青春の炎とは別物です
ここは何処だろうか…
かつて召喚された自宅のリビングではなく、鬱蒼とした森の中…
周囲を見渡しても、師匠の姿は無かった…
問い質すことも、文句を言うことも出来ない
けれど生き抜くうちに、会うことも出来るだろう…
枯れ枝を踏んだ音がして、後ろを振り向く。
それなりの太さある樹が熊によって、薙ぎ倒されていた。
熊の背には、赤々とした夕日…ではなく、炎が煌めいている。
…ヒグマならぬ、火グマである
「えぇぇ…そりゃないよ」
杖を手にしているのに、普段感じる違和感…もとい精霊と結んだ契約の指環の存在が、あーら不思議…無くなっていた。
3年分の努力の結晶が、証明が…
でも、ここに精霊が居るのは確かだ。
水場…川へ辿り着いた。
「どこぞの浜辺での追いかけっこだとしても、クマはお断りだっての」
一定の距離を保ちながら、付いて回る火グマは川に入るのを躊躇っているように見えた…が、助走を付けて中州近くまで飛び掛かってきた。
「…ちっ。風よ逆巻け」
杖から風が溢れて、勢いよく水と砂利を巻き上げながら火グマに襲い掛かった。
クマは空高く舞って、落下…グシャリと叩き付けられて、川がにわかに紅く染められていた。
「何だ…これ、可笑しいだろ」
そもそも魔法の存在しない日本から異世界に連れてこられ、魔法を使えるようになっているが、魔法の使用方法は精霊との契約によって引き出していた。
契約は無効となったのか、証となる指環は無い…にも関わらず、これ程の威力は本来なら出せないはずだ。
精霊の力自体がこっちのが強いのか、それとも精霊との相性が良いのか…単なる異世界クオリティってヤツか
もしここで死ぬようなことが有れば、借金返済に追われずに済むかもしれない
よくよく考えれば、何で師匠の借金私が返してんだよ…