表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/18

宿屋、それはフラグの宝庫

着替えた時指輪もちゃんと回収してます。

(俺より先に転移した人がいるのは間違いない。 この世界に銃の技術はない、少なくとも流通はしていないからだ)


 宿を探して街中を歩くが、頭の中はさっきの事でいっぱいだった。


(会うのは無理だな。 そもそも生きてるかどうかも分からない。 だーもう! こんなの後でいいんだっての! 今はザリアの事、そのために今夜の宿の事!)


 気持ちを切り替えるべく宿屋探しに集中する。



 十分ほど歩いたところで街から外れた宿屋を見つけた。 外見もまともそうだ。


「今夜はここにするか。 この際余程ひどくなければ何でもいいさ」


 ドアを開けて中に入ると、カウンターの女の店員以外人はいなかった。 やはり悪くない宿だ。 ここに泊まろうと決め、気だるそうな店員(イルナと書かれた名札を下げている)に声をかけてみる。


「空き部屋はまだあります、あるか?」


 ここでは敬語を使うと逆に怪しく思われかねない。 店員は年上っぽいけどタメ口だ。


「えーと、まだ大丈夫っすねー。 そんじゃ、何泊します? それと食事はつけますかー? 朝食と夕食セットで一日一万Gっすー」


 先払い制か、あまり長居をしたくはないがこの宿を逃すのも痛い。 多めに見積もっておこう。 それに今の手持ちが大きいのしかないから、十万G札を出しても問題ない金額にもしておきたい。


「十五日だ。 まとめて今払う」


「あはっ、お兄さんお金持ちなんだー! それに()()来るの初めてでしょ? ポンって十万G札なんて出したら寝込み襲われちゃうよー?」


 イルナは茶髪を揺らしながら猫の手で襲うそぶりを見せてきた。 十万って本当に使いにくいな…… 銀行とかこの世界にあるかな?


「これで全財産みたいなもんだ。 もう素寒貧だよ」


「ほんとかなー? ま、この宿では襲われる事なんてないか。 一日五千Gも払える奴こんな街にはそうそういないしねー」


 やっぱりここは相場より高いのか。 俺の常識がイマイチ足りてないのは今後致命的になりそうだ。


「はい、お釣りの五万Gと部屋の鍵。 階段上がって左側の一番奥の部屋だよ。 ご飯の時は私に声かけてねー。 それではごゆっくりー」


「あぁ、ありがとう」


 お釣りと鍵を受け取り、カウンターの奥の階段を登る。




「俺の部屋はここか、どれどれ。 おおっ、良いじゃんか!」


 中は想像より広い部屋で、ベッドと机、それにシャワーまで付いていた。


「良かった、これで寝床確保だー。 それにこれでようやく中身を確認出来る」


抱えていた木箱を机の上に置き、再び開ける。 相変わらず中にはSAAが入っている。


「どこからどう見てもSAAだ。 バレルの長さからして砲兵用か。 フレームに刻印もある。 ん? だけど何かおかしい気がする。 何だこの違和感?」


見た目は有名なリボルバーその物、だがどこかに違和感がある。 そう、銃に本来あるべきものが、過程であるべきはずのものが無いようなーー


「分かった! ネジがないんだ! グリップにもバレルにもどこにもない! いやいやおかしいだろ。 そしたらこの銃はどうやって作ったんだ?」


これに関しては分からない事だらけだ。 仕方ないが、一旦保留だ。 このジャケットにはSAAを入れておける程大きなポケットもあるし、しまっておこう。



SAAの謎より今はこちらが優先だ。 ここを拠点として、十日、最大一五日でのザリア救出を目指すため、これから詳しい計画を建てる。


「って言っても、手がかりはゼロだし、どうするかな…… 何から手をつけようか」


まずは領主とやらの情報が欲しい。 人を集めてるって言ってたけど、何のためだ? もしかして人体実験とかだろうか、もしそうなら救出期限が明確にある。


「あーくそ、何も分からない! 第一『金の流れ』って言われても追えないわ! ヘルヴェル様のヒント難すぎだろ! こうなりゃ手っ取り早く情報屋とか探すのはありかなーでもなー」


俺みたいなガキを手伝ってくれる情報屋なんているだろうか、いやいない。 やはり自分の足で調べるしか、でもその前にタイムリミットが来たら、いや、でも、しかし。


たかだか高校生に建設的な案なんて期待出来るはずもなく、とりとめもない考えが脳を巡るうちに、気づいたらベッドの上に横になっていた。





「ん……もう朝か……」


期せずして早寝をしてしまったため自然と起きれた。 夜とはまるで違い、朝の街は静かだった。 皆まだ寝ているか、これから寝るのだろう。


「何も進展は無し、とりあえず飯食うか」


階段を下りると数人がテーブルで朝食を摂っていた。


「あ、おはようございますー。 朝食食べます? 今日はパンと豆のスープですよー」


「豆は好きだ。 お願いするよ」


「はいはーい」


飯が出てくる事の有り難みが身にしみるな…… さて、今日はどうしよう。 今のとこノープランだ。


「どーぞー。 豆多めにしましたよー」


「ありがとう、えっと、イルナさん」


「イルナでいいですよー。 お名前伺ってもいいですか?」


「サカキだ。 短い間だけどよろしく」


イルナがニコッと笑ってカウンターに戻っていった。 うん、いい人そうだ。 包容力が何処となくある感じだし。 それに飯も美味い。


「もしザリアがイルナみたく家庭的になったら…… まずい、完璧だ。 非の打ち所がない」


本人に聞かれたら面倒なことになりそうだが、生憎本人はいない。 いない事が元凶なんだが。 そんな下らない独り言を呟いていると、思いもよらず隣の隣にいる男が話しかけてきた。


「ザリア、って言った? それは、最近領主に捕まったザリアって女の子かな?」


ぎょっとした顔をし、声の方を向くとフードを被った男が真剣な目をしていた。


「どうなんだ? 君の言うザリアってのは同一人物?」


「何で知ってんだ。 あの時の黒犬の生き残りかテメェ」


言い終わる前に男はこちらに走って寄ってきて、耳打ちをした。


「違う、私はむしろ君の味方だ」


「味方ってどういう事だ。 そもそもなんでザリアの事を知っている」


男は周りを見回し、聞かれてない事を確認するとより小さな声で耳打ちした。


「私はテッカ。 君と同じく、愛する女性が領主の手で囚われの身となってしまった哀れな男だ」

日付を跨いでしまい申し訳ありませんでした……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ