キャラメイクに時間をかけるタイプ
RPGとかのキャラメイクに時間をかけてしまうのって性格分かれますよね。
主人公は死ぬ程悩んで、でも後悔しないタイプだと思います。
「なんで、なんで私がこんな目にあわなくちゃ…… ただ落し物をしただけなのに…… 嫌だ、行きたくない… あのへんぴな世界に住むくらいならいっそ死にたい……」
………目下問題なのは隣で土下座したまま泣いてる女神様をどうするか、だな。
「なぁ、俺としては別についてきてもらわなくてもいいんだけど……」
何となくこの女神は地雷な気がするし。 何となくな?
「それでいいなら苦労してないわよ! いい、ヘルヴェル様は『全知』なの! それにアンタはそのヘルヴェル様の加護を受けてる。 つまりヘルヴェル様からしたらアンタは私の監視役も兼ねてるってわけ。 もしアンタが私を置いていったら…… 間違いなく死ぬわ」
「死ぬって… そんなオーバーな…」
「サカキはあの人の恐ろしさを知らないからそう言えるのよ…… 聞きたい?」
「ありがたく遠慮させてもらう」
そんなに恐ろしい人、いや神様だったとは…… もしかしたら外見に見合わぬ歳なのかもな。 今度会う機会があれば歳でも聞いてみるか。
「はぁ、やっぱし行かなきゃまずいかー。 諦めて大人しく行くかー…… よし! そうとなれば準備しなきゃね!」
なんとなく空元気なのが辛い……。
「まずはサカキのこれからについて話しましょうか。 これからアンタがどうなるか、ちゃんと分かってる?」
空元気ながらきちんと仕事するのは好感が持てる。 俺も合わせることにしよう。
「いまいちよく分からん。説明してくれると助かる。 さっきの話の限り、どうやら俺は異世界に行くらしいんだが?」
「そうよ。 そういう決まりなの。 女神や神が下界の人間の死因に深く関わった場合、その人間を自分の担当する世界に転生、ないしは転移させる義務があるの」
「なんだか強引だなぁ……」
「神様なんて皆そんなもんよ。 良かれと思ってって奴を素でやるのが神様よ」
なるほど、なんだか説得力がある。
「その場合、普通なら死んだ人を冥界、みたいなところに送られる前に回収して、とっとと転生させちゃうのね。
だから今回みたいに女神も一緒に転移なんていうのは超特例よ。 恐らく私が行ったのを確認したらヘルヴェル様が代理の担当者を寄越すはず。 今回はすごーーく強力な力が働いてしまっただけでね…… 普通はないのよ……」
「な、なるほど。 それで、俺が行くところはどんなところなんだ? 教えてくれないか?」
何故俺が気を遣わなければならないんだ。
「あ、あぁ、そうね。 アンタが行く世界だものね。 とは言え私もなんとなくしか知らないわ。 知り過ぎたら仕事がしづらいだろうって情報統制がされてるの。 だから私が教えられるのは概要くらい。
アンタが行く世界の名前は《ゼイラード》 剣と魔法がまだまだ現役、国同士の抗争はあるものの基本的には平和を第一とする、転移するには普通なところね」
「おぉ…! 剣と魔法、か! 何だかテンション上がって来るな!」
平和で大いに結構! これはもしかしたらのんびり異世界ライフしろという神様からの啓示か!
「えーと、ゼイラードっていうのは世界の名前であると同時にその世界の最高機関でもあるの。 各国の代表が集まり会議をする場ね。 要するにアンタが住んでた世界で言うところの国連みたいなもの、って書いてあったわ」
「詳しい事は行けば分かるだろう。 いやー、中々良さそうなところじゃないか、ゼイラード!」
「そう? まあとにかくちゃっちゃと進めましょう。
行く世界も分かった事だし、次はキャラメイクってところかしら。
サカキ、さっきのキャラクターシート出しなさい」
「あぁ、分かった。 えーと、これか」
土下座をした時に落ちたのか、すぐ近くにあった。
「じゃあそれ広げて。 軽く説明するから」
「頼む。 さっき聞こうと思ったんだが聞けなくてな」
なんとなくならこれが何か分かるが、チュートリアルは受けるべきだろう。
「じゃあもう一度見るわね。 さっきと少し変わってるはずだからよく見て」
【名前】 サカキ ユイト
【Lv】 1
【STR】10(+1)
【CON】11(+1)
【POW】14(+4)(+1)
【DEX】11(+1)
【APP】10
【SIZ】14
【INT】15(+1)
【EDU】12(+1)
【スキル】 《ダイスの女神の加護》
《全知の神の加護》
【スキルポイント】 40+150
「おお、本当に加護が増えてる! けど、スキルポイントってのが減ってる気がするな」
「それは後で話すわ。 それにしても、加護二つ持ちの人間ってだいぶ珍しいわよ。 それに《全》系統の加護なんて特にね」
どうやら幸先はいい感じらしい。 悪い気はしないな。
「さて、じゃあ説明していくわね。
そもそもこれは何をベースにしているか、分かる?」
「馬鹿にしないでくれ。 TRPGで使ういわゆるキャラクターシートだろ?」
TRPG自体は未経験だが、名前くらいは知っている。 実況動画みたいなのも結構あるしな。
「そうね、正解よ。 正式名称も《キャラクターシート》。 もっと分かりやすく言うとステータスね。
日本とかいう死の危険がないところでは全く知る必要の無い事だけど、異世界なら話は別。 特にアンタみたいな異世界人はステータスの確認が出来なきゃ長生きできないわ。
いい、サカキのステータスがキャラクターシートの形式をしているのは現在サカキが私の加護を受けているからよ。 そもそもステータスっていうのは全員が全員見れるものじゃないの。 《鑑定》スキル持ちか、特定の《加護》持ちくらいよ。 だから多くの人はステータスを一生見る事はない。 まあこの辺は異世界人としてのアドバンテージって感じね」
「確かにステータスも見れないゲームはクソゲー過ぎるわ……」
「それから値について。 STRのところが 10(+1) ってなってるでしょ? これは元々アンタは9のところを+1ブーストされてるって事。 STRで言うとヘルヴェル様の加護ね。 この話は長引くからおいおい話すわ。 とりあえずこの値の説明をするから。
この値は文字通りSTRならアンタの筋力、INTなら賢さを表してる。 この数字は基本的に滅多に変化しないわ。 ポンポン筋力やら賢さが変わってたら気持ち悪いでしょ? 上がる事もあるけど、それは時期に分かるわ。
まあ、今のところそんなに気にしなくても大丈夫かも。 少なくともアンタは加護のおかげで並の人間よりは上のステータスだし」
「なんだかそう言われると卑怯な気もするな……」
「何言ってんの? こんなの並の人間と比べたらそりゃ上だけど、異世界人の中では下の方よ?」
「ザリアって上げて落とすタイプなんだな……」
「いいから次いくわよ。さっきちらっと話したけど《スキル》についてよ。
異世界では技能の熟練がスキルの解放として表されるわ。 毎日料理をしてるとやがて《料理》のスキルが解放されるって感じね。匠とか職人ってのは大体がスキル持ちよ。
これを逆手に取ったのが、異世界人のスキル割り振りシステムよ。
スキル持ちが全員職人レベルなら、スキルを手に入れたら職人になれるんじゃないか、って発想ね。
異世界人には転移、転生する前にスキルポイントの割り振りをしてもらうの。 ポイントを使うとスキルを手に入れる事が出来て、そのスキルに関する事なら大抵の事は出来るようになるわ。
アンタは既に加護二つで200ポイント使われてるから、残り190ポイントね」
「え、何、加護ってただでくれたんじゃないのか? 俺のスキルポイントが勝手に使われてたってこと?」
「100ポイントで加護なら安いものよ。 欲しくても手に入らない人が大半なのに、アンタワガママ過ぎない?」
「さすが神様、理不尽だ………」
とはいえ、やはり加護スキルは特別なものか。そう考えると100ポイントなら妥当なのかもしれんな。
「ほら、スキル一覧あげるから悩んでなさい。私は向こうで支度してくるから」
ペラペラの紙一枚を投げてよこし、ザリアはドアを開けてどこかへ行った。
「これは、かなり慎重に決めなきゃな………」
CONとかPOWってなんだよ!? って人がいたら大変申し訳ないです。
何話かしたら軽い設定みたいなのを投稿しますので………何卒………