Scene23:『滑れ!モン娘スケートショー 後編』
第三演目:飛鳥 × ロメラ
氷の上が、静かになる。
次のペアへと視線が集まるなか——
「いっくぞ、リンド」
ロメラが、ぐいっと顎をしゃくって前に出る。
その横で、飛鳥が緊張したように小さくうなずいた。
「……う、うんっ……!」
その肩に、ロメラがぽん、と手を置く。
「へーきへーき。いつも通り。
オレが先に滑から、おまえは、後ろついてくりゃいい」
飛鳥が、そっと翼を震わせた。
氷の上での滑走に、まだ慣れない彼女の足取りは、どこか不安定だ。
「……っ……ご、ごめん……まだ、ちょっと……」
「気にすんな。ぎこちないのが、おまえのチャームポイントだろ?」
ロメラが笑いながら、前へ滑る。
そのあとを、飛鳥が慎重に追いかけた。
最初は、たしかにぎこちない。
羽ばたきでバランスをとりながら、一歩ずつ確かめるように氷を滑る飛鳥。
——だけど。
その姿が、ひたむきだった。
「……がんばってる……」
「守りたい……!」
「応援したくなる……こんなんズルいよ……!」
ギャラリーのざわめきは、どこか感情を揺さぶられるような、そんな声音だった。
一方、ロメラの動きは軽やかだった。
不良娘らしいキレのあるターンに、ギャラリーから歓声が上がる。
「おっ、ヘソピアス見えた!」
「腹筋えっっっっろ!! あのビキニ、縛ってるだけやろ!」
「マジで……かっけえ……」
だが、彼女は振り返って言う。
「リンド! ほら、こっち!」
飛鳥が、はっと目を見開いて、少しだけスピードを上げた。
滑るのは、まだぎこちない。
けれど——
その動きには、“誰かと並ぼう”とする意思があった。
ロメラが手を差し出す。
飛鳥が、それをつかむ。
ふたりが、並んだ。
——その瞬間、スピードが、ぴたりと合った。
「おお……今の、揃った……!」
「鳥脚とスケート、合うんだな……!」
「え、えへ……!」
飛鳥が、笑った。
ほんの少し、恥ずかしそうに。
でも、それでも、確かに“楽しんでいる”顔だった。
ロメラが、ニカッと笑う。
「そーだ、それでいい。カッコつけなくていい。おまえはおまえのままで、ちゃんと踊れてんだよ」
ふたりが、くるりと旋回する。
ロメラがギターを構えるようなポーズをとり、
飛鳥が、それに合わせて翼を大きく広げる。
その姿はまるで——舞い降りる鳥と、その伴奏者のようだった。
「羽……すごい綺麗……」
「白い水着が、光反射して……神々しい……」
「いやでも、鳥脚であのポーズって、正直めちゃくちゃえっち……」
「わかる。逆に、そこが刺さる」
最後のターンで、ロメラが飛鳥の腰を軽く支えた。
「よっしゃ、決めポーズいっちまおうぜ」
「……う、うんっ!」
ふたりが、ぴたりと止まる。
両翼を大きく広げた飛鳥。
その背後に、手をかざすロメラ。
空を舞うようなポーズ。
氷上に、ひとつの物語が刻まれた瞬間だった。
「第三演目、完了」
セドナの声が響く。
「未熟でありながらも、確かな“共鳴”を見た。魂と魂が寄り添う、美しき舞であった」
拍手。
割れるような歓声。
そのなかで、飛鳥が、ほんの少しだけ、胸を張った。
——to be the next act.




