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ウザい先輩と可愛げのない後輩  作者: 黒姫 百合


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19/57

……別に友達になった覚えはないんですけど

 昼休み。


 今日は陽子たちや紗那たちに捕まることなく昼食を取ることができた。

 陽子たちは屋上か中庭とかに行ったらしく教室にはいないし、紗那たちもさすがに一年生教室に押しかけるような野蛮なことはしてこなかった。


 久しぶりに一人で静かに昼休みを過ごした真希は上機嫌だった。


「……トイレにでも行っておくか」


 まだ昼休みは二十分以上もあるため、今からトイレに行って教室に戻っても余裕がある。


 それに授業中トイレに行きたくなって我慢したり、先生に言って授業中に行くのは地獄である。


 あれは結構恥ずかしい。


 真希は一人席を立ち、トイレに向かう。


「ヤバい……財布忘れた」


 用を足して教室に戻っている最中、財布を忘れて自動販売機の前で慌てふためく少女に出会った。


「……沢田先輩」


 高校生にもなって財布を忘れて慌てふためいていた少女は沢田清美だった。

 清美を見る限り本気で焦っているらしく、逆に見ていて面白い。


「マジで喉乾いてるんだけど。こんな時に財布を忘れるなんてありえないじゃん」


 清美は自分で自分の悪口を吐いていた。

 頭が悪いのは知っていたがここまで頭が悪いとは思っていなかった。


「マジでサイアクなんだけどー」


 清美は文句を言っているが、財布を忘れたのは自業自得なので諦めてもらうしかない。


 今日は清美一人らしく、紗那も麗奈もいない。


 だから一人でいる清美は新鮮だった。


 それに喉が渇いたなら水を飲めば良いのに。学校の水道は実質タダである。

 やはり、頭の悪い清美はそこまで考えが巡らないらしい。


「……関わると面倒だし、気付かれないうちに教室に戻るか」


 面倒事に関わりたくなかった真希は清美に気付かれないように通り過ぎようとしたが、そうは問屋が卸さなかった。


「あっ、北野。ちょうどいいところにいたっ」

「げっ」

「今、げって言ったよねっ? 言ったよね?」


 通り過ぎる真希に気づいた清美はまるで救世主を見たかのように目を輝かせる。

 面倒な清美には関わりたくなかった真希は清美とは逆で最悪だった。

 真希に嫌そうな顔をされた清美がピーピー騒いでいるが、面倒なので無視して大丈夫だろう、


「すみませんが私は急いでいるのでこれで失礼します」

「ここで会ったのもなんかの縁だし、今日だけお金を貸してくれ」

「はっ、嫌ですよ。喉が乾いてるなら水道水でも飲めばいいじゃないですか」

「えっ……だって水道水っておいしくないじゃん」

「……」


 関わると百パーセント面倒事になると察した真希は、この場から離脱しようとしたが清美に進行方向を塞がれてしまった。


 だからタダで喉を潤す方法を教えてあげたのに、文句を言い始めた。


 我がままな先輩である。


 さすがの真希もこの返答には開いた口が塞がらなかった。


「いや、普通に水道水おいしいですよ?」

「だって水道水って味ついてないし、冷たくないし……」

「お金を忘れたくせに我がままですね」

「……だって水道水よりジュースが良いんだもん……」


 真希的には水道水もおいしいと思うのだが清美はお気に召さないらしい。

 お金を忘れたくせに我がままな先輩である。


「っていうか後輩にお金を借りるって先輩としてのプライドはないんですか」

「ない」

「……そうですか」


 そんなに堂々と肯定されても誇れることではない。

 清美には先輩としてのプライドよりもジュースの方が大事らしい。


 良い意味でも悪い意味でも先輩らしくない先輩である。


 そんなに堂々と言われたら真希も苦笑いを浮かべることしかできなかった。


「……分かりました。今回だけですからね。でも明日ちゃんと返してくださいね」

「えっ、良いの。ありがとう。明日絶対返すから」


 このまま清美と押し問答をするよりもさっさと貸した方が時間を浪費をしなくて済むだろう。


 だから真希の方が折れることにした。


 やっとお金を貸してもらえると喜んだ清美は嬉しさと感謝のあまり、真希に抱き着く。


「ちょ……離れてください沢田先輩」

「別に良いじゃん。あたしら友達だし」

「……別に友達になった覚えはないんですけど」


 清美に抱きしめられた真希は迷惑そうな表情を浮かべるものの、清美は全然気づいてくれなかった。

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