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異世界転移で兄妹チート  作者: ロムにぃ
第一部 第二章 異世界で冒険者活動
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第二話 覚悟


 何か方法がないか、と俺は考えていたが、次の椿姫の発言に思考を止められる。

 

「お兄ちゃん、あの時見た女の子を助けたいんだよね?」

「え? 何で分かったんだ……?」

「分かるよ、あの時のお兄ちゃんの様子とさっきの質問……それにお兄ちゃんは気付いてないかも知れないけど、お兄ちゃんは何かに悩むと口に手を当ててるんだよ」

「なに?」

 

 そこで自分でも気づかないうちに、右手の指を唇に当てている事に気付く。

 それもただ当てているのでは無く、何か名残惜しむかのような触り方だった。

 自分にそんな癖がある事に、少し驚いたがとりあえず今は置いておく。

 椿姫の言う通りだ、俺は──

 

「……ああ、そうだ。あの子を助けたい」

「名前も知らない女の子を土地勘もなく、当てもなく街中を探し回る事になるよ?」

「ああ、それでも俺はあの子を助けたい……ヒルティに初めて会った時と同じ感じ──恐らく【傷心妹感知】という技能が反応したんだろうが、その時にあの子を助けなければと言う気持ちが湧いてきた。技能に気持ちが引きずれているのは否定出来ない。でも俺はそれを抜きにしてでもあの子を助けたい」

「【傷心妹感知】……確か……」

 

 俺が言った技能名を呟き椿姫は思案顔になる、何時もの思考に嵌まり込んだようだ。

 椿姫との会話が一時途切れると、俺はさっき自分が言った言葉に違和感を持った。

 俺が人を助けるのは、椿姫等の大切な人を守る為の練習と考えていた筈だ。それがこの世界に来てから──ヒルティという妹が増えた辺りから、人を助ける時の気持ちが変わって来ている気がする。俺は──

 と、そこで俺の思考は椿姫の声により遮られる。

 

「お兄ちゃん、一つ案があるんだけど……その案を言う前に一つだけ言っておくと、この案で見付かるとは限らないの……って、お兄ちゃん聞いてる?」

「ん? ああ、聞いてるぞ。案だったよな……すまん、俺には何も思い付かなかった……聞かせてくれ」

「わかったよ。まずはエドワードさんかレオン王子に、この街の治安維持の仕事を手伝える交渉する必要があるね」

「治安維持? どうしてだ?」

「まず、目的の女の子が街に居る場合だけど、治安の悪い場所に監禁されている可能性が高い。でも私達には治安が悪い場所がどこか分からないよね? 聞けば教えてもらえるかも知れないけど、私達の立場からしたら、そこに向かうのは止められると思うの。治安維持の仕事を受ければ、それを聞くのは不自然じゃないし、治安の悪い場所を見回るのは普通の事だよね。治安維持の仕事をする理由はこの街の現状を見ていられなかったとか、そんな感じの事を言えば良いとおもうよ」

「見回る事自体止められないか?」

「現状、この街の治安が悪すぎて治安維持の為の人員が足りてないの、猫の手も借りたい位にね。それでエドワードさんならお兄ちゃんの強さは理解してるよね? なら、許可は貰えるとおもうの。もしかしたら護衛の一人位は付けられるかも知れないけど」

「行ける……のか? だが、治安維持の仕事を貰えたとしてその後は?」


 正直、強引な気がしないでも無いが、エドワードなら許可を出しそうな気もしたので話を進める事にする。

 問題はその先だ、もし監禁されているなら、見回りをしても見つけられる可能性は無い。

 

「ここでお兄ちゃんが持ってる技能【傷心妹感知】の出番だよ。この技能の特徴は一度感知していれば、次からは範囲内に入れば感知する点……後は分かるよね?」

「……ああ、そういう事か。だが、それも結構大変だよな……」

 

 椿姫の言った事を纏めると、少女は治安の悪い場所に監禁されている可能性が高い、治安の悪い場所に見回りと言う形で赴き、後は技能が反応した辺りを調べる、と言う事になる。

 手掛かりが何も無い状態よりはマシだが、大変な事には変わりは無い。

 一回感知した相手以外には反応しないので、視認しなければ目的の少女以外の子に反応する事は無い分、絞りやすいだろうが……。

 

「今のところ、これが最善だね。流石にエドワードさん達も名前も知らない一人だけの為には動いてくれないだろうし……」

「そうだな……他に案も思い浮かばないしな、それで行こう。よし早速動くぞ、善は急げだ」

 

 と、俺が席を立った所で力強いノックの音が、部屋の入り口から聞こえて来る。

 どうやら、誰かが訪ねて来たようだ。

 出鼻を挫かれ、俺はつんのめってしまう。

 

「どうぞ」

 

 俺がバランスを取っている間に椿姫が来客の入室を促す。

 入室許可を聞き、入ってきたのはエドワードだった。

 図ったかの様なタイミングに思わず苦笑する。

 

「お、もう起きて大丈夫なのか? って、どうした、そんな顔をして」

「いや、エドワードに話をしに行こうとしたら、本人がちょうど現れたもんでちょっと吃驚しただけだ」

「話? 何の用だ?」

「エドワードさん、話をする前に座ったらどうですか?」

「ん? ああ、そうだな。俺からの話もあるからそうするか」

 

 椿姫に促され、エドワードは空いている椅子に腰掛ける。

 それを見届けた俺も椅子に座り直す。

 

「っと、ヒルティの嬢ちゃんはまだ寝てんだな」

「ヒルティちゃんも辛い思いをしてたらしいですから……」

「みてえだな……牢屋でも言ったが、椿姫の嬢ちゃんも俺に敬語は要らねえから普通に話してくれ。あまり敬語で話されるのは好きじゃねえんだ」

「わかりま……んんっ、わかったよ、これで良いかな」

「おう、そっちの方が話やすいからな。で、俺に何の話だ?」

「エドワード、率直に言うと俺達は治安維持の手助けがしたい」

「治安維持? 何故だ?」

「ここに連れて来られた時に見た街の光景が余りにも酷かったからな。日本──異世界の価値観を持つ俺にこの状態は見ていられない。だから少しでも良く出来たらと思ってな」

「ふむ、そうか……正直人手は足りてないんで助かるが……ん? 俺達ってこたぁ嬢ちゃんも一緒にか?」

「勿論だよ、お兄ちゃんと離れて行動とかしたくないからね!」

 

 俺の代わりに椿姫がエドワードの問い掛けに答える。

 正直、椿姫達を治安が悪い場所に連れていくのは躊躇われる。

 だが、信用出来る人が少ないこの状況で、椿姫達を城に残すのは不安が残る。

 エドワードを信用していない訳じゃ無い。だが城には俺達の知らない多数の人がいる。その人達もエドワードと同じ考えとは限らない。それなら、一緒に連れていって俺が守れば良いだけだ。

 

「だが、流石にお前らだけで行かせる訳にゃいかねえぞ。行動を縛ろうとは思っちゃいないが、今は時期が悪い……占領前よりましとはいえ治安はまだかなり悪いからな。護衛は付けさせて貰うぞ。それに……道案内も必要だろ?」

「それは……」

 

 椿姫の予想通り護衛を付ける様に言われるが、護衛を付ける程人が余っているのだろうか? 今の話からすると、余っているようには思えないが……。

 となると、この提案は──

 俺の怪訝な表情に気付いたのだろう、更に言葉を続ける。

 

「何か目的があるんだろう? 恐らくだが誰かを助けたいって所か? しかも不特定多数じゃない誰かを、だろ?」

「何で……」

「牢屋でのお前の行動を見てな……。一刀、お前は大事な人は勿論だろうが、目の前で辛い目に遭っている奴も見逃せないんだろう。んで、今回はここに連れてこられる際に見かけたって所だろ? 見回りをするって事は場所も特定出来て無いんだろうからな」


 まるで見ていたかの様なエドワードの言葉に絶句する。

 

「まあ、それは構わん、俺達も治安維持と同時に犯罪奴隷以外の奴隷解放を行ってるしな。それよりも……問題はお前だな、一刀。お前まだ、あの時ウルリヒ達を殺した事を乗り越えていないだろう? そんな状態で助けられんのか?」

 

 エドワードに棚上げしていた事実を突かれ、思わず身体が少しだけ震える。

 だが、その反応を目の前の二人は見逃してくれなかった。

 

「やっぱりか……」

「……お兄ちゃん……あの時の事、やっぱり平気じゃなかったんだね……」

「…………そんな、事は……」

 

 否定しようと口を開くが、意に反してその言葉は途中で止まる。

 エドワードの言う通り、確かにこの手でウルリヒ達を殺した事を、椿姫を助ける為には仕方なかったと心の隅に押し込め、人を殺したと言う事実と向き合う事をしなかった。

 あの時の事は勿論後悔していない。だが初めて人を殺した事実を無かった事にしようと表面上は取り繕い、棚上げしようとしていた。

 だから、エドワードに見抜かれているとは思わず、動揺してしまった。

 

「人を殺した事は事実だ。逃げんじゃねえ!」

「エドワードさん、止めてっ! お兄ちゃんを追い詰めないで!」

「そうじゃねえ。これから先も害意ある連中から身を守るには必要な事だ。あの時お前は見事に妹を守りきった、それは誇るべき事だ。お前らが居た世界がどんな価値観だったかは知らねえが、この世界では相手を殺さなければ、自分や大事な者を守れない。誰かを救いたいなら覚悟を決めろ、じゃねえと救える者も救えねえぞ」

「そんな覚悟なんて……」

「椿姫、いいんだ、エドワードの言う通りだ」

「でも、お兄ちゃん……」

「椿姫を助ける為にあいつらを殺した事を後悔はしていない、この世界はこういう世界なんだと頭では理解していた。だが、心では人を殺した事に耐えられず、無かった事にしようとした。でも、それじゃ駄目なんだな……」

「そうだ、別に人を殺して平気でいろと言っている訳じゃねえ。大切な者を守りてえなら絶対に躊躇うなと言ってるんだ」

「……わかった、もう逃げない。だが、いざその場面で躊躇わずに出来るかは分からない。椿姫の時は倫理観よりも、椿姫を守りたい気持ちの方が上回ったから躊躇い無く殺せただけだしな」

「 まあ、今はそれでいいだろう。だが、忘れるな自分が死んだら哀しむ人間がいる事にな。大事な者を守りかつ、自分も生き残れ」

 

 そこで背中に暖かく柔らかい感触が伝わって来る。

 いつの間にか立ち上がった椿姫が、俺の身体を背後から抱き締めていた。

 

「椿姫……」

「お兄ちゃん、一人で抱え込まないで……私も頑張るから」

「椿姫、でもそれは……」

「お兄ちゃんにだけ、背負わせたりしない、私も覚悟を決める。私もお兄ちゃんを失いたく無いから……お兄ちゃんは私が守るよ……」

「椿姫……」

 

 これじゃ立場が逆だな、と思いながら背後から回された椿姫の腕にそっと触れる。

 ふと目線を感じ、そちらに目を向けると、ニヤニヤとしてこちらを見ているエドワードの姿が映る。

 

「やっぱりお前らからは兄妹以上の絆を感じるな」

「兄妹以上って……」

「うん! 私はお兄ちゃんのお嫁さんだからね!」

「ほほう……」

 

 何時もの椿姫の『お嫁さん宣言』にエドワードが納得の表情をする。

 

「やっぱりか。ん? だが初めて会った時は否定してたな?」

「あー、こっちの世界じゃ普通なんだろうが、俺達が居た世界じゃ兄妹は結婚出来ないんだよ」

「そうなのか。にしては嬢ちゃんはそんな風には見えないが……」

 

 エドワードの言葉に俺は苦笑いで返す、と言うかコメントしようが無い。

 そんな俺の内心を他所に、椿姫はそのまま柔らかい頬を擦り付けてくる。

 エドワードの生暖かい視線と椿姫の暖かさを感じながら、俺はこれからの事を考えるのだった……。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 翌日、俺達三人──俺、椿姫、ヒルティは部屋でエドワードの部下を待っていた。

 昨日はあれから、すぐには護衛を用意できないのと、王子や部下に俺達が見回りに参加する旨を周知させる時間もあるので翌日からになったのだ。

 武器等もその時に各々に合う物を渡すと言われた。

 本当は直ぐにでも行きたかったが、勝手な行動は出来ないと、逸る気持ちを抑え込んだ。

 その後、起きてきたヒルティにその事を伝えると、ヒルティも少女を救う事に賛成してくれた。

 そして、それぞれが技能や魔法で出来る事を確認しあい、今日を迎えた。

 エドワードの話によれば、そろそろ俺達の護衛を担当する者が来るはずだ。

 そんな事を考えていると、部屋の扉がノックされる。

 ノックに気付いた俺は扉に向かい扉を開けると、そこに居たのは──エドワード一人だった。

 

「ん? エドワード一人か? 護衛の人は……?」

「俺が護衛だ」

 そう言ったエドワードはニヤリとした顔を俺に向けるのだった。

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