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異世界転移で兄妹チート  作者: ロムにぃ
第一部 第二章 異世界で冒険者活動
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第二十話 召喚


 ──矢美視点──


「「え?」」

 

 道場の中央を向いたと同時に、わたし達は半透明の何かに視線を遮られた。

 咄嗟に周りを見渡すと、白くて薄いその何かはわたしを囲んでいる様に見える。

 そして徐々にその透明度が失われていた。

 いきなりの事で何が何やら分からない。隣にいるお兄ちゃんも呆然としているのが目に入った。自分だけがこの状態に陥っている訳ではない事に少し気持ちが落ち着くが、事態は何も変わっていない。

 

「お兄ちゃん、これって……?」

「なんだろうね……何かは分からないけど、何となく悪い物では無い気はするよ」

 

 お兄ちゃんはそう言って、半透明の何かに手を近づける。

 だが、その手は何か壁を触ったかのように止まってしまっていた。

 

「これは……どうやら出れないみたいだね……」

「そんな……」

 

 お兄ちゃんが告げた事実に不安が大きくなり、おにーさんの剣道具をぎゅっと抱き締める。

 

 ──おにーさんっ……助けてっ!──

 

 そして、もういない筈のおにーさんに助けを求めてしまった。それと同時に自分が未だに、おにーさんにどうしようもなく依存している事に気付いてしまった。

 そんな自分が情けなかった。頑張ると決めた筈なのにどうして自分はこうも駄目なのか。こんな事ではおにーさんに会わせる顔がない。

 そしてわたしは意を決し、徐々に透明度の無くなっていくそれに手を翳す。

 そして、それに触れた瞬間──わたしはそれに気付いた。

 

「……おにーさん……」

「矢美?」

「お兄ちゃん、何となく何だけど……おにーさんを感じる……」

「どういう事? どうしてここで一刀が……」

 

 わたしもはっきりと感じる訳じゃない。ただ、このままこの何かに身を委ねれば、おにーさんの近くに行けそうな気がした。

 

「よく分からないけど、このままでいればおにーさんと会えそうな気がする」

「……それは……僕達が死んでしまうって事……じゃないよね?」

「うん、何でかな? おにーさんが生きてるって分かるの。直ぐには会えないかも知れないけど、このままでいればおにーさんが居る場所に行ける気がするの」

「……そっか、それじゃあ二人で一刀に会いに行こう。まあどちらにしても、ここからは出られそうに無いからね」

「もし出られたとしても出ないよ、おにーさんに会えるなら。……おにーさん、今から会いに行きますね。そして、会えたその時にわたしはおにーさんに──」

 

 その瞬間、視界は完全に真っ白に染まり、わたしの意識はそこで途切れた。

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 目が覚めると、一番初めに目に入ったのは視界一杯に広がる青空だ。

 何故、外に居るのか不思議に思ったけど、意識を失う前の出来事を思い出し、わたしの身に何が起こったのかを確認する為に身を起こす。

 まず目に入ったのは、沢山の女の子の姿だ。だけど、その殆どが倒れ伏しており動く気配が無い。僅かに目を覚ましている女の子もいるが、目に光が無く別の意味で動く気配が無い。そのわたし達がいる床面には様々な図形や模様が描かれている。

 沢山の図形や模様が途切れた先には、大きな光る石が嵌め込まれた柱が建っていた。

 他の方向も首を回し確認してみるたけど、殆どが同じ光景だ。

 唯一違ったのが、柱より更に先に、巫女服のような衣装を身に付けている複数人の女性が居る点だった。

 その女性達は一様に疲れている様だったけど、戸惑いの表情も窺える。

 一体ここは何処なのか分からなかったが、一つだけはっきりとしている点があった。

 

「……おにーさんの気配がする。どのくらい離れた所に居るかは分からないけど、間違いなくどこかに居るのが分かる……」

 

 その事に歓喜の感情が溢れだし、気が付けばわたしは笑みを浮かべていた。

 

「ここは……?」

 

 声のした方を見ると、お兄ちゃんが目を覚まし身体を起こしているところだった。

 おにーさんにまた会えるかも知れない喜びに、お兄ちゃんも居たのを忘れてしまっていた。それと同時に現状の把握をする必要がある事も頭に浮かぶ。

 

「あれ……?」

 

 現状の把握の為、再び周り見回していると、ある事に気が付いた。

 周りにいる女の子達は見覚えがある子ばかりだった。幼稚園児から高校生と思われる人達まで様々な年齢の子達がいるけど間違いない。その内の一人、膝を抱えて座っている幼稚園児は会員番号二番で副会長の双葉ちゃんで間違いない。そしてその隣に呆然としているのはおにーさんと同じ学校に通っている、会員番号八番の八重さんだ。他にも何人か見てみるが知らない人は一人としていなかった。

 お兄ちゃんを除いた、恐らく全員に関する共通点──それはおにーさんに助けられた子達で結成されたファンクラブの会員という事。わたしはその会長なので全員の顔を知っている。だからその事に気が付いた。

 この偶然とは思えない状況に戸惑ってしまう。

 だけど、そこで私達兄妹とファンクラブの子達以外の存在が居た事を思い出す。

 視界の端に、その人達がこちらに向かって来ているところが見えたからだ。

 そこで気が付いたが、その人達はどうみても日本人には見えなかった。詳しくは分からないが少なくともアジア系の顔立ちではないのは確かだ。

 そんな事を考えている間にも、その人達はこちら──いや、正確にはお兄ちゃんの方に近寄って来ていた。

 全員が神社の巫女服のような格好で、装飾品等は全くと言って良い程無い。飾り気があるのは精々その手にある杖だけだ。


「まず初めに謝罪を、強制的にお呼びだししてしまい申し訳ありません。私は兄妹神教国にて巫女長を務めます、パナキア・シャイン・シスターと申します。パナキアとお呼び下さい」

 

 先頭にいたパナキアと名乗る女性は、深々と頭を下げて謝罪と自己紹介を始めた。お兄ちゃんはいきなりの謝罪と、聞いた事も無い国の名前に戸惑っている様だ。

 隣に居るわたしも何が何やら分からない。

 こちらが戸惑っている間にもパナキアさんの話は続いていく。

 

「これから、皆様をお呼びした経緯をお話し致したいところなのですが……その前に、お二人以外はなんと言えば良いのか……。お話ししても通じない気がしまして如何したものかと……」

 

 心底困った風に告げるパナキアさんは、困惑の表情を浮かべていた。パナキアさんはそんな仕草も様になる程の美人だ。映画に出てくる女優以上に綺麗な顔立ちとスタイルをしている。と、そんな事を考えている場合ではなかった。パナキアさんの言った事に対してどう答えるか少し迷った。お兄ちゃんもどう答えたら良いか迷っているようだった。だけど何となく、この女性になら私達の事情を言っても大丈夫な気がした。

 

「……彼女達はわたしも含めて大切な人を失ったんです。その人はわたし達を救ってくれました。もし、あの人がいなければわたしは……わたし達は存在しなかったかも知れない。それほどの恩を貰いました。あの人に恩を返したい、共に歩いて行きたいと、それぞれが得意とするものを磨き続けてきました。しかし突然あの人の命は、無惨にも犯罪者の手によって奪われました。それがつい数日前の事です……」

「そ、そんな傷付いた方々を私はお呼びしてしまったのですか……わ、私はなんて事を……」


 パナキアさんは顔を青くして身体を震わせていた。大切な人を失った私達を呼び出した事にかなりの罪悪感を抱いているみたいだ。

 そのお陰か、わたしの心は落ち着いてきた。なので、現状を冷静に見る事が出来た。

 

「そんなに気にしないで下さい。私はここに呼んで貰って感謝してますから」

「え、感謝?」

 

 今までの話と状況から、わたし達が住んでいた世界とは違う世界に来ているのだと理解できた。椿姫ちゃんにこういった内容の本を借りて読んでいた事もあって、すんなりと受け入れる事が出来た。……借りた本の殆どが兄と妹が結ばれる話だったけど。

 そしてさっきの感覚──わたしはこの世界におにーさんがいることを確信した。

 もしかしたら、生まれ変わって姿が変わっているかも知れない。何もかも忘れ、わたしの事を覚えていないかも知れない。それでもこの世界におにーさんが生きている。

 ただそれだけでわたしは希望を持つ事が出来た。だけど、世界中を一人で探すとなると不可能に近い。なのでわたしは──

 

「……皆聞いて下さい。簡潔に言うとおにーさんは──一刀さんは生きています」

 

 わたしの言葉に周りで沈み込んでいた皆が小さく反応を示す。その事にわたしの声が聞こえているのが分かったので、わたしは話を続ける。

 

「わたしには何故か分からないけど、この世界に来る直前からおにーさんの存在を感じる事が出来る様になりました……。そして、どこにいるかは分からないけど、おにーさんの存在がこの世界に来てはっきりと感じられる。だけど、わたし一人じゃ探す事は無理……なので皆にも手伝って欲しいです」

 

 わたしが話終わった時には、全員が顔を上げ、わたしの事を驚いた表情で見ていた。

 その表情には信じたいけど、信じられないといった感情が窺える。

 後一押しが足りない……だけど、わたしの言葉を証明する方法もない。

 どうしたらと考えていると、パナキアさんがわたしに声を掛けてきた。

 

「あの……貴女様の仰ってた事が本当なら、それはきっと技能と呼ばれる物だと思われます」

「技能……ですか?」

「はい、この世界では能力を文字で見る事が出来ます。その能力を見る方法ですが【能力板】と言われる魔導具を触れる事で、その方の能力を可視化出来るのです。その表示される項目に技能と呼ばれる物があり、それを見ればその方が行使可能な技能が表示されるのです。もし貴女様が言われた様な事が本当なら、必ず技能に表示される筈です」 

 

 それは現実味がなく、まるでゲームの様だとわたしは思ってしまった。

 だが、それが本当ならこれ以上無い証拠になる。

 

「その【能力板】というのは今ありますか?」

「はい、お呼びした方の能力の確認を行う為に既に準備しています。此方に触れれば貴女様の能力がこの板に表示されますので。因みに私が嵌めている手袋をする事で【能力板】が反応しない仕組みになっていますので、私の能力が表示されていた、なんて事はありませんので」

 

 そうして差し出された【能力板】と呼ばれる物を、わたしは受け取った。

 その瞬間、【能力板】が淡く光だした。それに驚き取り落としそうになるが、どうにか持ち直し落とす事を防ぐ。

 数秒後、光が収まり、【能力板】を見たわたしは声も出せなかった。

 【能力板】にはこう表示されていた──

 

名前等:佐々木 矢美 人間族 女 14才

称号:異世界人 異界の射手 弓道錬士 一刀敬愛会会長 勇者

技能:瘴気討滅 遠隔操作射撃 魔力矢射 属性魔法(光・風) 最愛者知覚

加護:武神の加護(弓)

 

 ──勇者、と。

 

 第二章 異世界で冒険者活動 完

第二章終了です!

この後、間章と二章からの登場人物紹介後に第三章に入ります。

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