タイヤの指輪
「な・・・なぜだあああっ!」
トラルティールの公園・・・
金剛石の指輪を、科学導師の若い女性に渡そうとした貴公子が、絶叫した。
彼は、ウズドガルド大公の弟という身分のレナルド・ウズドガルドだ。
当の女性だが・・・
黄金騎士の少年が渡した、「タイヤの指輪」を見て「石化」している。
そして・・・
「ぷくく・・・ぶわっははは!」
突然、笑いだした。
「あ・・・あなたは・・・わかってるな!私の趣味を!
宝石なんぞ、おもしろくもなんともない!
そんなもの、欲しければいくらでも、キティルハルム産の産業用のものを購入すればいい!」
レナルドは、絶句した。
「彼女は、「総合導師」ですよ。宝石なんぞには、その程度の興味しかお持ちになることは、できないでしょう。
彼女の趣味である「総合学」を語って聞かせて、興味を持たせたのは見事です。
しかし、彼女の服装をみてください。」
彼女・・・
アルナス・ライテスは、白衣を騎士服の上に羽織っているだけ。
髪はぼさばさで、かざりっけなどない。
「わかってるじゃないか!
さあ!
報告だ!
父上のところへ行くぞ!」
アルナスは、彼・・・カイレスをひきずっていく。
十五年後・・・
キティルハルム王宮・・・
「にゃーははは!
「タイヤの指輪」・・・最高だにゃ!」
ナキが、バカ笑いしていた。
「だろう?」
いうと、アルナスは指輪を見せる。
「ほほお・・・
凝ってますね・・・
ドレッドパターンまで、びっしりと・・・」
ミリアムが言った。
「私には、金剛石なんぞ、研究の材料にすぎん。
こうした物を贈られたほうが、「愛」を感じるのさ・・・」
アルナスの微笑みは、優しかった・・・