■キーワード2 『月』
バトン回答、および記録。
■キーワード2 『月』
「その美しい顔に深い傷を入れてやろう。美しく輝く月も良く見れば恐ろしいほどに醜い傷を帯びている。そんな傷を入れられても、あの月のようにお前が輝いていられるか……見物だな」
もう数えきれない人数を狩った。
そして対価に魂を喰う。
変わらない日常に呼び出され、私が貶めようとした女は綺麗な銀色をしていた。
初めはどんなに気位が高くても、最後には大抵、泣きわめいて醜態をさらす。
だが。
今回の娘は、傷つけても傷つけても、何処までも美しかった。
……あの事を詫びません、媚びません。
どこまでも気高い娘、言い訳もしないし、命乞いもしない。
どういう経緯で私を呼び出すほど恨まれたのか。
そんな事は知った事ではない。
私は考える限り、最もみじめで哀れな姿で逝かせてやった。
それで依頼主は満足し、私に喰われた。
だがあの娘の目は、最後の瞬間までも死んでいず、美しかった。
憐憫は露ほどにも沸かない。手抜きはそれこそ不敬だ。
良い見物だった。
私は珍しく敬意を持って、獲物を逝かせた事に充足感を憶えた。
いつもこうあれば、狩りも楽しかろうと考える。
まあ、こんな事は稀で、大抵は汚いだけだ。
自分が堕ちたからとて、そう恥じずとも良い。
さあ、逝こうか。
続きます。