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異世界転移で兄妹チート  作者: ロムにぃ
第一部 間章二
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思慕


 反抗勢力が副都を占領した。この情報に彼は一考する。

 反抗勢力が動き出した今ならば、反抗勢力に近づく絶好の機会だと。

 早速彼は仲間達と行動を起こし、隣国を目指し越境を試みる。

 彼の考えていた通り、国境の警備は薄れ容易に越境が出来た。

 途中、街や村で情報を集めていると、王国軍が鎮圧部隊の編成を行っているらしいとの情報が入った。となれば、開戦まではまだ時間的な余裕はあると彼は考えた。

 彼とその仲間達は情報収集を打ちきり、急ぎ副都へ向かう事を決めたのだった。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 越境して約一週間後、彼らは副都へと辿り着いた。

 副都に入る門では厳重な身元確認が行われている。もし、王国軍の者が見付かれば即座に拘束されるだろう。だが、冒険者であれば別だ。

 彼らは隣国で組合登録した冒険者だが、基本冒険者は出身地により制限されない。

 冒険者は国には仕えていない、あくまで冒険者組合の一員だからだ。

 それがたとえ、他国の冒険者だとしても関係が無いのだ。

 何故かというと、兵士になれば冒険者にはなれない。そして、各身分証の存在もあり、なりすましもほぼ不可能だ。戦争や内乱時は、国に所属する者は冒険者に転向する事を禁じられているのも関係がある。これは冒険者組合の裏規約に定められている。

 そんな訳で隣国の冒険者である彼らも、問題なく街に入る事が出来る。

 だが、ここで別の問題が発生した。それは彼らが有名過ぎたのだ。

 本人達は住んでいた街だけで有名だと思っていたが、思った以上に彼らの名前は知れ渡っていたのだ。副都に着くなり彼らは、反抗勢力の代表に会ってくれるようお願いされてしまった。

 そうして連れられた先は医療院だった。怪我や病気の人間を治療する為の施設になる。何故こんな所に、と不思議がった彼らだが、その謎はとある部屋にて氷解した。

 入った部屋には、片手片足が途中から無くなり、身体中に包帯に巻かれた男がいたのだ。この男の正体はこの反抗勢力──反乱軍を率いる代表だ。

 代表の男──この国の第一王子でもある──は副都を占領した際に潜んでいた数名の王国側の兵士に奇襲にあい、重傷を負ってしまった。

 今はどうにか妹である王女が代役をこなしているが、王女には軍隊の指揮などしたことがない。その為、王国軍との戦いが近い今、どうすべきか議論が滞っている状態らしい。そして、是非反乱軍に入って欲しいと請われた。

 彼の返事は決まっている。早速返事をしようとしたところで、一人の人物が部屋に入って来た。

 その人物を見た瞬間、彼は考えていた事が全部吹き飛んでしまっていた。

 部屋に入ってきたのは髪の色こそ違うが、彼の殺された妻にそっくりな顔をした女の子だった。彼は呆けた顔でその女の子の顔をじっと見詰めてしまった。

 その視線を感じたのか、女の子は恥ずかしそうにしながら、自己紹介を始めた。

 

「お初にお目に掛かります。私はこの国の王女の──と申します。貴方様のお噂はお聞きしております」

 

 彼は内心動揺しながらも自己紹介を行い、これからの事を話していく。その話の中で王女の補佐役をして欲しいと彼は頼まれる。

 何故、会ったばかりである自分に頼むのか不思議に思った彼だったが、それは現在反乱軍にはまともに指揮を行える人物がいない状態だったからだ。

 そこに現れた高い実力を持った冒険者が参加を申し出てくれた。王子が五体満足な状態なら、そんな事は言い出さなかっただろうが、この反乱を成功させるには彼を頼るしかなかったのだ。実際、彼は隣国で大勢の冒険者を率い、瘴魔の大量発生を防いだ功績もあるので申し分はないだろう。

 彼としては反乱軍の中枢にて彼の国を討てるのなら望む所と、その話を是非にと受けたのだった。そして彼は王女の補佐役に、彼の仲間達は各部隊長に任命された。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 王国軍に対抗するために、彼は持ちうる知識を惜しみ無く使った。

 例えば、国王軍は首都近辺が馬の産地な事もあり、騎馬が主力なのに対して、反乱軍は殆どが歩兵だ。その代わり魔銃の産地であるこの副都には、それが多量に置かれていた。現在それを使った戦術はこの国には浸透しておらず、牽制に使うのみに留まっている。なので、それほど重要視されていなかった為、ここに置かれたままだったのだ。

 王国軍が準備を整え、こちらに攻め入るまであまり時間はない。

 騎馬をこれから揃えるのは不可能、となれば今ある物を使うしかない。その為に彼はそれを最大限に活用出来る戦術を、徹底的に兵士に叩き込む事にした。

 それに加えて、この辺りで唯一大軍が展開出来る場所に、騎馬の運用を妨げる様々な仕掛けに塹壕や柵等を設置していく。籠城戦になった場合を考え、副都の城にも手を加えて万が一にも備える。更には近隣の街や村にも志願兵を募るなど、可能な限りの手を彼は尽くしていった。

 そんな中、彼は役目上接する事が多い王女が、顔だけでなく性格も妻に似ており、そんな王女に会う度に惹かれていくのが彼自身分かっていた。だが、似ているだけで妻本人ではない。

 亡くなった妻に申し訳ない気持ちがあり、王女への想いを彼自身受け入れる事が出来ないでいた。

 そして、王女も彼の優しさや誠実さに惹かれていた。だが、彼の復讐の動機を彼の仲間に聞いていた為に、彼の心に深く踏み込むのを躊躇っていた。

 そんな、親しくはあるが恋人ではない微妙な距離のまま、王国軍との決戦が迫る。

 偵察から戻って来た兵士からの報告で、王国軍が王都から出発したとの連絡があったのだ。その数およそ8,000人、対して、反乱軍は約4,000人程だ。

 王国軍は騎馬兵至上主義の国王らしく、その半数が騎馬兵となっている。そして、反乱軍は騎馬兵は少ないものの、魔銃は2,000もの数を揃えていた。

 副都は魔銃の生産地であった為、それほどの数が保管されていたのだ。

 その上で準備は行っていたが、約倍の兵数に王女の心には不安がよぎる。

 

「勝てる……でしょうか?」

「勝って見せます……いえ、絶対勝って見せるっ……!」

 

 勝てるか分からない状況と、彼の復讐に心を費やす様子に、王女は思い残す事の無いよう、彼への想いを遂に告げる決意をする。


「……私は貴方様をお慕いしております。貴方様が亡くなった奥様の事を忘れられないのは分かっています。その上で私と添い遂げて欲しい。二番目でも良い、私を愛して欲しいです」

「王女殿下……俺は一生死んでしまった妻の事を忘れる事は出来ないでしょう。そんな俺には貴女を幸せには出来ないかも知れません。それでもこんな男で良いのですか?」

「それでも、です。貴方様の側に居られれば私は幸せです。ですから私と結婚して下さい……貴方様の側に居させて下さい」

「……俺も貴女に惹かれていました。ですが、始めは妻に似ているだけで好きになっているのだと思っていました。でも一緒にいて最近は妻とは違う点が幾つも見つけられました。それで今は漸く貴女の事が妻とは関係無く好きだと気付きました。……こんな俺で良ければ、貴女と結婚させて下さい」

 

 そうして、彼らは一瞬だけだが、互いの唇を合わせる。

 決戦前に漸く一歩踏み出せた彼らは想いを通じ合わせた。

 彼の心には復讐心だけでなく、新たに守る者の為に戦う気持ちが芽生えていた。


 そして翌日、遂に王国軍との決戦の時が訪れる。

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