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異世界転移で兄妹チート  作者: ロムにぃ
第一部 第一章 異世界に兄妹転移
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第十六話 加護


「ヒルティ、この強制封印ってなんだ?」

「それは……この国の人間に捕まった時に、抵抗されない様に封印されたの」

「そうなのか……これってどうやって解くんだ?」

「んと……妖精族は精霊族と契約すると、その精霊の力で精霊魔法を使用出来るの。だけど封印珠と言う魔導具で契約精霊を封印されると、精霊魔法を使えなくなった上に他の精霊との契約も出来なくなるの。そして封印を解くにはその封印珠が無いと無理なの……」

「この国で封印されたのなら、この城に封印珠がある可能性が高いか……よし、それじゃ探してみるか。となると……まずはエドワードに聞いてみた方がいいか」

「にーに、良いの?」

「妹が兄に遠慮するな。それに兄というのは、妹の為なら何でも出来るんだぞ」

「ん……にーに、ありがとうなの」

 

 強制封印の言葉を口にした時に、暗くなったヒルティの顔に笑顔が戻る。

 ……そう言えば、こういう話には直ぐ入って来そうな椿姫が何も言ってこないな?

 そう思って椿姫に視線を向けると、椿姫は能力が表示されている板を見て、にやけていた。まあ、そんな顔も可愛いんだが。

 

「椿姫、どうしたんだ?そんな嬉しそうにして……」

「え? エヘヘー、そりゃーこれを見ちゃったらそうなっちゃうよ~♪」

 

 と言って、板のとある場所を指差す。

 そこには俺の能力が表示されており、椿姫が指差している箇所を見て──納得した。

 椿姫が指差していたのは【重度妹愛】の四文字だった。

 

「エヘヘー♪ これってそう言う事でしょ? お兄ちゃんに愛されてるなぁって♪」

「あー、うん、それな……」

 

 嬉しそうに身体をクネクネさせている、椿姫から視線を逸らして、曖昧な返事を返す。

 シスコンだと自覚はしているが、流石に本人に知られるのは気恥ずかしいな……。

 

「でも、一つだけ不満があるの」

「ん?」

「私の称号に【お嫁さん】とか【お兄ちゃんの恋人】とかが無いの!」

「……椿姫? そもそもそういった関係にはなってないぞ……それに何度も言ってるが兄妹じゃ結婚出来んしな」

「むー……お兄ちゃんのいじわるっ! でも、確かに法律の壁が……あれ待って、この世界じゃ日本の法律とか関係無いから、お兄ちゃんと問題無く結婚出来るんじゃ……となると、まずこの国の法律を調べて…………」

「おーい、椿姫ぃー?」

 

 駄目だ、完全に思考の世界に入ってしまった……。

 こうなると、誰が声を掛けても反応しなくなるので、基本待つしかない。

 奥の手はあるが出来れば使いたく無いしな……。が、そこでヒルティから予想外の宣言がされ、それにより椿姫も思考の世界から帰ってくる。

 

「ねーねはにーにのお嫁さんになるの!? ずるいの! ヒルティもにーにのお嫁さんになるの!」

「ヒルティ!?」

「えっ!? ヒルティちゃん!?」

「この世界じゃ、兄妹の結婚は当たり前なの。だから、にーにの妹のヒルティはにーにと結婚出来るの!」

「ヒ、ヒルティちゃん、それ本当、詳しく教えて!? でも、お兄ちゃんと結婚するのは私だよ!」

「本当なの、兄妹神様の教えでは兄妹同士の結婚が一番に挙げられるの。そして兄妹神様はこの世界で一番信仰されてるから、ほぼ全ての国で兄妹で結婚出来るの。それにお嫁さんは二人以上でも良いの。だから二人でにーにのお嫁さんになれるの!」

「なんて良い教えっ! 私この世界に来れて良かったよ! でも、二人でかぁ……むーでもでも……まぁ、でも……ヒルティちゃんなら良いかなぁ……」

 

 えっと……神様に元の世界に戻れないと知って悲しんでた筈だよな……。それなのに、この世界に来れて良かったって……。

 そして、俺が二人と結婚する事は確定なのか?


「えっと、椿姫? 元の世界に戻れないのが悲しかったんじゃ?」

「確かに叔父さん達や矢美さんとかに会えないのは悲しいけど……お兄ちゃんが居るなら私は大丈夫だよ」

 

 そう言って、椿姫は少しだけ寂しそうに微笑む。

 

「それに絶対戻れない訳じゃ無いと思うよ」

「えっ? でも創造神は戻れないって言ってたよな?」

「お兄ちゃん、よく思い出して。創造神は元の生活には戻れない(・・・・・・・・・・)って言ってたんだよ」

「……?」


 椿姫の言い回しに違和感を感じる。

 ん……? 元の生活……もしかして……?

 

「元の生活に戻れないだけで、元の世界には戻れる……?」

「うん、私達は元の世界では死んだ事になってるし、戸籍も死亡になってるだろうから、学校に行ったり働いたり出来なくなるからって意味で、元の生活に戻れないって言ったんだと思う。知り合いに会っても、下手すると私達を騙ってると思われるかも……だから戻る方法が有っても……」

 

 そこで椿姫は沈んだ顔で言葉を切る。

 確かに……中には理解を示してくれる人もいるかも知れないが、死者を冒涜していると、神経を逆撫でして怒りを買う可能性もある。

 もし受け入れられたとしても、働く事も出来ないと言う事は、誰かに庇護して貰わないと、日々の生活すら出来ないと言う事だ。

 それだと、間違いなく多大な迷惑が掛かる事になる、それを考えると戻る方法が有ったとしても、戻らない方が良いのかも知れない。


「なる程……戻れない、か……」

「うん、だからこの件はとりあえず置いておこう?」

「そうだな……」

 

 俺と椿姫は図ったかのように、同時に溜息を吐く。

 戻った後の対処法が思い付かない間は、もし戻る方法が見付かったとしても、戻らない方が良いだろう。それに俺は──

 

「お兄ちゃん、今はこの世界で暮らして行く為にどうするか考えよう?」

「分かった、取り敢えず今は能力確認の続きをするか」

「ん、ヒルティも一緒に考えるの!」


 暗くなってしまったが、気を取り直し能力の確認を再開する。

 

「あ、称号とかを触ると、説明文が表示されるよ」

 

 そんな機能が有るんだな。早速俺は、まず異世界人と表示されている部分を触る。

 

異世界人

異世界より転移した者。見聞きした言語が、自動的にその者が基本的に使っている言語に翻訳される。【能力確認】で自分の能力を見る事が出来る。

 

 お、説明文が見えるな、なる程なこの世界の言葉が理解できるのはこれのお陰か。

 俺は他のも確認してみる、まず称号に関してだが……。


重度妹愛 

妹が好きすぎる者。全能力値三割上昇、但し兄妹神の加護がある場合のみ適用 。


重度兄愛

兄が好きすぎる者。全能力値三割上昇、 但し兄妹神の加護がある場合のみ適用。


異界の剣士

異世界から転移した剣士。

 

塚原流剣術師範代

塚原流剣術をほぼ修得している者。指導が出来る腕前。


異界の知識人

異世界の知識を蓄えている者。


情報掌握者

あらゆる情報を網羅する者。

 

神聖魔法使い

神聖魔法を使う事が出来る者。神聖魔法は回復、補助系の魔法。


精霊使い

精霊と契約し、精霊魔法を使う事が出来る者。精霊魔法は各属性の精霊と契約する事で初めて使う事が出来る。


属性魔法使い(全)

八属性全ての属性魔法を使用出来る。 

 

 成る程、補正値はこの能力値上昇のお陰か、でも重度妹愛等は兄妹神の加護が無いと無効なのか……。次はその加護の確認をしてみる事にする。

 

兄妹神の加護

全能力値五割上昇 状態異常無効(精神や肉体の疲労による衰弱等は除く)

兄妹神の加護を持つ者と兄妹の関係になると、加護を持たない者もこの加護を得る。

兄妹魔法の使用可。本人の特徴次第で使用出来る魔法は各々違う。

加護の組み合わせ次第で使用出来る兄妹魔法もある。


武神の加護 (刀剣)

刀剣使用時に筋力・体力を二割上昇 技能:身体強化(極)付与 。


精霊神の加護 

精霊魔法使用時に威力二割上昇・精神消費二割減小 正式な儀式無しで全ての属性の精霊と契約可能。(略式儀式は必要)

 

創造神の加護

兄妹神の加護も所持し、血の繋がりがある兄妹は兄妹魔法【魔法創造】【????】を使用可能。詠唱破棄付与。神聖魔法使用可。


魔法神の加護 

属性魔法使用時に二割威力上昇・精神消費二割減少 属性魔法(全属性)使用可 。


兄の守護

兄に妹と認識されている場合、妹の全能力値二倍 、但し兄妹神の加護がある場合のみ適用。

 

妹の献身

妹に兄と認識されている場合、兄の全能力値八割上昇、但し兄妹神の加護がある場合のみ適用。複数人いる場合は重複可。

 

 ……なんと言うか、兄の加護と妹の献身の補正率が凄いな……兄妹神の加護より高いんだが……。

 しかも、妹の献身は重複可か……これ、今後ヒルティみたいに妹が増えていったら凄い事にならないか? 

 

「兄妹関係の加護や称号が凄いね、状態異常無効に経験値二倍、それに加えて能力値上昇の合計数がとんでもないよ」

「ヒルティにも兄妹神様の加護が付いてるの! 前は無かったから、きっと加護を持つにーにの妹になったからなの!」

 

 きっと兄妹神が創造した世界だけあって、兄妹関係の恩恵が強いのだろう。

 だが俺達にとってはかなり有利に働いている加護なのは間違いない。

 さて、最後に技能の確認だな。

 

妹心治療

自動発動。妹、若しくは妹になりうる者の傷ついた心を癒す。技能保持者と対象が接触している必要がある。但し、技能保持者より年下にしか効果は無い。


傷心妹感知

自動発動。技能所持者の視界内に心に傷を負った妹、若しくは妹に成りうる者の心を感じられる。一度感知すれば今後は半径二十メートル内に居れば感じとる事が出来る。

但し、技能保持者より年下にしか効果は無い。


妹護全開

自動発動。妹が危機の時、自身が瀕死状態でも全力の行動可能。時間制限有り

 

鑑定(生物)

生物の能力を見る事が可能。死者の能力は鑑定不可。

 

鑑定(物)

生物以外の性能を見る事が可能。

  

身体強化(極)

筋力・体力・耐久力の基本値が五分間二倍になる。24時間に一度が使用限度。

 

収納空間

異空間に道具類を触る事で格納する事が可能。出す際は物の名前と数量を念じれば取り出せる。容量無限。生物格納不可。収納空間内は時間が停止している。


殺気感知

自身及び自身の妹に殺気が向けられている場合殺気を感知する。

但し、範囲内に殺気を放っている者がいる時のみ感知する。範囲は自身の成長により変動する。

 

兄妹魔法【????】

現在使用不可。

 

兄妹魔法【魔法創造】

兄妹が揃っていなければ使用不可。使用する際は両手を繋ぎ、兄が創造する魔法を想像し、妹の精神力を媒介とする。創造しようとする魔法の難易度によって必要となる精神力の量が変化する。兄妹神と創造神の加護を持ち、血の繋がった兄妹のみ使用可能。精霊魔法・兄妹魔法を除いた魔法全てを創造可能。この魔法で作成された魔法は妹側の技能に付与される。

 

兄妹魔法【空間魔法】

兄が側に居なくても使用可能。八属性に含まれない魔法。空間に関する魔法を使用可能。上級魔法になる程、使用に必要な準位が上昇し、一日の使用限度数も存在する。兄妹神と魔法神の加護を持つ者のみ使用可能。

 

兄妹魔法【精霊顕現】(強制封印)

兄が側に居なくても使用可能。使用者は契約している精霊本体を顕現させる事が可能。但し、顕現中は常に精神力を消費する。消費する度合いは精霊の格により変化する。兄妹神と精霊神の加護を持ち、妖精族の血筋の者のみ使用可能。現在、封印珠により強制封印中。

 

属性魔法(全)

火・水・風・土・氷・雷・光・闇の八属性全ての属性魔法を使用可能。上級魔法になる程、使用に必要な準位が上昇する。

 

詠唱破棄

発動前に必要な詠唱を破棄可能。但し、発動発声は必要。

 

神聖魔法

生命力回復・状態異常回復・瘴気浄化・各能力補助等の魔法が使用可能。

上級魔法になる程、使用に必要な準位が上昇する。


精霊魔法(強制封印)

各属性の精霊の力を借りて魔法を使用可能。精霊の力を借りるには妖精族の血筋である事と、精霊毎に儀式が必要になる。但し、精霊神の加護がある場合は略式儀式で可。現在、封印珠により強制封印中。

 

能力確認共有

使用者が許可した人物の能力を、許可された全員が操作及び見る事が可能。許可された者同士は各々が表示させた能力板を視認する事が可能。許可されて居ない者には視認不可。一度許可すれば、使用者が許可を取り消すまで使用者が近くに居なくても永続的に各々が使用可能。但し、近くに居ない者及び死亡者の能力は見る事が出来ない。

 

 技能はこれで以上か。しかし何が何だかよく分からないな……。

 傷心妹感知……これはもしかしてヒルティが錯乱した時や、街で見た奴隷と思われる少女を見た時に感じたものの正体はこれだろうか?

 他にはそれらしい技能は見当たらないので、きっとそうなのだろう。

 という事は技能の説明文からして、あの少女もヒルティの様に俺の妹になる可能性があるのか? まあ、本人の意思もあるだろうから、絶対では無いだろうが。

 妹心治療は、ヒルティを落ち着けた際に発動した技能だろう。直ぐヒルティが落ち着いたのはこの技能のお陰か……。そう考えるとちょっと複雑だな……。

 妹護全開はきっと椿姫が襲われた時に発動した技能だろう。あの時は拷問のせいで動けなかった筈なのに十全に動けたからな、この技能で間違い無い。

 一つ詳細不明の技能もあるが、今は気にしてもしょうがないな。

 そうしてその他の技能や一部意味が分からない用語等を、椿姫に説明を聞きながら使い方等を覚えていく。その内の準位というのは強さの指標で、この数値が上がる毎に強くなっていくとの事。生命力が無くなれば死に、精神力が少なくなるほど(うつ)になるのだとか。

 それにしてもこれは、椿姫が居なかったら何も分からない状態だったな、と思いながら椿姫の頭を撫でる。

 椿姫はそれを嬉しそうな顔で受け入れ、俺の身体に抱き付いてくる。

 反対側のヒルティも俺の身体に抱きつき、羨ましそうな顔で見てきたので同じ様に反対の手で撫でてあげる。

 因みに今の俺の姿勢はベッドのヘッドボードに背中を預けている状態で避けようが無かった。避けるつもりは毛頭無いが。

 二人の妹を平等に愛でていると、突然部屋のドアが開き、一人の人物が部屋に入って来る。

 

「おっと、起きてたみてえだ、な……わりい邪魔だった様だな」

 

 その人物は地下牢で会ったエドワードだった。俺達の様子を見て初めは驚いていたが、直ぐにニヤニヤした笑みに変わる。

 

「だから、そういう関係じゃ……って、それはもう良いから……それより何か用があるんだろう?」

 

 地下牢で行った同じようなやり取りを断ち切って、エドワードに問い掛ける。

 

「おっと、そうだった。お前に会わせたい人物がいるんだ、今構わないか?」

「ああ、問題無いがまだ体調が万全じゃないんでな。まだ立つのは難しそうなんだ。このままでも構わないか?」

「おう、問題無いぜ、今部屋の前に居るから呼ぶな……お待たせ致しました、どうぞお入り下さい」

 

 聞き慣れないエドワードの敬語に驚きながら、部屋に入って来る一人の男に注目する。

 部屋に入って来たのは、金髪碧眼で顔立ちは整っているが、悪戯が好きそうな子供っぽい表情をした20才位の男だった。

 だが、次の男が発した言葉に俺達は固まってしまった。

 

「初めまして、異世界の方達」

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