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「月が綺麗ですね」その一言の為に世界を壊した。蜘蛛を助けた極悪人と、彼を数千年も探し続けた女神の、地獄から始まる転生純愛物語  作者: 月神世一


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EP 11

神殿の静寂と、瞬きの殺戮

~大神の神殿~

白亜の巨塔が天を突き、雲海を見下ろす荘厳なる場所。

そこは、世界のことわりそのものである「大神」が座す聖域であった。

「世一様、ここが大神のいる神殿です」

結が緊張した面持ちで、巨大な扉を見上げた。

「ここには和勇牛と同等か、それ以上の力を持つ『鬼神』たちが控えております。私が術を使って隙を作りますので、その間に世一様は……」

作戦を伝えようとする結の言葉を、

「だまれ」

低く、しかし有無を言わせぬ声が遮った。

「ひっ」

「ここからは、俺一人で良い」

世一は煙管を懐にしまい、首をコキリと鳴らした。

「し、しかし! 相手は神の眷属、多勢に無勢です!」

「結」

世一が振り返る。その瞳は、燃え盛る業火よりも熱く、そして氷のように冷徹な光を宿していた。

「俺を信じろ。俺だけを見てろ。俺が、お前を苦しめているモンを全部ぶっ壊す所をな」

「……っ」

結の心臓が早鐘を打つ。

「俺だけを見てろ」。その言葉は、どんな甘い愛の言葉よりも深く、彼女の魂を貫いた。

「は、はい……! 結は、世一様を信じます! 瞬き一つせず、ずっと見ています!」

結は両手を握りしめ、祈るように頷いた。

世一はニヤリと笑うと、ふーっと息を吐き出し、軽い足取りで神殿への階段を登り始めた。

「ふーっ……ふっ、じゃあ行くか」

~神殿内部~

足を踏み入れた瞬間、空気が凍りついた。

広大なホールの左右に、仁王像のごとき巨躯を持つ二体の守護神、阿吽あうん負吽ふうんが立ちはだかる。

「……天界を汚すゴミ虫共が」

阿吽が巨大な金棒を振り上げた。

「我等が成敗してくれようぞ! その薄汚い魂ごと砕け散……」

負吽が呪文を唱えようとした、その時だった。

ドスッ。

ズドンッ。

重たい音が二つ、ほぼ同時に響いた。

「……ガハッ」

阿吽と負吽の動きが止まる。

彼らの鳩尾と顔面には、いつの間にか間合いを詰めた世一の拳と蹴りが、深々と突き刺さっていた。

神速。

神々の目ですら捉えきれぬ速さだった。

巨体はゆっくりと傾き、地響きを立てて崩れ落ちた。

世一は、血の一滴もついていない拳をぶらりと下げ、倒れ伏した守護神たちを見下ろした。

「ペッ」

世一は足元に唾を吐き捨てた。

「弱すぎなんだよ。今までろくに戦った事がねーのが、よく分かるぜ」

平和ボケした神々になど、地獄のような現世を生き抜いた悪党の牙が届くはずもない。

世一は退屈そうに欠伸を噛み殺すと、奥へと続く長い回廊を、まるで散歩でもするように歩き出した。

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