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100億で落札された俺、ポンコツ美少女に自由を買われる〜幼児化した相棒のせいで、謎組織から無理難題を押し付けられる何でも屋になった件について〜  作者: くまたに
第2章 この猫どこの子?

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第16話 蘇りの真相

「早速なんだが、胸を撃ち抜かれてどうやって生き延びたんだ?」


 ティナが元の姿に戻るなりレイは聞いた。

 路地裏で見せられたティナの胸には、赤い血が流れていた。あれが偽物だとは思えないのだ。


「一度、心臓は止まったよ。でも、あのロリが来た瞬間、バチッてね。静電気だったんだと思う。それで筋肉が痙攣して、奇跡的に動いたの。そこから先は、私の能力の範囲。でも──普通なら死んでたね」


 レイは言葉を失った。まさかリリカが来たことによってティナが生き返ったなんて──


「そんなことよりも」


 全く「そんなこと」で済む話ではない。それでもティナは、話を打ち切って次へと進んだ。


「あのロリが来ることをレイは予知したよね。あれはどうして分かったの?」


「……俺は政府の研究室で行われていた──」


 レイは頬をかき、視線を足元に落とした。鎖の先が乾いた音を立てる。


「“未来予知”のできる人を開発する実験の唯一の成功者なんだよ」


 そしてレイは記憶にある限りのことを話した。

 研究室では「この実験はたくさんの人の心を救う」と言われ、それを励みに頑張ってきたこと。

 実験で体中を痛めつけられ、自然と多少の痛みは耐えれるようになったこと。

 一部を除いて記憶がないこと。今まで誰にも話してこなかったので、胸が軽くなった。


「未来予知ができるならさ、次ここに誰かが来るのはいつかわかる? それまでに逃げたいなって思ってるんだけど」


「あー、そのことなんだが……」


 レイは気まづそうに頬をかいてから答えた。


「俺自身に起こる危険しか予知できないんだよ」


「え……てことはあのロリが、レイにだけ敵意がない場合は気づけないってこと?」


「そういうことだ」


 それを聞くとティナは黙り込み、その場は静寂に包まれた。

「使えねぇ」──そう鼻で笑ったのは、ほんの数秒後だった。


「とにかく今は、ここを抜け出すことに専念しよう」


「そうだな──」


 そう言い終える前に、ティナはノアを横一文字に切り払う。鈍い音が響き、鉄格子が綺麗に刻まれる。


「バカ! こんな静かな時に大きな音出したらバレるだろ」


「大丈夫大丈夫。どうせみんな寝てるから」


「そうだといいんだが……」


 レイは不安を取り切れてないまま、先を行くティナの背中を追った。

 しかし事件はすぐに起きたのだった──


「えっ……!?」


 食料の乗ったお盆を、フラフラとおぼつかない足取りで運ぶコハルと遭遇した。フードの中に見える額には汗をうかべ、今にも叫び出してしまいそうだ。


 ティナがフラグを立てるから……どうする。脅迫して口封じをするか?


 レイが脅し言葉を探していると、コハルは口を開いた。


「あ、あの──私を助けてください……」


「「助ける?」」


 予想外の言葉に二人は声をハモらせて首を傾げる。

 対してコハルは「あわわ……」と心許ない声を漏らし、おろおろと動揺を隠せない。


「その……私はリリカ様が恐ろしくて、言いなりになっているのです。しかしお二人は強そうなので、助けて貰えないかと思ったのです……」


 見ているだけで何故か心配になる。レイは自分には決められない、と隣を見た。

 ティナは睨むように、頭一つ分身長の低いコハルを見下していた。


「アナタ……私のことを一回殺したよね? それに何かを頼むんだったら、そのフードを下ろしてから言ったらどう」


「ご、ごめんなさい……素顔を見ても驚かないでもらえますか?」


 コハルは指先が震えながらフードの端を掴む。耳の付け根を隠すように、ゆっくりと――

 フードが下がると、柔らかそうな猫耳が露出した。耳の先にはうぶ毛が揺れ、わずかに獣の匂いが混じる。

 ティナの頬が一瞬ほころんだ。レイは瞬きを忘れ、視線が耳から離せなかった。


「……カチューシャか。可愛いと思うぞ」


「違います」


 猫耳は、嘘でもおとぎ話でもなかった。


「え?」


「レイさんですよね。私はあなたと同じ研究室の実験体だったから見たことがあります」


「……」


 いきなり想像の斜め上を言われてレイは混乱し、言葉を失う。


「いいよ」


 そのティナの言葉によって静寂は破られる。


 もし裏切られたとしても、ティナが反撃するで大丈夫だろう。


「俺もいいよ」


「あ、ありがとうございます……!」


 目の端に涙を浮かべながら、コハルの顔がぱぁっと晴れた。

 こうして、ここを抜け出す仲間が増えたのだった。

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