Scene2:『パパ、職権濫用する』
『世間が必要としているものと、あなたの才能が交わっているところに天職がある』from アリストテレス
彼の才能は有り余っていた。
だが娘が必要としていたのは「ごく常識的な距離感」だった。
なので、“需要ゼロのパパ”にしかならなかった。
意外かもしれないが、
私は、働いている。
そう、元ラスボスの私が、である。
世界を滅ぼしかけた“魔術と科学の悪夢”が、
まっとうに、合法に収入を得て、
ちゃんと税金を納めているのだ。
いまの私は、実験棟に引きこもり、
命を弄び、他人を見下していたあの頃とは違う。
実にまじめな社会人だ。
——あくまでも(※当社比)だが。
依頼を受け、結果を出す。
これぞ、現代の“はたらくお父さま!”の姿である。
「ふむ、今朝のタスクは“害虫駆除か……」
冒険者ギルドから届いた依頼状。
王都郊外の再建都市に異常発生した、
魔虫の群れを退治して欲しいとのことだった。
私は転移装置を操作し、
すぐに、その場所へむかう。
————
私は目的地に、眩い光とともに
颯爽と転移した。
早速、状況の把握を開始する。
-魔虫は大小様々。
-建造物被害、中程度。
-住民の避難、完了。
ふむ。
では、仕事に取り掛かろう。
————
……そして五分後。
魔虫は絶滅していた。
市街に溢れていた数千匹の蟲は、
私が式神・九重がはなった、
青白い火焔を纏った巨大な旋風によって、
跡形もなく焼き尽くされていた。
さらに私は、ラボから
土木建設用ゴーレムたちを派遣。
瓦礫撤去から基礎工事、
上下水道の敷設にいたるまで、
ついでに全自動でやらせておいた。
結果として、市街は害虫根絶だけでなく、
都市基盤から再構築されることになった。
見事なまでのチートな手腕。
なろうテンプレなら、
この都市の善良な町娘に惚れられても
おかしくない頃合いだが、私は違う。
“父”として、娘たちに慕われることこそが、
私の物語である。
再建に困っていた市民たちは感涙し、
「わられが街の救世主殿!ぜひお名前を!」
と何度も私に問うたが、私は静かに首を振った。
「いやいや、私はただの“子煩悩なパパ”だ。」
式神が整備マニュアルと復興計画を人々に配る。
その間に、私は報酬を受け取るため、
さっさと王都へと転移していた。
王都のギルドカウンターでは、
受付嬢が目を疑っていた。
「えっ、もう? というか、
都市ごと修復されてるんですけど……
えっ、あの……建築予算……とかは?」
「別件で使った余剰技術のついでだ。
気にするな。請求はしない」
私は報酬を受け取り、
ギルドを後にしようとした……
が、その時だった。
王都上空に、異常な魔力の奔流。
空が、渦巻ように裂け……
いや、「笑う」ようにひび割れた。
──to be next scene.
虫退治を頼んだだけなのに、
街ぜんぶ直ってました。下水道まで。
で、彼は風になびきながらドヤ顔でこう言ったんです。
「私はただの、“子煩悩なパパ”だ」と。
……娘さん、どこにもいないのに。
でもまあ、街は助かったし、よしとします。
たぶん、パパって名乗るのが趣味の人なんでしょう。たぶん。
——次回予告。
scene3:境界のソードファンタズマ。
——
拾いものを集めた物語ですが、気に入ってもらえたなら、嬉しいです。
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