■キーワード8 『水』
バトン回答、および記録。
■キーワード8 『水』
「乾いて乾いてたまらないって顔をしている。もう何日、水も飲んでいないか覚えているか? そうだな、……1週間? いや……そんなに経っていない、せいぜい3日だ。でも気温は高いし、体内時計的にはそのくらいに感じるのも無理はない。じゃ、2人とも頑張るんだ。ん、何を期待していたのか、お願いって何だ? いや、私はお前達を屈服させる気はない。渇きに耐えられなくなったら死ぬだけ。それだけだ」
どうやら相当恨みがあるようで、乾きで2人を逝かせる方法のみを求められた。
乾いて乾いて堪らない、死ぬその時まで、同じ苦痛を教えてやりたいらしい。
どうして渇きにこだわるのか。
わからないが依頼主はどうも水さえも知らず、歩く事も出来なかった。
生まれてきて知ったのは、求めても求めても、満たされない渇きという答え。
それはそれは、幼い幼い依頼者。
しかし意外と時間が掛かる方法だ。
それでも時間は数えきれないほどあるし、終えるまでに飢え死ぬほど私は乾いていない。
私は喰うのを止めたら、渇き死ねるのだろうか?
その発想はなかったし、試してみる気もないのだが。
のんびり、干乾びるその時まで待つ。
従属や屈服を望んでいるわけではなく、最後はそれによる死だけなのだから。
まだ女も男も元気だ。
ごちゃごちゃ交渉しようとするが、応じる気はない。
いや、たまに応じたフリをして、数滴の水を与えてやる。
それだけで生命の神秘か体が持ち直し、故に苦しみの時間は倍に伸びる。
たった一滴を得る為に、お互いを傷つけるようになる。
僅かに得た潤いは、逆に乾きの感覚を研ぎ澄まさせ、貰えなかった者は恨みを募らせる。
延ばして、のばして。
待っても来ぬ救い。
それでも死が長い間来ぬように引き延ばして、丁寧に渇きと恨みを植え付ける。
続きます。