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ファーストキスは小学生

衝撃の真実!主人公はロリコンだった!


嘘です。 まだ未定です。

 目が覚めると、そこは俺の部屋だった。


「遅刻かこれは! 目覚ましならなかっ……た、いや、そうじゃない、待て、これは、なんだ……?」


 枕元に置いてある時計は10時過ぎを示したまま止まっていた。 というよりそもそも俺の格好は寝巻きではなく制服だった。


「ここは、俺の部屋、だよな」


 早く確証が欲しかった。 カーテンを開ければ見慣れた景色が広がる。それだけでいい。 さっきまでは大嵐だったがきっともう晴れている………はず……だ…。


「な、んで。 俺はさっきまでの天気を知っているんだ。 俺はさっきまで何をしていた!? くそ、頭が働かない!」


 よろける体をなんとか動かし、カーテンを開けると、そこは、


 家の中だった。


「………………は。 なんだこれ。 窓の外は家の中って笑えねぇぞおい」


 窓を開き、大きく体を乗り出し周囲を見渡すも、そこはもはや見慣れた景色ではなく、誰かの家の中と化していた。


「やっとお目覚めね。 朝弱いタイプなのかしら」


 突然背後から声をかけられ窓の外に落ちそうになるも、動揺を隠そうと努めつつ極めて理性的に振り返った。


「お、おお。 だ、誰だお前! 勝手にひ、人の部屋に入ってくるな!」


 思いっきりどもってしまった。 死ぬほど恥ずかしい。穴があったらなんとかだ。


「まあまあ落ち着いて。 深呼吸深呼吸。 突然こんなとこに来て驚くのは分かるけど、とりあえず名前を聞かせてもらえるかしら?」


 言われた通り深呼吸をしたら少し落ち着いた。 ええと、名前、名前ね。 それくらいならいいだろう。


「俺は榊。 榊 唯人だ。そっちこそ誰なん

だ?」


 そう言うと目の前の赤い髪の女は堂々と胸を張り答えた。


「私はザリア。 『幸運』を司る女神様よ」



 ……名前を聞いただけのはずが頭の中がハテナでいっぱいだ。 女神? 幸運?


「はぁ、やっぱりわかってなさそうね。 サカキ、アンタ最後の記憶は何?」


 最後の記憶? 思い出せる最後の記憶って意味だろうか。


「確か俺は朝起きて、駅までずぶ濡れで走って、遅延してて、それで帰宅しようとしたら、女の子がいて、そう。そうだ。 俺は川で溺れるクソ馬鹿なカワウソを助けたんだ! そしたら幻聴が聞こえて、火事場パワーが出て、そして、それで、そのあとどうなったんだっけ……」


「アンタ、分かってなさそうだから言ってあげるけど、さっき岩に頭ぶつけてそのまま溺れ死んだのよ」


 そう、火事場パワーが出たあとは筋肉痛みたいになって、力が少しも出なくて、足を滑らせて、そうか! 俺は死んだのか! あの時の後頭部の痛みは現実だったんだな!


「って、えええええええええ!!!??? 死んだ!? 俺が!? いやいや待てよじゃあ何か? ここは死後の世界で天国なのか? にしては殺風景なところだなぁおい!!」


 よくわからんキレ方をしてしまった。 それより俺が死んだ!? 冗談も休み休み言えってんだよ! 溺れたカワウソ助けた代わりに死ぬだなんて… アホすぎて笑えない。


「悪かったわね…」


 ふと前に目をやるとザリアとかいう赤髪の女が俯いて震えていた。 さっきは慌てて気付かなかったが、この女、奇妙な格好をしている。 アオザイみたいな感じだが、なんとなく違う。 豪華というか奢侈というか。


「は? 何がだ? いや待て。その妙な格好、女神、女神…… あの時の幻聴も自称女神とか言ってなかったか……?」


「そうよ! その自称女神はこの私! そして殺風景なここは私の家の中!! 私のミスでアンタがうっかり死んじゃったからわざわざ引き取ってあげたのよ!! 死なせた事は悪いと思うけどむしろ感謝しなさい! いやすべきね! 今すぐに! ありがとうございますって言いなさい!」


 怒涛の勢いでまくしたてられたら何か重要な事を言っていた気もするがもう何も言えない。


「あ、ありがとうございます……」


 つい言ってしまった。 一体何に感謝したんだ?


「まあ感謝くらい当然ね。 さて、アンタは死んじゃったわけだけど、これからの予定とかある?」


 顔をずいっとこちらに寄せてきた。よく見るとこの自称女神、普通に可愛い。 例えるならクラスで一番ではあるが学年で言うと四番目くらい。それが急にフランクに接してくると緊張が走ってしまうのが男子高校生の悲しきさが


「い、いや、ない。というか死んだ人間に予定はないんじゃないか?」


「それもそうね。 さて、本題に入りましょうか」


 くるっと体を反転させ、指を鳴らすとどこからか白紙の紙と六面のサイコロが三つ出てきた。


「ほら、この紙持ってサイコロ振って」


「サイコロ? もう何が何やら……」


 いつの間にか台まで用意されている。右手に持たされたサイコロを適当に台に転がすと同時に左手の紙が光り出した。


「なんだこれ……… 光ってるぞこの紙」


「いいからいいから。それじゃその紙置いて。 あ、表で置いてよね」


 言われるがまま紙を置くと、さっきまで白紙だったそれに何かが書かれていた。


「もうこれぐらいじゃ何とも思わんわ。 えーっと、何々………」



【名前】 サカキ ユイト

【Lv】 1


【STR】10(+1)

【CON】11(+1)

【POW】14(+5)

【DEX】11(+1)

【APP】10

【SIZ】14

【INT】15(+1)

【EDU】12(+1)


【スキル】 《ダイスの女神の加護》


【スキルポイント】 140+150



「見せて見せて。 あらサカキ、アンタって全部普通で取り柄のない男かと思ったらそれなりに教養はあるのね」


 隣から言われのない罵倒を受けたが、それどころではない。


「ナニコレ? 俺はいつの間に絶妙にリアルなキャラシートを作ったんだ?」


「あらあら、一発でキャラシって分かるか。 話が早くていい事ね」


「いやいやいやいや。 どういう事だ? 流石に限界だ。 質問したい事だらけすぎる」


 むしろまだ何も分かってないままここまで来てしまったのですがって感じだ。


「そう? アンタは死んだ。 私は女神。 それはアンタのキャラシート。 これでも本当に分からないの? それならアンタのINTは腐ってるわね」


 ………分かってるさ。 現代っ子の俺はいやでも気づく。

 でも、()()じゃあんまりにもテンプレすぎるから認めたくなかった。

  だってそうだろ? もしそうならーーー



「あの時のカワウソ、もしかしてザリア、お前か?」



「無駄にINT高いと思ったらこれか!!! そんな下らない事によく気がついたな!!! 褒めてつかわすわ!!!」


 ザリアは顔を髪よりも真っ赤にして怒鳴り散らした。


「あんな嵐の日に都合よく一人ぼっちの女の子と野良のカワウソなんて普通いねーよ……… まだ猫の方が分かるわ」


 あの時溺れていたのがカワウソじゃなく猫なら奇跡的に目があって的なカタルシスも起こり得ただろうに。


「し、仕方なかったのよ。 あの時アレしかスキンが無くて…」


 なんだか急にしおらしくなった。 さっきとは態度が正反対だ。


「ほうほう。 それでまたなんであんな日に?」


「えっと、少し長くなるわよ……?」


 おそらくさっきの態度は正反対じゃなくて、こっちの態度が普段なのか。 何故かは知らんが気を張ってたのか?


「別にいいよ。 どうせ予定も無いし。 てか死んでるしな!」


「テンションが謎ね… まあいいわ。

 まず、私の話からしましょう。サカキの話にも関わるし丁度いいわ。えっと、私達はそうね人間が言うところの女神様ってのじゃくて、神そのものと言った方が近いわ。

 女神様って言うと、仕事もせず毎日遊んでいるイメージがあるかもだけど、実際は違う。 女神それぞれに世界一つが担当として与えられるの」


「世界一つ、ねえ。 壮大すぎる話だが、分からんでも無いな」


「担当と言っても明確にする事がある訳じゃなくて、イレギュラーの発生を防ぐのが主な仕事で、普段はただ見ているだけでいいの。 簡単な仕事よ」


「イレギュラー? まあ、とりあえずは関係なさそうか。 それで、なんでまた地球に?」


「えっと、それはね、うん……」


 ここにきて言いづらそうにもじもじしている。 やましいことでもあるのか? というか本当に別人みたいだな……。


「とっとと言ってくれ。 ザリアの仕事態度に興味がある訳じゃないんだ」


「えっと、さっき普段は見てるだけって言ったんだけど、それは逆に言うと干渉は避けろってこと。 余計な事をしたら世界はすぐ壊れてしまうからよ。 でも、そんな事は皆分かってる事実だけど形骸化していた。 だってここは退屈だから」


「まだ殺風景って言ったこと根に持ってるのか? 悪かったな」


「そういう訳じゃないけど…。 とにかく、女神は皆思いのままに下界に降りるのは普通だったの。 下界はここと比べて何倍も魅力的だからよ。それについては私達より上の存在、まあ上司みたいなものね。 彼等達も暗黙の了解としていたわ。 問題さえ起こさなければ、って。 でも、唯一禁止されていた事があったの。


 それは、世界間での物品移動よ。 これだけは厳しくしていたの」


「なるほど、確かに別世界の物なんて落ちてたら洒落にならねぇな。 どんなものでもこの世界に無いもので構成されてるんだからよ」


「そういう事。 それが世界を破滅に導くイレギュラーの一つ。 でも、ね。



 日頃人間のために働く女神様なら、ミスの一つや二つくらい、例えば地球への落し物くらい、許されると思わない?」


 薄笑いを浮かべながらそう言い放った。


「……………。 つまり、地球を終わらせかねない落し物をして、やべえと思って拾いに行ったら死にかけた、と?」


「ま、まあそうなるわね! なによ! 結果として地球は無事なんだしよかったじゃない! まさか地球を救った私に文句でもあるの!?」


 今度は逆ギレか。 態度が偉そうなんてもんじゃない。自分のミスの尻拭いを自分でやっただけじゃねえか。

  あと、文句でもあるの、だと………。


「あるわ!!! 文句しかないわ!! つまりお前のせいで俺死んでんじゃねえか!!! 助け損だわ!!! 返せ! 俺の命返せ!!」


「はあ!? 助けてなんて言ってないのにそっちが勝手に川に飛び込んだんでしょ!? 第一あの時女の子がいなかったら見向きもしなかったでしょうに!! あーあ!! あの子さえいなければ私はこんなの連れて来なかったのになぁーーー!!!!」


「……一発くらいなら殴っても許されるよな、神様」


 そう言い、拳を握り締めると、空から声が響いた。


(そうですね、私の代わりに一発殴っておいてもらえませんか?)


「うおっ!? 誰だ!! また女神か!?」

「え……… この声、まさか、いや、嘘でしょ……」



(嘘ではありませんよザリア。 貴女が珍しく死者の導きをしているから感心して見に来たというのに、一体どういう事ですか?)


 空から光が差し、姿を現す。

小学生くらいの大きさに黒髪ロングヘアー、そして背後にはまばゆいばかりの光。

眩しいながらも目を凝らして見るとあの時の女の子だった。ゆっくりとあの子が後光をバックに降りてくる。 小さな体には不自然でなんだかシュールだ。


「あの時の子がどうしてここに!? てかザリア、あの子と知り合いだったのか!?」


 隣を見ると、真っ青な顔のザリアがカタカタと音が聞こえそうな程震えている。


「ち、違うわ。 あの人は、さっき言った上司の中の一人。 そして神の中でもトップ中のトップ『全』の中の一人、『全知のヘルヴェル』様よ…… もう終わったわ…… あの人が出て来たらもう終わりよ…… せめて死ぬ前に下界の美味しいものを食べてから死にたかった…」


 そんなお偉いさんがこんなとこに来てんのか!? ど、どうしよう、俺ビショビショの鞄持たせちまった!! あーあ、また死ぬのか俺。 この短期間に二回も死ぬことになるとはな……。 とりあえず土下座しとくか…。


「大変失礼をおかけして申し訳ありませんでした!!」


 その場で膝を折り、手のひらで美しい正三角形をつくり、額は地面にめり込ませんとばかりにくっつける。 我ながら綺麗な土下座だと思う。


「なにしてんのサカキ。 アンタの土下座って死ぬほど笑えるわね。 空気読みなさいよ」


この女神に天罰が下って欲しいと思ったらすぐに下った。


「空気を読むのは貴女ですザリア。 それは貴女が行った日本という国での最上級の敬意を表す姿勢。 むしろ貴女がそれをすべきでは?」


「もももも勿論ですぅ! 失礼しましたぁ!!!」


 手のひらクルックルじゃねえかコイツ。今のゴンって音からして頭を地面に打ち付けてるぞ。


「それにサカキ、貴方には礼を言いに来たのですよ」


「え、と。 礼ですか? 人違いじゃないですかね? むしろ俺は失礼な事をした記憶しかないのですが…」


「いいえ。 そんなことはありません。 あの時貴方はザリ、いえ、この馬鹿(・・)を助けようと自らの命をかけたではありませんか。 それに感謝せずして何が神でしょう。 ねえザリア」


「はいそうです! サカキ様には感謝してもし尽くせません!」


 嘘つけ。 歯食いしばってんのこっちまで聞こえるぞ。


「ならば、彼の転生についていって手助けをする事ぐらい当然ですよね?」


「はい! はい? ついていく? 私が? 何故?」


「当 然 で す よ ね?」


「喜んでついていかせて頂きます!!!」


 す、すごい。 小学生くらいの子から半端ないオーラが出てる。 正直俺も怖い。


「最近の貴女の素行には目に余るものがあり、この際性根を鍛え直すのも吝かではないと思っていたところでした。 実に丁度いいところでしたよザリア」


「はい、ありがとうございます………」


 隣で歯を砕かんとばかりに食いしばりつつ土下座してる姿には鬼気迫るものがあるな……


「さて、今話した通りサカキ様には申し訳ないのですが異世界への転移をして頂くことになりました。 そういう決まりですので拒否権はないのです…… 本当にこの馬鹿のせいで申し訳ありません」


「いえいえそんな事ないですよ! 全然大丈夫です!」


 そう言うとヘルヴェル様の顔が年相応にほころんだ。


「そうですか! それなら結構です! ただそうですね、あまりに申し訳ないので何か旅に役立つものをあげれたらと思うのですが……」


「いえいえいえいえそんなお手を煩わせるような事は結構です! 」


 これ以上の厄介事は勘弁願いたい…。


「なら、せめてこれだけでも…… サカキ様、少しこちらに」


 手招きをされ、近づくとしゃがむように言われた。


「こうですか?」


「もう少し、それで結構です。 ではいきますね」


 そういうとヘルヴェル様は俺の顎を小さな手で支え、額に軽くキスをした。


「んなっ……」


 お、俺のファーストが!!!??? 見た目は小学生中身は神様に!!!???


「これで私の加護を与えられました。 自分で言うのもなんですが私はそれなりに名の通った神なので、それなりに役に立つと思います。それと、ザリアをよろしくお願いします。 根は悪い子ではないので、どうか優しくしてやって下さい」


 そう耳元で囁くと、再び後光が差し、浮かんでいった。


「では、サカキ ユイト。 貴方の第二の人生が良いものでありますように。

 それとザリアはサカキ様によく従うように。いいですね?」


「分かりました…… 寛大な処置に感謝致します……」


 ザリアのその声を聞くと、満足そうな顔を浮かべ、姿を消した。


 残ったのは、夢うつつな顔をする高校生と、土下座しながら涙を流す女神だった。

恋愛をこの先入れてくかどうか、それが現状一番の問題です。

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