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「月が綺麗ですね」その一言の為に世界を壊した。蜘蛛を助けた極悪人と、彼を数千年も探し続けた女神の、地獄から始まる転生純愛物語  作者: 月神世一


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13/16

END

光が弾け、世界は一度、無に帰した。

神がいなくなり、全てを自分達で選択し、生きる時代が始まったのだ。

人々や生物達は、与えられることのない日々に、先の見えない暗闇に怯え、恐怖し、迷う……そんな残酷な世界になったのだろうか。

――いや。

そうだろうか。本当にそんな世界になったのだろうか。

今まで誰かの掌の上で生かされていただけの命が、初めて自分達の足で地面を踏みしめる世界が始まったのだ。

転んでも、誰も助け起こしてはくれないかもしれない。

けれど、立ち上がる痛みも、前に進む喜びも、全てが自分自身のものとなる世界。

恐怖しながらも、一歩ずつ。

自分達の意思で、明日へと進む世界。

そして、ふと足を止めて空を見上げ、

「綺麗だ」と、心から思える……そんな、のんびりと月でも眺める世界が、きっとやってくるはずだ。

           *

数え切れぬほどの星霜が流れ、とある夜の道端にて。

一人の青年が、ため息混じりに歩いていた。

その名札には、皮肉にもかつて消え去った神の名残か、月神つきがみ 世一よいちと記されている。

「はー……今日もついて無いな」

仕事での失敗か、あるいは日常の些細な不運か。

彼は肩を落とし、ふと夜空を見上げた。

そこには、雲の切れ間から覗く、透き通るような満月が浮かんでいた。

その美しさに、日々の鬱屈が少しだけ晴れるような気がして、彼は独り言つ。

「……あ~、今日は月が綺麗だ」

その時だった。

背後から、鈴を転がすような、どこか懐かしい声が掛かった。

「こんばんは」

世一は振り返る。

そこには、夜の闇に溶けそうなほど白い肌をした、美しい女性が立っていた。

初めて会うはずなのに、なぜか魂が震えるような、強烈な既視感。

「は、はい。こんばんは」

世一はドギマギしながら返事をした。

彼女は、世一の顔を愛おしそうに見つめ、それから彼と同じように夜空を見上げた。

そして、かつて交わした約束を確かめるように、あるいは、遠い昔に伝えられなかった愛の言葉を紡ぐように、微笑んだ。

「月が、綺麗ですね」

その言葉は、ただの天候の感想ではなく、

何千、何万回生まれ変わっても貴方を見つけるという、長い長い旅の終わりの合言葉だった。

二人の頭上で、月が優しく世界を照らしている。

神はいなくとも、愛と自由のある世界が、ここからまた始まっていく。

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