目隠しの友達
僕には目を布で隠している友達がいた。
「どうしていつも目を隠しているの?」
と聞くと
「いろんなものが見えすぎるから」って言うんだ。
「目が見えないから大変だね」って言うと
「見えない方が楽なんだ」って言う。
僕と友達は毎日一緒に遊んだ。
砂でお山を作ったり、ピアノを引いたり、おにごっこをしたり、縄跳びをしたり。
僕のたった一人の大切な友達。
ある日僕は友達をつれて星がよく見える丘に行った。
「お星さまがいっぱい見えるよ。きらきらしててとても綺麗なんだ」
僕が目にしているものを友達に伝えた。今なにを思いながら星を見ているのかも一緒に伝えた。
そうしたらね、友達は
「見てみたいな」って言ってくれて、目隠しを外してくれたんだ。
「ほんとうだ。綺麗だね」
友達の目は開いていなかったけれど、とびきりの笑顔がお星さまみたいにきらきらしていて、僕はとても嬉しかった。
それから僕はもっともっと友達のきらきらした笑顔を見たくて、いろんなところへ行って、僕の見たことをいっぱい話した。
でも、「今度は海に行こうね」って約束した次の日に、友達はどこか遠くへ行ってしまうと聞いた。
僕はすぐに友達の家へ駆けつけた。
「ねえねえ開けて!どこかに行っちゃうって本当なの?」
僕は何度も何度もドアを叩いた。
しばらくすると鍵を開ける音がして、友達が出てきた。
「僕、引っ越しちゃうんだ」
友達は鼻を赤くして言った。
「そんなの嫌だよ。ずっと一緒にいたいよ」
「ボクだって。海にだって行ってみたい。でもずっとここにいちゃダメって、周りの人が言うんだよ」
そんな。
「うわああああああああん」
僕は大泣きした。とってもとっても寂しかった。友達がいない生活なんて考えられなかった。
そんな僕の頭を僕より小さい友達は涙をこらえてずっと撫でていてくれた。
「泣かないで。遠くにいても僕たちはずっと一緒さ。ボクと話をしたくなったら、外に出てお空を見上げていて。それで喋りかけてほしいんだ。そしたら君に手紙を書くから」
「うん。」
「ボクはいつだって君のことを見守っているよ」
そうして友達はどこかへ行ってしまったんだ。