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体術は自動操縦

この世界でのレベルはステータスには直接影響はしないのであんまり気にしてる人はいないです。

「ところで、ザリアはユニークスキル以外にスキルは持ってないのか?」


 スキル構成を考えながら歩いているとふと気になって聞いてみた。


「あーーそれ聞いちゃうかーー。 気になる? 気になっちゃいます?」


 めんどくせえ絡み方してくる…… 気軽に聞いただけなのにこうくるか。


「多少気になっただけだよ。 別に無理して聞き出すつもりはない」


「そこまで言うなら逆に教えちゃうけどね。 じつは〜〜〜、女神は皆スキルポイントの大半を女神としての証でもある『従者』に費やしてるからスキルなんて持ってないのが普通なの! 『従者』は女神に与えられる複数のユニークスキルの集合体の事だけど、その内容はイマイチ私にも分からないわ」


「自分の使ってるスキルが分からないなんて事あるのか?」


 スキル発動には『このスキルを使う』という意思が絶対的に必要なはずだ。


「『従者』を持ってると不思議と大抵の問題には対処できちゃうのよ。 多分スキルのどれかが上手い事やってるんだろうけど、解決は出来てるからみんな気にしないの」


「便利すぎるのも不便だと思うんだよ、俺」


 だって従者を失ったらただの人間以下になるから。 ハイリスクハイリターンな賭けをするつもりはない。


「そういうアナタもスキルポイント1030じゃない! ぶっちゃけそこらの神より上よそれ!」


「じゃあ次は神様にでもなろうかなー。 なりたいって言ってなれるもんでもないか」


「冗談でも辞めときなさい…… あの人たちならやりかねないから……」


 ホラーかよ。 来世は神様確定とか善行積みすぎてると思う。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「っと、別れ道か」


 足跡を辿ると基本的に一つの線だったが、とうとう二つに分かれた。


「片方は濃い、もう片方は薄い、つまりどちらかは大きな都市でどちらかは村。 ザリアはどっちがいい?」


 一応希望をとる。 独断専行は失敗の元だ。


「都市の方がいいわ。 情報も多いし、施設も充実してそうじゃない」


「情報収集するなら大都市か。 図書館なんてのも行ってみたいしな。 それじゃ都市の方で」


 濃い方の足跡を選び、またしばらく歩き続ける。 時々モンスターを見かけたが、見つけられる前に気づけたので全て回避出来たのはラッキーだ。 ザリアは雑魚だし倒せると意気込んでいたけど装備も揃ってない俺らが戦うのは悪手だし、素手での戦闘とか怖すぎて無理だ。


 しばらく歩き日が少し落ちた頃、500m程先にほのかに光る場所が見えた。


「あの明るさ、街っぽくないか! それにこの辺りの足跡も全部そっちに向かってるみたいだ!」


 完全に夜になる前に見つかってよかった。 夕方だからまだ小さな灯しかを点けてないから見つけにくかったみたいだ。 灯でほんのりと認識できる街のサイズは少し小さめか。


「早く向かおうぜ! 小さそうな街だけど、この時間なら宿もとれるだろ」


「待って! 何か、ここの空気が淀んでる気がする…… あの街は、多分だけど治安が良くない、ううん違う、もっと良くない何かがあるわ。 とにかく、間違いなくあの街はろくでもない所よ」


 ザリアが真面目な顔をして周囲を警戒しだした。 俺にはさっぱり分からないが、きっとこれはザリアの経験による直感、証拠は無いけど信じた方が良さそうだ。


「そうか、ならそれを信じよう。 直感は大事だって何すモゴッ」


(静かに! まずい…… 私としたことが反応が遅れた。 最悪よ、私達囲まれてるわ)


 ザリアが小声で耳打ちする。 色んな意味で緊張が走る。


(囲まれたって、嘘だろ…… だって、俺は今も索敵を使ってる! でも生物反応は無しだ!)


(高熟練の《隠密》なら索敵を無効化出来るの! とにかく戦闘準備して! 十数人いる!)


 初めてのマトモな戦闘がリンチとは何ともツキのない男だ。 誰のことかって? 俺の事だよ! 俺が今使える戦闘スキルはCQCと召喚術のファイア、でもこれは魔法陣が必要だから使い物にならない。


(初めて使う《CQC》とかいうネタスキルのみで乗り切れってか!? 無理だそんなの!)


 しかし、ザリアは不敵な笑みを浮かべている。 もしかして策があるのか! いやそうでなきゃ俺に戦えだなんて言わない! 流石は女神様だ!


「今更逃げるなんてもう無理よ。 それに、こういう事態も女神には想定内! コソコソしてないで出てきなさい!! サカキが皆殺しにするわ!」


 こうなるのか!!! 何でそう悪い方向に思い切りがいいんだ!? せめてお前も戦え!! ザリアが叫ぶと、何もないところからぞろぞろと黒装束の男たちが出てくる。 まるで透明マントを脱いだかのようだった。


「全員で11、12人か。 うん、無理だわ。 隠密とかチートくさいスキル使いやがって、俺も後で取得してやる!」


「好きなだけ吠えろ。 お前達がここを生き残れたら、の話だがな」


 そう言ったのは黒装束の男たちの先頭に立つ奴だ。 顔はマスクで全員見えないが、先頭の男だけマスクを外す。 なんとまあ、いかにも悪そうな奴って感じだ。


「その格好を見るに、お前ら初心者か。 ツイてねーなーホント。 ま、死ぬ前にチョットは教えてやる。

 俺達はそこの街の領主様に雇われたコソ泥だ。 ただしニンゲン専門の泥棒だ。 何だか知らんが領主様は生きた人間が大量に欲しいらしくてな? テキトーに人さらってくるだけでポンポン大金をくれやがる。 今までマトモに働いてたのがおかしくなるぜマジ。 なんで働いてたんだろうな俺ってばバカだよなぁ!」


 熱気を帯びていく男の口調だが、段々と男の目の焦点がずれていく。 立っているのもやっとのようで、フラフラとしてきた。 周りの男達もそれに呼応するようにまるで夢遊病のようによろけていた。 よく見ると、彼らの指先がほのかに震えている。 それを見たザリアが顔をしかめる。


「サカキ、こいつら最悪。 匂いじゃ分からなかったけど、クスリやってるわ」


「この世界にもクスリなんてあるのか…… そういうところはどこも変わらんな」


「ハハッ、ホンット、笑いが止まらねぇよなぁ! あれ、俺ってば何でここにいるんだっけ? ああそうだ金のためにここに来たんだった! カネ? そんなもんよりアレの方が欲しいなぁ! ヨーシ、それじゃアレのために大人しくさらわれてくれアワれな初心者サンよぉ!!」


 男達の震えが一斉に止まり、こちらに飛びかかって来た!


「私が半分相手するから、サカキはもう半分をお願い! 二、三人いなしたらスキをついて逃げなさい!」


 ザリアが魔術で煙幕をたき、少しだけ時間を作った。


「なに言ってんだ! ザリアを置いてなんていけない!」


「私も適当に相手したら逃げるわよ! とにかく、この場を乗り切るためには個人で生き残る事が大事よ。 いい、アナタがCQCスキルを取得できたって事は、アナタに大なり小なり体術の技能があったからなの。 自信を持って! CQCなら手首を掴めば何とかなるはず! コレあげるから、後は何とかしてみて! それじゃ、また後で会いましょう!」


「何だこれ、サイコロ? ってちょっと待て、お前スキルなんて持ってないって言ったろ! おい、待てよ!!」


 早口でまくしたて俺の手に六面サイコロを握らせると、ザリアは俺とは正反対の方向に走っていった。


「とっとと来なさい雑魚ども! 返り討ちにしてやるわよ!」


「ッチ、おい、半分で追え。 残り半分でコイツを仕留める」


 リーダー格の男がそう指示し、煙幕のまだ残る中、俺の位置を把握しようと徐々に距離を詰めてきた。


「まずはこの場を切り抜けなきゃザリアを助けに行けない! くそッ最悪だよお前ら! 全員殺す!」


「吠えるなガキが! 生かして持ってこいとは言われてるが、手足の一本無くても問題はねーんだよ!」


 吠えたはいいが、まさしくピンチだ。 武器だって無いし、CQCの心得なんてまるで知らない。 だが、この場における不確定要素が一つ。


「全てはこのサイコロ次第ってか。 いいぜ! 俺の運、試してやるよ!!」


 煙幕が晴れるまであと10秒もない。 サイコロを手の中で強く握りしめる。 だが、俺の予想だとこのサイコロはーー!


[スキル発動認識:対象:サカキ ユイト

 ダイスロールの対象とするステータスを選んで下さい]


「よし、やっぱりか! そして、この状況でザリアがこれを使わせたってことは、『DEX』値の上昇が狙いだ!」


 DEXは敏捷性に関するステータス、つまり回避や反射神経にプラスの補正を望める!


 [認証:対象:DEX 判定開始]


「早くしてくれ! もう煙幕が晴れた!」


「そこか。 神様に祈りは済ませたか? 神様なんていねーがな!」


 リーダーの男がこちらに迫ってくる。 俺の命が尽きるまであと五歩。


 [DEXダイス判定:【5】 Good!! DEX11→13.5! ]


「じゃあな、初心者君。 俺の今日のメシ代に消えてくれ」


 振り返ると、剣が振り下ろされるのがスローモーションで見える。 そう、スローモーションで、はっきりと見える!


(恐れるな! 剣は見えてる、ただ手首を掴むだけだ! 臆すな、前へ出ろ!!!)


「おらぁぁぁぁあああああ!!!!」


「な、このガキッ…… 舐めてんじゃねぇぞクソがぁ!!!」


 振り返る剣を受けるように前へと進む。 しかし、その一歩が俺の死を少しだけ遠ざけ、予想外の反応に驚く男の剣筋を鈍らせる。


「隙ありだこのクソ野郎がぁぁぁあああ!!!!!」


 一瞬剣を振るう腕の筋肉が硬直しコンマ数秒の隙が出来た。 その隙を、今の俺のDEXは見逃さなかった! 手首を掴む事に成功する!

 

 そして、手首を掴んだ瞬間に体が勝手に動く感覚がし、気がつくと男の手首を引き、側頭部に手を当てて地面に叩きつけていた。


「ガハッッッ……!! お前、その見た目で《体術》持ちか、 騙されたぜ……」


 男はそう言い残し気を失った。 それを見た残りの五人に動揺が走るのが分かる。


「何だったんだ今の…… まあいい! お前らもコイツと同じ目にあいたいのか! そうじゃない奴はとっとと失せろ!」


 俺自身よく分からない内に倒していたが、これを利用しない手はない。 案の定、リーダーを倒された衝撃は大きかったらしく、蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。


「っふぅーーーー…… 危なかった、あのまままとめて来てたら負けてたな……」


 今のは恐らくCQCスキルだと思うが、発動条件みたいなのが不明すぎる。 迂闊には使えないのが現状だ。


「さて、ザリアを追うか。 まだ生きてるといいんだが……」

明日も昼投稿です。

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