■キーワード9 『火』
バトン回答、および記録。
■キーワード9 『火』
「煙にない所には火を放ち、災いは撒けば面白いように生えてくる。生えてきたそれは、幼い火種を劫火にまで育て、お前の身を必ず焼く。その背に刻んだ印は、どんなに誤魔化そうと絶対に消えない。それはお前の心をも焼き、死ぬまで燻り、灰となって尚、お前を穢し狂わせる。忘れる事は許さない。真っ黒で真っ暗な中、お前は間違うだろう。キラキラと光るそれを助けと思って縋る。だがよく見ると気付く。それは火の欠片で、掴んだ己が身を更に焼く絶対的な絶望を示す炎となりその身を襲うのだよ」
初めは爪の先から。じわじわ、じわじわ。
次第に範囲を広げる。
そして権威を誇張した服が皮膚に張り付く。
それも融けて、髪が焦げ、性別までわからなくなった肢体。
火のない所に煙を立てて、傲慢な生きてきた生に終止符を打つ準備を。
その伸ばした手に火が覆って、全身が火に狂う。
焼身で死ぬのは難しい。
生きた肉はなかなか焼けないからだ。
中までしっかり火を通すには、ジワジワ焼かなければダメだ。
皮膚が焼けて、皮膚呼吸が出来なくなり、体の酸素が薄くなり過ぎないように気を使う。
その更に苦しむ上から火を纏わせて。
飲み込んだ空気が肺を焼き、絶息させないように、焼き上げるのに数時かかった。
まだ内臓のある体幹は焦げつつも生きていて、意識はある。
命が助かるギリギリで、腕や足はなかなか美味そうに焼けた。
ただ私に食人の癖はないので遠慮させてもらい、その辺で依頼者の魂をいただく。
食事の後、何とか取り繕おうとする視線を一喝し、一気に消し炭にして処理した。
依頼者が先に逝き、もしかして助かるのではと思っただろう一瞬に、目を見開きながらそれは灰になる。
絶望の淵で糸を垂らすと、目を輝かして縋る、それは誰でも同じ。
その目をしながら自分が逝かされるとは思っていなかったのだろう。
そうやってやっと塵と灰になって死んでも尚、行く先には地獄の業火が待つ。
灰は趣も無く、一瞬にして手の中から消え去り、私に何の余韻を残す事もなかった。
次が最後のキーワード。




