街を探せば、迷子かな
街を探して右往左往するつもりが…
師匠もこの世界に居るならば、会えるはず。
ただ人探し…となると、街か都市の方が情報も集まりやすいだろう。
女の人をたらしこんでヒモになってても、おかしくは無い…悲しいことだが。
いや、それ以上に借金作られたら地獄だ…
前に借金返済を催促しに来た男に、妙に気に入られたんだよな…
で、一服盛られそうになったっけ…
あーヤダヤダ、思い出したくないってのに…
念のため確認すれば、魔法は使える。
持ち物は杖とウェストポーチだけだ。
そういえばカバンは…テーブルの上だから、持ってこれなかったのだろう
カバンには飲み物や食べ物の他に、造り出した宝石や加工した装飾品が入っているのだ。
売れば金に成るのに…
そもそもこんな森の中では換金も無意味でしたよ
周辺を狼に取り囲まれて居た。
火グマの死体を魔法で吹っ飛ばせば、そちらに食い付いた。
その隙に、命からがら逃げ出せた。
よくよく考えれば、べリスの住んでいた周辺しか私は出歩いていない。
いくら魔法が使えても、命の危機…なんて感じたことは無かった
平和って尊いですよ
だからこそ、今が危険なんだけどさ…
森を突っ切ったら、街道に出れた。
轍があるから、馬車も通るだろう
…まぁ、お金が無いから、乗せてもらえないだろうけど
「どっちに行きましょうかね」
原始的だが、杖を地面に突き刺して、倒れた方向に向かうことにした。
…右か
延々と日が暮れるまで歩き続けたと言うのに、馬車も人も通りやしない…
左に行くべきだったか?
街道周辺は整地され、樹も伐採されたのだろう。
多少街道からは離れてしまうが、樹上に登る。
「お腹減ったなぁ」
何せ、朝食べたきりだ
木の実とか有りませんし、おすし…あぁ、お寿司食べたいんだけど
ポーチをあされば、出てきたのは金貨銀貨が数枚と小型爆弾の類い
食べ物は…チョコと、入れた覚えの無い怪しげな飴玉が数個…
眩しさを感じて、目が覚めた。
朝の…5時は回っているだろうか
街道を行く馬車が樹上から見えた。
他の影も…
え、えっ?なに…あれ、盗賊か?
御者を切りつけて蹴落とした。
数人で表れた賊は、馬車ごと奪い、直ぐ様去って行った。
「うっわ、あれ…だいぶ手馴れてるな」
御者は無事だろうか?
盗賊がみえなくなって樹から降りて、近付いてみた。
青年は、辛うじて生にしがみついていた。
「…おにーさん、お時間有ります」
そう声かけしてみれば、死にかけ青年はこちらに視線を向け…いや正しくは睨み付けられているのだが…まぁ、盗賊に遭遇した直後じゃ胡散臭さ割増しも仕方ない…のかなぁ
「おにーさん、商人に雇われてたの?」「…そうだ」
首の辺りを切り付けられているせいか、話しにくいのだろう
「おにーさんが来た方向と進行方向…どっちが街に近い?」
そう問えば、進行方向を指し示した。
適当にポーチから取り出した飴のアイテム効果を視る…
やっぱ師匠作だけあって、初っぱな誘惑と出ていた飴を粉々にしていた。
砕けた飴の構成と効果を書き換える…
血止め(+体力回復)
よし上手くいった。
じわじわと体力回復出来る素敵な飴ちゃんを、おにーさんの口に突っ込んだ。
無理矢理だからか…多少暴れられたが、生死が掛かってるぞ、と告げればおとなしくなった。
「お前…魔術師か」
「んー…似たようなもんだけど、厳密には違うし…まぁ、そもそも見習いだし」
「それで見習いなら、隣国の生まれかお前」
「いや、もっと遠いと思うけど…」
「お前…捨て子じゃ無いだろうな」
「何それ?失礼…
そもそも師匠の実験が失敗したせいだっての!!
あーもー…ほら、行くよ」
「歩きで行くつもりか?何日かかると思ってるんだ」
「知るか。いきなりだったから、実質一文無しなんだよ」
「捨て子じゃないなら、家出したのか?お前」
「だーかーらー、違うってば」
「まぁ、乗り合い馬車の金くらい出してやるよ!助かったしな」
「うん、あとで働いて返すわ」
「お前…人の厚意をなんだと思ってんだ」
「他人の優しさには裏が有りすぎるから、警戒しすぎるくらいがちょうど良いんだと…」
「はっ、なんだ…師匠とやらの受け売りか?」
「いや…師匠を見ていて学んだ事だ」
「…お前、苦労してんだな」