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[立体作品]モンスター美少女たちのパパになったら、全員俺を殺しにくるんだが!?  作者: 矢崎 那央
番外編 第1幕『ドキッ!丸ごと水着 モン娘だらけの断罪裁判』
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Scene6:『金の翅に、わたしの嘘を』


 黄金の髪をひとつ、胸の前に垂らして——わたしはそれを軽くすくって、耳にかけた。


 ふわりと揺れた髪先が、ひとすじ光を反射して、ノートのページを照らす。


 

 手元には、小麦粉と砂糖。

 その隣に、蜂蜜の瓶と乾いたラベンダーの小枝。


 

 振り向いた時、かすかに翅が揺れ、少しだけ鱗粉が舞った。

 


 わたしは、ただ今日も、お菓子の配合を考えている。

 優雅に見えるらしいけど、実際は意外と力仕事。

 粉をふるって、バターを練って——材料たちのご機嫌をとるのは、簡単じゃない。


 わたしは、テーブルの上に材料を並べながら、静かに息を吐いた。



 最初に置いたのは、小麦粉。

 その隣に、お砂糖。グラニュー糖と、きび糖を一緒に。


 それから、蜂蜜、ラベンダー、アールグレイの茶葉——全部、わたしのお気に入り。


 それをひとつずつ指先でなぞりながら、ノートにレシピを書き足していく。


 


 バターは室温でちょうどいい柔らかさ。

 今日は焼きすぎないように、ほんの少しだけ低めの温度にしましょうか。

 


 ……お菓子を作るのって、少し似ている気がする。

 気持ちも、関係も、あたためすぎても、焦がしてしまう。

 冷たいままじゃ、かたまってしまう。


 

 この前——あの人が、来た。


 わたしの家に。

 小さな家じゃないのに、不思議と、部屋がきゅっと狭くなった気がした。

 


 ちゃんと目を合わせたのなんて、何年ぶりだったかしら。




 「許してほしい」って、あの人は言った。


 その瞬間、心の奥が——

 ぱちん、って、跳ねた。

 水面に小石を落としたときみたいに。


 


 ……嬉しかった、なんて。口にしたら、たぶん図に乗る。



 だから、別に抱きしめてあげても良かったんだけど、

 まだ、許してあげない。


 


 “パパになりたい”なんて言って、あちこちで勝手に父娘ごっこ。

 みんなのところを飛び回ってる。

 ほんとに、極端で迷惑な人。

 

 わたしのところにも、そろそろ来てくれる気がしてる。



 ふふ、どうやってからかってあげようかしら。

 いまから楽しみで仕方がない。



 お菓子の甘い香りが部屋に漂っている。——けれどいま、いちばん甘い香りがしてるのは、きっとわたしのほう。



 ——って、思っていたら。


 


「こんにちは、お姫様。

 甘いレシピの研究中に、悪いんだけど」



 窓辺から、ふわっと入り込む声。

 振り返らなくても、もう分かってる。


 

 「マハちゃん?」



 見れば、やっぱり、あの不思議な子。

 風みたいに現れて、何か面白いことを言ってくる。



 「猫耳の娘が、とんでもないとこに落ちちゃってね。

  お姫様の美しさと愛で、拾ってきてほしいんだ」


 「まぁ……またノーニャちゃん、ですか?」


 

 わたしは小さく首を傾けて、それから笑った。


 

 「しかたありませんね。あの子はいつも自由ですけど、可愛くて、放っておけないもの」



 指先をふわりとひと振りすると、蚕の糸が舞い上がる。

 白いエプロンが、柔らかなドレスへと編み変わっていく。

 花が咲くみたいに。



 もう一度、指を振ると、机の上の瓶たちがふわっと浮いて、

 くるくる回りながら、棚の定位置に戻っていく。

 わたしのレシピノートも、ぴたりと閉じて、そっと重なるように。



 「では、まいりましょうか、マハちゃん。

 ノーニャちゃんが“困った子”でいてくれるのも、

 わたしが“お姉さん”でいられるうちだけ……ですものね」



 転送陣が、金の花びらのように光をまとい、ゆっくりとひらいていく。


 蛾の翅をひらりと広げて——

 わたしは宙へ舞い上がった。


 


 今日も、ほんの少しだけお説教して、

 それから、ちゃんと抱きしめてあげるつもりで。


 ……さあ、わたしの可愛い妹を、迎えに行きましょうか。

 



——to be the next act.

 こうして、六人の娘たちが集結した。


 

 風の旅人、飛鳥。

 不良のゾンビ、ロメラ。

 蜘蛛の縫い手、ヴェルミア。

 水の静寂、アクウェリーナ。

 幻想の姫、金色姫。

 そして、案内人マハ。



 舞台は整った。


 彼女たちは、やがて神域へと足を踏み入れる。

 


 いざ、地獄の夏イベントへ。

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