4つの末路
ある所に、魔王に支配されて混乱に飲まれた世界がありました。
「カイ……今だ……!!俺達に出来るのはここまでだ、これだけ弱らせたら……お前でも倒せるだろう……!!」
「ふっ……バカな事を抜かしおるわい、我は屈しぬ!!勇者になど敗れぬわぁ!!」
立派な髭を蓄え立派な角を生やした魔王ですが、高そうなマントも杖もボロボロです。今なら子供でも倒せるに違いありません。
「ぼ……ぼ……」
カイと呼ばれた、立派な金の髪と立派なマントを纏い、輝く剣を握った女の子はガタガタと震えていました。
流石の魔王も引き際だと自覚しているのか、動こうとはしません。
しかし……
「僕には出来ませえぇぇぇん!!」
カイは剣を自分の胸に突き刺し、死んでしまいました。
カイのあまりのヘタレさに、その場にいた魔法使いや戦士、更には魔王までもが「ないわー」と呟きました。
またある所に、魔王の復活により終わるハズの世界がありました。
しかし……
「これがマオーが封印されてる岩ですか……」
海の様な青い髪の、白衣を着たぼけーっとした女の子が魔王の封印された岩に近づき……
「あぶないから壊しておきましょう」
爆弾で壊してしまい、世界は終わりを迎えなくなりました。
またまたある所に、選ばれた人が魔王を倒さなければいけない儀式がある世界がありました。
けれども、この世界は万年平和が約束されています。正直言って倒しても倒せなくても挑みさえすれば良いのですが……
「くっそぅ!!どうしてそこで死ぬんだよそこで!!もっと熱くなれよぉ!!」
それにかまけて魔王も倒さず、家で動画ばかり見ている赤いショートヘアの、万年ジャージのニート女がいました。
「……ひっく、なんで勇者来ないのぉ……えぐっ」
魔王は真っ暗な所にひとりぼっち。寂しくていつまでもいつまでも泣いていました。
またまたまたある所に、魔王のせいで滅亡寸前の世界がありました。
魔王は絶世の美女でした。
「……ようこそ……我が城へ……」
魔王の前には、紫色の髪をなびかせ、黒く大きな甲冑に身を包んだ女騎士がいました。こちらの方が魔王の様です。
女騎士は魔王の手を取りました。
「お姉さんみたいな人が魔王なんてありえない!!それにとてもワタシ好みの外見だ!!ぜひワタシと結婚してはくれまいか!!」
「……はい……」
こうして勇者は世界を滅ぼし、魔王と仲良く暮らしましたとさ。
「__ふざけるなぁ!!なんで最近の勇者はまともなのがいないの!!つーか最後の何!?魔王側行ってるじゃないか!!」
アホ毛が特徴的な筆の様な髪の女の子はバン、と机を叩きました。血の色をした液体がコップから溢れます。
「……と言われましても、ねぇ……」
お付きの黒騎士は呆れ顔で後片付けを始めました。
「最近変な世界が多いですから仕方ないでしょう?」
「うるさいやい!!……こうなったら、徹底的に教育してやる!!世界が……ボクが黙っちゃいられないよ!!」
女の子は何も映さないモニターを睨んでから、叫んだのでした。