1話 ブックの場合
ゴールデンウィークだし1話目投稿しちゃいました。
〜クロメ村〜
「最近村の近くの森に[ポイズンアント]が巣を作っちまってな、ろくに狩りもできねぇで困ってるわけよ。」
「じゃあ、その魔物を倒したら村の皆さんは大助かりってわけですね。」
「ああ、最近は王都から離れすぎてるっていうことで、ギルドの冒険者が全く来なくなっちまってな、どうしようもなくて困ってんのよ。」
「そうですか。どこらへんに巣があるとか分かりますか?」
「確か森の奥の廃炭鉱に巣を作っちまったおかげで、村にまでは来てねぇんだけどよ。このまま巣がでかくなっちまったら、ここの村も危ねぇかもな。」
「わかりました。それじゃあちょっと行って来ます。」
「え?お前さん、まさかポイズンアントのところに行くんじゃねぇだろな!お前さんみてぇな子供が好奇心で行っていいような場所じゃねぇぞ!」
「大丈夫ですよ。心配しないでください。ちょっとそこまで害虫駆除に行くだけですから。」
こんにちは。
僕は旅人のブックです。
「ほら、行くよルーク。魔物の場所が分かった。」
「なんだよ、もう行かなきゃいけねぇのか。この村のお姉さん達美人が多かったんだけどな〜。」
「しょうがないよ、僕たちがここに寄ったのは王都に行く途中の食料調達のためなんだから。」
「分かったよブック。早く旅を終わらせて師匠を見つけないとな。」
「そうだね。ひとまずこの村を助けてから王都に行こう。」
「はいはーい。」
この気だるそうなのがルーク。僕と一緒に旅をしている家族みたいなものです。
僕たちは、僕たちの師匠を探すために旅をしているわけです。
「もう帰ってこれねぇならこの村の女の子全員に手をつけてから行きたかったぜ。」
こんな口調をしていますが、僕とルークはまだ7歳です。
「そんなこと言って、名前を縛っちゃったらダメだよ。師匠との約束なんだから。」
「分かってるよそんなこと。…でもよ、こんな能力があって使えないっていうのはえらく酷なことじゃないか?」
ルークは異世界から転生して来たらしく、神様からもらった能力を使って他の人の本名が分かるんだとか。この世界では本名を知られてしまうと、その人の言うことに絶対従わないといけないわけですから、最強の能力を持っているわけです。
「それでも、約束は守るんでしょ。」
「………そうだな、師匠に言われたんだからむやみに使ったりしないさ。」
僕たちは同じ師匠に育てられました。師匠は元偉大な魔術師様らしくて、今ではほとんどいない魔法使いです!
「お前だって、魔法使ってねぇだろうな。」
「僕は使ってないよ。師匠との約束だからね。」
ついでに言うと、僕も魔法使いだったりします。
「場所はどこなんだ?やっぱり森の中か?」
「うん、そうみたい。廃坑の中に巣を作ってるんだって。」
「この村から離れてるんなら、被害は出ないだろ。」
「そうだね。この村の人たちにはとても世話になったし、早く安心して暮らせるようにしてあげなくちゃ。」
「行くぞブック!もたもたしてたら日が沈んじまう。」
「のんびりしてたのはルークじゃないか!て、本当に置いて行かないでよ!」
僕たちは旅をしながら魔物を討伐しています。討伐した魔物の素材は高く売れるので、良い旅の資金になるからお金にはあまり困りません。その上、村の人の手助けになるなら一石二鳥ですからね!
〜クロメの森〜
「ほい!よいしょ!」
グシャッ、ザシュッ!
ルークが軽い身のこなしでポイズンアントを切り倒していきます。
ジジジッ、ジギジジギィィィ
「うおっ、やっぱり魔物の断末魔ってのは嫌な音だねぇ。」
ルークは他の人の本名が見えるということ以外にも、とても力が強いと言う能力を神様に貰ったそうです。強くなろうと思えば、いくらでも強い力になるんだとか……。
「しょうがないよ魔物だって生きてるんだから。」
「でも、そんなこと考えてたら魔物の討伐なんてやってられないだろ。」
「それもそうだね。」
そう言って僕は魔法の詠唱の準備をします。
「ティナフレア!」
僕が魔力を込めると、僕の手のひらの魔力が火に変わり始めます。そしてそのまま火の玉が僕の思い通りにポイズンアントの群れに飛んで行って当たる寸前で大きく爆発しました。
バンッッ!!
ギイギギギィジジギィ!!
ギジギギギイギギギィジジギィ!!!
ギジジギィ!
廃坑の入り口に向けた爆発魔法が多くのポイズンアントを巻き込んで行きます。
「うおう!爆発魔法使うなら先に言ってくれよ!」
「ごめんね、でもこれで廃坑の奥まで進めるようになったでしょ。」
「それでも穴の中で爆発魔法使うとか自殺行為かよ!もう使うんじゃねぇぞ!」
「分かったよ。次からは別の魔法使うね。」
「それなら良いんだよ。」
そのまま進んで行くと、奥に大きな空洞があることが分かりました。
「どうやらボス部屋到着らしいですな。」
「まだ出来て日の浅い巣で良かったね。」
もっと大きな巣になると、ダンジョン化して迷路みたいになっちゃうんです。
ジュギュジュルギュギュギ!!!!!
「お、ボス自ら登場ですか!」
僕たちの声に反応したみたいで、奥の方からポイズンアントの親玉が出て来ました。
「名前にはなんて書いてあるの?」
「[ポイズンアントクイーン]としか出ねぇや。名前持ちじゃないならあんまり強くないな。」
「あんまり油断しちゃダメだよ、名前がないからって一応親玉なんだから。」
「分かってるよ。」
自分達の3倍はありそうな巨体が、僕たちに飛びかかって来ます。
「それでも、今回は俺一人で十分そうだな!」
ルークはその巨体を錆びついた剣一本で受け止めます。
「軽いなこのデカブツ。中身スカスカなんじゃねえの?」
ルークはそのままクイーンの足を持って地面に叩きつけます。
ギギキィッ、ギィ…
その一撃だけでクイーンはボロボロです。
「それじゃあ、これでトドメ!」
ルークが剣をクイーンの頭に突き刺して、クイーンの動きは止まりました。
「討伐完了、やっぱり雑魚だったろ?」
そう言って散らばったクイーンの素材をルークが回収していたところで、クイーンがルークの後ろから襲いかかろうとしているのが分かりました。
「ティナボルト!」
ギィギィィィッッッ…
魔力を込めた雷がクイーンに直撃すると、クイーンが断末魔を上げながらプスプスト音を立てて死にました。
「うわ、まだ死んでなかったのかそいつ。」
「だから油断しないほうがいいって言ったでしょ!」
「でも、お前が倒してくれただろ?」
「それは、そうだけど。」
「俺のピンチはお前が救ってくれ。お前のピンチは俺が救ってやるから。」
「そんなこと言ったって僕が助けられないことがあるかもしれないじゃないか。」
「お前に助けられないなら、誰にも助けられねぇよ。」
そんなことを言いながら、ルークは素材の回収に手を戻しました。
「信頼してくれるのは良いけどさ、できれば安全に越したことはないんだけどな。」
そうして僕たちは廃坑を出て、次の村を目指し始めます。
「あーあ、もう一回でいいからあの村の姉ちゃん達と遊びたかったな。」
「ダメだよ、こうしてる間にも王都にいるっていう魔法使いがいなくなっちゃうかもしれないんだよ。」
僕たちが王都を目指す理由は、最近王都に現れた大魔術師に会いに行くためです。
「分かったよ、その魔法使いがもしかしたら師匠かもしれないしな。」
そうして、僕たちは王都を目指して旅を続けます。
いつかまた、師匠に会うために!
ひとまず読者1号が現れるのを楽しみにしながら投稿していこうかな( ̄▽ ̄;)