1話 ルークの場合
ルーク視点です。
〜クロメ村〜
「最近、森の奥で[ポイズンアント]が巣を作っちゃったせいで、お父さん達も狩りができなくって困っちゃってるって話よ」
「そうなんだ、じゃあその魔物を倒したらお姉ちゃん俺とエッチなことしてくれない?」
「もし、君が倒してくれたら村の娘達総出でサービスしてあげるかもね〜。」
「本当かよ姉ちゃん!こりゃあ頑張るしかねぇな!」
「でも本当に行ったらダメよ?魔物は危険なんだから君みたいな子供は危ないんだから。」
「分かってるよ、危ないことはしないって。」
「それじゃあまたねぼく。」
「はいはーい。またねお姉ちゃーん。」
こんちわ。
俺の名前はルークって言うんだが、ちょっと前から旅人みたいなことやってるんだが…。
「ほら、行くよルーク。魔物の場所が分かった。」
「なんだよ、もう行かなきゃいけねぇのか。この村の女の人達美人が多かったんだけどな〜。」
「しょうがないよ、僕たちがここに寄ったのは王都に行く途中の食料調達のためなんだから。」
「分かたよブック。早く旅を終わらせて師匠を見つけないとな。」
「そうだね。ひとまずこの村を助けてから王都に行こう。」
この頭カチカチのお利口さんはブック。
俺たちは師匠を探すために旅をしてるってわけ。
「もう帰ってこれねぇならこの村の女の子全員に手をつけてから行きたかったぜ。」
「そんなこと言って、名前を縛っちゃったらダメだよ。師匠との約束なんだから。」
名前を縛るって言うのは俺のスキルのことだな。俺って実は異世界から転生して来て、神様からありがたいスキルを何個かもらったわけですよ。その内の一つが<相手の本名が分かるスキル>。
この世界は本名を知られると、相手の言うことに逆らえなくなるとか言う、メチャクチャ面白い世界で、見事に俺が貰ったスキルが大活躍ってわけ。
「分かってるよそんなこと。…でもよ、こんな能力があって使えないっていうのはえらく酷なことじゃないか?」
「それでも、約束は守るんでしょ。」
「………そうだな、師匠に言われたんだからむやみに使ったりしないさ。」
俺たちは同じ師匠の元で暮らしてたんだが、ある日師匠が急にいなくなっちまったんだ。
師匠ってば、この世界でほんの少ししかいない魔法使いらしくて、元偉大な魔導士様だって話だよ。
「お前だって、魔法使ってねぇだろうな。」
「僕は使ってないよ。師匠との約束だからね。」
実はブックも魔法使いなんだよ。しかも、タチの悪いことに師匠直伝の魔法を使いやがるから、相当すげえ魔法使いになることはもう確定だろうな。
「て、魔物はどこなんだ?やっぱり森の中か?」
「うん、そうみたい。廃坑の中に巣を作ってるんだって。」
「この村から離れてるんなら、多少暴れても被害は出ないだろ。」
「そうだね。この村の人たちにはとても世話になったし、早く安心して暮らせるようにしてあげなくちゃ。」
「行くぞブック!もたもたしてたら日が沈んじまう。」
「のんびりしてたのはルークじゃないか!て、本当に置いて行かないでよ!」
俺たちは魔物を狩ったりしながら旅をしてるんだが、魔物の素材っていうのは本当に高く売れるんだなこれが。そのおかげで金には困ってないんだが、王都に行くまでは周りに人がいなさすぎる。この村も2.3日歩き回ってやっと見つけた村だから、もっとゆっくりしてたかったんだがな。
〜クロメの森〜
日本にいた頃に見た蟻んこを人間サイズにしたみたいな魔物が、廃坑の入り口からわらわら出て来やがる。
「ほい!よいしょ!」
と言っても動きがノロすぎて噛み付いてくる動作がスローモーションみたいに見えるんだよな。
グシャッ、ザシュッ!
俺は蟻の上に飛んでから、カウンターに錆びついた大剣を脳天めがけて振り下ろす。
ジジジッ、ジギジジギィィィ
「うおっ、やっぱり魔物の断末魔ってのは嫌な音だねぇ。」
俺が振り回してるのは、俺の体と同じぐらいある大剣なんだが、なんで俺がこんな大剣を持てるかっていうと、これもスキルによるところが多いんだよな。俺がもう一つ持ってるスキルは[とにかく力が湧き出る]って言う単純明快なスキルなんだが、戦闘以外では全く役に立たないんだよな。
「しょうがないよ魔物だって生きてるんだから。」
「でも、そんなこと考えてたら魔物の討伐なんてやってられないだろ。」
「それもそうだね。」
そう言ってブックは目を瞑って両手を廃坑の入り口に向ける。
「ティナフレア!」
ブックが叫んだ瞬間、ブックの手のひらから火の玉が出て来て、一直線に廃坑の入り口に飛んで行った。
バンッッ!!
ギイギギギィジジギィ!!
ギジギギギイギギギィジジギィ!!!
ギジジギィ!
すごい爆発が俺もろとも蟻を巻き込んで行く。
俺は寸前のところで爆風から逃げ出した。
「うおう!爆発魔法使うなら先に言ってくれよ!」
「ごめんね、でもこれで廃坑の奥まで進めるようになったでしょ。」
「俺もいるのに爆発魔法使うとか殺す気かよ!もう使うんじゃねぇぞ!」
今確実に避けてなかったら、それなりのダメージ受けてたからな!
「それでもルークは避けれるでしょ?」
「まぁ、避けれるけどだな。」
「なら大丈夫だね。」
そういえばこいつはこういう性格なんだよな。
「はぁ、もういいよ。お前のそういうところは昔から変わんねぇからな。」
そうして俺たちは穴の中へ入って行った。
そのまま進んで行くと、奥に大きな空洞があることが分かった。
「どうやらボス部屋到着らしいですな。」
「まだ出来て日の浅い巣で良かったね。」
もっと大きな巣なると、ダンジョン化して迷路みたいになっちゃうからな。
ジュギュジュルギュギュギ!!!!!
「お、ボス自ら登場ですか!」
俺たちの声に反応したらしく、奥からボスらしき奴が出て来た。
「名前にはなんて書いてあるの?」
スキルを発動して、ボスの名前を確認する。
「[ポイズンアントクイーン]としか出ねぇや。名前持ちじゃないならあんまり強くないな。」
「あんまり油断しちゃダメだよ、名前がないからって一応親玉なんだから。」
「分かってるよ。」
俺たちの3倍はありそうな巨体が、勢いよく飛びかかってくる。
「それでも、今回は俺一人で十分そうだな!」
俺は剣を構えると俺に体当たりしてくるようにボスが飛び込んできた、が。
「軽いなこのデカブツ。中身スカスカなんじゃねえの?」
俺は蟻の足を持つと地面に向かって叩きつけた。
ギギキィッ、ギィ…
その一撃だけで魔物は虫の息だ。
……今俺上手いこと言った?
「それじゃあ、これでトドメ!」
俺が剣で魔物の頭を貫くと、全く動かなくなった。
「討伐完了、やっぱり雑魚だったろ?」
そう言って俺が散らばった素材を回収していると、背後で物音が聞こえた。
「ティナボルト!」
ギィギィィィッッッ…
鋭い音が走った後、ボスの断末魔が背後から聞こえた。
「うわ、まだ死んでなかったのかそいつ。」
「だから油断しないほうがいいって言ったでしょ!」
「でも、お前が倒してくれただろ?」
「それは、そうだけど。」
「俺のピンチはお前が救ってくれ。お前のピンチは俺が救ってやるから。」
「そんなこと言ったって僕が助けられないことがあるかもしれないじゃないか。」
「お前に助けられないなら、誰にも助けられねぇよ。
そう言って俺は素材の回収を再開した。
「信頼してくれるのは良いけどさ、できれば安全に越したことはないんだけどな。」
ブックは最強の魔法使いの弟子だからな。
そうして俺たちは廃坑を出て、次の村を目指し始めた。
「あーあ、もう一回でいいからあの村の姉ちゃん達と遊びたかったな。」
「ダメだよ、こうしてる間にも王都にいるっていう魔法使いがいなくなっちゃうかもしれないんだよ。」
俺たちが王都を目指すのは、最近王都に大魔術師とかいうクソ怪しい存在が現れたからだ。
「分かったよ、その魔法使いがもしかしたら師匠かもしれないしな。」
そうして、俺たちは王都を目指して旅を続ける。
早く師匠に会いたいしな!
ゴールデンウィークは休みが多くていいね。
捗りますわ( ̄▽ ̄;)