■キーワード6 『無』
バトン回答、および記録。
■キーワード6 『無』
「傷つけないように。そっと閉じ込めただろう? 誰も邪魔が来ぬように扉には鍵をしたぞ。暴れぬようにゆっくり足の腱を切り、鎖を絡めてやるから。それだけで騒ぐのか。誰も知られぬようにせねばならないと言ったのはお前だろうに。なら、叫ばぬように喉を焼いてやろう。まだまだかかるが、な。おや、何を泣いている? ああ、泣かないように瞳を奪ってやろう。そうか、そう言えば、このまま生きて考えるのも感じるのも辛いと言っていたな。なら頭をいじって何も感じないようにして。さあ、どうだ、不満なんてもうないだろう?」
自分を自分で殺せないからと言って、私を呼び出すものも多い。
そんな奴らの大半が、苦しまないようにと言うのだが。
そう言う輩には最大限努力をしようと約束する。
だがな。
死ぬ事が苦しくないはずがないだろう。
お前を生み出すために、苦しんだ者が居るのだから。
同じ程度には死ぬ時が苦しいのが当然だと思うのだが。
それでも約束に従い、私の中では一番優しく扱い、閉じ込める。
この辺りで、やっぱり生きていたいなどと戯言を抜かす余裕はある者は多い。
ただ私は余り冗談は好きではないので、口を閉じさせる。
何かを言いたげに泣こうとするから、このまま生きて、考えるのも感じるのも辛いと言っていたのを思い出し、早目に何も感じないようにしてやるのだ。
我ながら親切な事だ。
暫く弄んだその頃には命と呼べるモノはここに無く、私はそれを飲み込む。
このケースばかりは残念ながら、なかなか満足とはいかない気がする。
冗談に付き合ってやらないのが悪いのかも知れないが、そこまでのサービスは完備していない。
が、依頼は果たしたので、ちゃんと喰わしてもらっているのだがね。
本気でないなら、死など望むモノではない。
ご利用は計画的にとはよく言ったものだ。
そうそう。私はどうやって生み出されたかなんて知らない。
ロクな生まれ方はしていないだろう。
血も肉も、痛覚もある。だが喉も乾かず、見えない者が大半。
こうなれば人間ではないだろう。
だからといって何も問題はない。
続きます。