんでした。そんなお祖父様が死の間際とはいえ、意思を変えるとはとても考えられません。

 わたくしや叔父様と親しい方々に色々と探って頂きましたが、遺言の改竄も行われておらず、何も証拠を掴むことも出来ないまま、お父様が王位を継ぐことになりました。

 そして、それからは国民にとっては地獄の日々となってしまいました。

 お父様は世界の王になる夢を抱き、軍備増強の為に重税を課し始めました。国民は日々の生活を送るのさえ厳しい最底辺へと落とされました。そんなお父様の政策に反対する者は、遠方の領地に送られたり、無実の罪で貴族の地位を追われたり処刑されたりされ、叔父様の派閥は次々と減らされていきました。そして、わたくしも叔父様の派閥として命を狙われました。そのわたくしを殺害しに現れた暗殺者は、なんと幼い獣人の女の子達だったのです。

 わたくしは暗殺者の女の子達をどうにか説得し、最後には女の子達はわたくしの味方になってくれると言ってくれました。わたくしはその女の子達──メイナを含む五人を専用の侍女として側に置き、身の回りの世話と護衛をお願いしました。

 メイナ達とは時には友達として、時には家族の様に仲良くなったとわたくしは思っています。メイナ達も楽しそうにしていたので、わたくしの一方的な想いで無いとは思います。ですが……それも終わりを迎えました。

 メイナ達の内の一人が殺されてしまったのです。メイナ達が殺されると震えるのをわたくしは抱き締め、この子達を守って見せると誓いました。

 それからも、暗殺者は次々に送られて来ました。その度にメイナ達が撃退してくれましたが、暗殺者を殺してしまった時はメイナ達はかなり震えていました。

 そんなメイナ達をわたくしは抱き締める事しか出来ません。

 そんな日々を送る中、お父様が遂に叔父様に手を掛けると立ち聞きしてしまったのです。

 わたくしを育ててくれたのは、叔父様だと迷い無く断言出来ます。そんな叔父様が狙われいる──わたくしはいてもたってもいられませんでした。ですが、とても一人で行けるとは思えません。間違いなく殺されてしまうでしょう。

 ですが、メイナ以外がわたくしを止めようとした中、メイナが一緒に叔父様の所に行くと言ってくれたのです。

 わたくしの護衛以上に危険かも知れないと言いました。ですがメイナは──

 

「大切な人にもう会えなくなるのは、死んでしまうより辛いよ」

 

 ──と言って寂しそうな表情をしていました。

 その表情は大切な人との別れを経験した事があると、言われずとも伝わって来ました。わたくしはその言葉に後押しされ、叔父様にこの事を告げに行くと決めました。

 他の子達もわたくしとメイナの気が変わらない事を知ると、付いていくと言ってくれました。

 それからの道程は大変だったと、一言で表せるものではありませんでした。

 わたくしが居る王都から叔父様の領地まではかなりの距離があります。

 その間、お父様からの追っ手が来る可能性はかなり高い。わたくし達は目立たない格好へと着替え、道中もなるべく人に接触しないよう先を急ぎました。

 ですが、それでもお父様の追っ手から逃れる事は出来ませんでした。

 ほぼ毎日の様に現れる追っ手。わたくしは身を守る程度の剣術なら、叔父様に習ってはいましたが、暗殺者相手では殆ど意味を成しませんでした。

 護衛が獣人で元暗殺者のメイナ達でなければ、既にわたくしは捕まるか殺されていたでしょう。わたくしより年下のメイナ達に守られている事に、自身の無力さが浮き彫りになり、情けない気持ちになりました。叔父様から護身の術だけでなく、敵を倒す術も学んで置くべきだったと後悔しました。

 ですが、今はそれを言っても仕方ありません。今は叔父様の元に辿り着く事が最優先です。叔父様と会えたなら、その時に教えて貰えば良いと、わたくしは思っていました、それがもう叶わない事になるとは知らずに……。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 わたくしを守ってくれていた子達は、一人一人と暗殺者に討たれ、遂にメイナ一人になってしまいました。親しくしていた子達が殺される事に、わたくしは挫けてしまいそうでした。

 それでもどうにか叔父様の領地へと着いたわたくしは、どうにか秘密裏に叔父様と会えないか探っていました。と言っても実際に探っているのはメイナですが……。

 領地に着いて数日、漸く叔父様と接触出来る機会が訪れました。

 領主である叔父様は基本的に一人になる事は無く、隙はないかと思ったけど、それは嬉しい形で裏切られた。

 叔父様は数日に一度、兄妹神様の教会に足を運んでいるという情報を得ました。そして建物の中に入る際は護衛を外に置き、一人で教会へと入っていると。

 わたくし達はその日を狙い、予め教会へと中に忍び込み叔父様を待ちます。勿論、叔父様の護衛により中の安全確認は行われましたけど、メイナと共に隠れていた場所は気付かれる事はありませんでした。

 そして、教会内に居るのは叔父様と、隠れているわたくし達だけになりました。

 年の頃は四十代半ば、わたくしと同じ金色の髪を短く切り揃えており、整った顔立ちで切れ長の目をしている。そして立派な顎髭を蓄えたその姿は前に会った時と変わっていませんでした。

 すると早速叔父様は兄妹神様の像に向かい、お祈りを始めました。

 それを見て、わたくし達は姿を現し、叔父様へと声を掛ける。

 

「叔父様……」

「っ! 誰だ!?」

「コロナです。突然の不躾な訪問、申し訳ありません」

「コロナ?! どうしてここに? それにそこの獣人の娘は……?」

「実は──」

  

 わたくしは自分がお父様から命を狙われた事。メイナが暗殺者の一人であった事。

 そして、遂に叔父様に手を掛けようとしている事を伝えました。

 叔父様は自分が狙われている事よりも、わたくしが狙われた方に驚いているようでした。そして、叔父様はお父様に対して怒りの感情を顕にしていました。

 少しして気持ちを落ち着けた叔父様と今後の事を話す。

 その中で他国に亡命する案も出たが、叔父様の治める街はエマナスタ帝国と国境を接する位置にありますが、エマナスタ帝国とは同盟国。なので亡命しても突き返される可能性は高いです。ですが、この国と敵対関係になるアギオセリス王国やアンスロポス王国へは、王都の側を通る必要があり、かなり危険になります。ですので現状この街で身を守るしか方法がありませんでした。

 しかし、それもこれから起きる出来事により、変更を余儀なくされました。

 物陰から唐突に現れた複数人の者達は、逃げ道を塞ぐようにわたくし達を取り囲んで来ました。

 いきなりの出来事に戸惑うわたくしとは対称的に、メイナと叔父様は持っていた武器を手に取り、既に戦闘体制を取っています。

 それを見てわたくしも、慌てて昔叔父様から頂いた細剣を抜き放ちました。

 

「貴様らは兄上の手の者か?」

「……」

 

 わたくし達を取り囲む者達──暗殺者達に叔父様は静かに問い掛けましたが、答えはありませんでした。

 初めて会ったメイナと同じ様に黒い外套を着た者達は、両手に持った短剣を静かにわたくし達に向けてきました。

 どうやら会話をするつもりは無さそうです。

 

「メイナ……私が退路を作る。その隙に二人で逃げろ」

「で、ですがそれでは叔父様が!?」

 

 小声でそう告げる叔父様に、わたくしは思わず声を荒げて反論してしまいました。

 それを切っ掛けに暗殺者達は一斉にわたくし達に襲い掛かって来ました。

 その内の一人がわたくしに襲い掛かって来る。メイナや叔父様には複数人で向かっているのに対してわたくしには一人だけ……実力的に一人で充分と判断されたのでしょう。実際、わたくしは一人が相手でも完全に劣勢に立たされていました。

 反撃する糸口さえ掴めない、どうにか攻撃を凌ぐだけで精一杯でした。

 ですが、何故か急に相手が焦り始めたのに気が付き、その原因を探ろうとわたくしは目の前の相手から視線を外してしまいました。

 焦ってはいても、わたくしの隙を見逃す程相手は甘くなく、わたくしに向かって短剣を突きだして来ました。それに気付いた時にはもう遅く、その短剣を防げる状況にはなく、死を覚悟しました。

 刺される──そう思った瞬間、横手から投げられたとおぼしき剣が暗殺者の胸を貫き、わたくしに短剣が届く事はありませんでした。

 その剣が飛んできた方を見ると、複数の暗殺者が倒れ伏す姿と、剣を投げたと思われる体勢で、背後から短剣に突かれた叔父様の姿が目に入りました。

 その刺されている箇所は確か──血を送り出す器官──心臓がある位置だと、そしてそこが傷付けば人は生きられないと、そう習いました。

 

「お、じさま……?」

「に……げろ……ぐっ!?」

「領主様?!」

 

 叔父様はわたくしに逃げる様告げたのを最後に倒れ伏し、二度と動かなくなりました。

 

 ──死──

 

 その言葉がわたくしの頭に浮かび、そしてそれがわたくしの行動の結果訪れた事に激しく動揺してしまいました。

 

「あ、ああ……うそ……わたくしの、せいで……叔父様が……あああああっ!?」

「コロナ様! くっ……コロナ様はやらせない!」

 

 直ぐ近くでメイナの声が聞こえるが、わたくしにそれを気にする余裕はありませんでした。わたくしが余所見をしてしまったせいで、叔父様がわたくしを助ける為に隙を見せ刺されて殺されてしまった。

 剣を放り出し、わたくしは今の状況も忘れて叔父様にすがり付く。

 叔父様の遺体に泣いてすがり付くわたくしが、既に戦闘が終わった事に気が付いたのはしばらく経ってからでした……。

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