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「月が綺麗ですね」その一言の為に世界を壊した。蜘蛛を助けた極悪人と、彼を数千年も探し続けた女神の、地獄から始まる転生純愛物語  作者: 月神世一


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EP 10

地獄と天界を隔てる絶対の境界線、「地獄門」。

白と黒のマーブル模様に彩られた巨大な扉の前には、精鋭の門兵たちが立ち並んでいた。

彼らの視線が、異様な一行を捉える。

「ん? あれば姫様、和勇牛殿……と、人間?」

門兵の一人が怪訝そうに眉をひそめた。

神聖なる姫と、地獄最強の門番。その二人が、なぜ罪人のような人間を連れているのか。

「和勇牛殿、如何なされました? 人間ごときを連れて。ここから先は大神様の神殿。人間風情が入れる所では……」

門兵が槍を少し前に出し、制止しようとしたその時。

「……」

「……」

沈黙していた和勇牛が、一歩踏み出した。

ズン、と地面が揺れる。

「黙れい! 主への侮辱は許さぬ!」

「ひっ」

落雷のような怒号。

和勇牛の全身から、どす黒い殺気が噴き出した。それは長年、仲間として肩を並べてきた門兵ですら、一度も見たことのない「鬼」の形相だった。

「一言だけ言う。今すぐこの場を去れ。でなければ……斬る!」

「ヒ、ヒィィィッ! 和勇牛殿、御乱心! 御乱心じゃあ!!」

門兵は腰を抜かしそうになりながら、半狂乱で叫んだ。

「兵をかき集めろ!! 反逆だ、反逆者が出たぞーーっ!!」

蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う門兵たち。その背中を見送りながら、和勇牛はニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。

「ふふ……これで名実ともに、我はあるじ側となりましたな」

鉄棒を肩に担ぎ直し、武者震いするように身を震わせる。

「ふふふ、胸が高まって参りましたわ。この背徳感、たまりませぬ」

その様子を見ていた結が、すっと世一に寄り添った。

「世一様、大神めの軍勢は和勇牛に任せて、私達は神殿に参りましょう」

雑魚の相手など時間の無駄。彼女の狙いはあくまで最奥にいる大神のみ。

結は上気した顔で、そっと自分の白い手を差し出した。

「さ……わ、私の、て、手をお繋ぎ下さい。はぐれては大変ですから」

「いいから案内しろ」

世一は不愛想に吐き捨てた。

だが、結の手が空中で悲しげに彷徨うのを見て、舌打ちを一つ漏らす。

「ちっ」

バシッ。

世一は結の手を、無造作に、そして少し乱暴に掴んだ。

「はぁぁ……私の手を……ありがとうございますぅぅ……!」

結の全身に電流が走った。

痛みと、温もりと、粗野な優しさ。その全てが彼女の脳髄をとろけさせる。彼女はうっとりと潤んだ瞳で、強引に手を引いてくれる世一を見つめた。

「さ、ささ、では参りましょう。まずは私の寝所へ案内致します」

世一の足がピタリと止まった。

「……あ?」

世一はゆっくりと振り返り、冷ややかな視線を結に突き刺した。

「何処に行くつもりだよ」

これから世界の創造主をぶっ壊しに行くという場面で、なぜ女の寝室に向かわねばならないのか。

結はさも当然という顔で、頬を染めながら言った。

「決まっているではありませんか。戦いの前の……身支度(と、あわよくばの契り)です!」

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